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「……これ欲しいわぁ」

「良いやつで一回聴くと手放せないっていうしな」

「こういうお高いのんって憧れやんな。……あ、来た」


道すがら、電化製品専門店に立ち寄っていた明崎と須藤は、とあるコーナーで商品をあれこれ手に取り、熱心に眺めていた。

こういう所へ来たからには、自分たちだって楽しみたい訳で。

そんな中、明崎のスマホが通知音を鳴らした。


「……え!?」

「どうした」

「帰るって!」

「あ?今どこ」

「……あー、もう車の中」

「……マジか」


明崎と須藤は、お互い顔を見合わせた。


「全然心配する必要無かったなぁ……どないしよう」

「出動するまでも無かったな」

「会長大人しかったし。なぁなぁ須藤、もうっちょい時間ある?」

「ん?もう少し居るか?」

「うん」


ああ、でも船の便だけ時間聞いとこ。

明崎はそれだけ連絡するようにメッセージを送って、再びコーナーに目を戻した。



──────



「……楽しかった」


不意にこちらを向いて言った笠原に、驚き固まった池上は、危うく手に持ったペットボトルを落とし掛けた。

何だか信じられない思いで、笠原を凝視する。


「……ほ、本当か?」

「嘘を吐いてどうする」


池上の表情に怪訝そうな顔を見せるも、笠原の表情はすぐに柔らかくなった。


「寧ろ、感謝している。俺は余り島外には行かないし、アンタ色々気を遣って俺の行きたい所に連れて行ってくれたものな。本当に楽しかった。……それに、話せて良かった」

「そ、そうか……」


普段、池上は誰にどれだけ愛の言葉を囁かれようが、余り心を動かされたことがない。

けれど今、笠原のたったそれだけの言葉に池上の胸の中は酷く高揚して、嬉しかった。


「それなら、良かった……」

「だが、あの撮影だけは許せん」

「それは俺も譲れん」

「許さん。何故俺が白無垢など着ねばならなかったのだ」

「見たかったからだ」


マジか坊ちゃん。

噴き出しそうになったのは、運転している執事である。

白無垢って、どんな血迷い方したの。


「だから何故だ」

「似合ってただろう」

「そうじゃない、だから何故ドレスだの白無垢だの着せる発想になったのだ」


やばい……、坊ちゃんクソ面白いことしてるどうしよう。

執事の唇の端が、耐え切れずヒクヒク震える。

けれどそこは執事。

何とか表情を保つ努力をする。


「おい、こら」


池上の声に頭上のミラーをチラリと見遣れば、バツが悪そうに池上がこちらを見ていた。


あ。


「笑うな」

「……申し訳ありません」

「だから笑うな」


命令しているはずなのに、言葉には威勢の欠片もなく。

池上の隣では、笠原がすっかり恥ずかしげに身を縮こませている。

執事は可笑しくなって笑みを深めるばかりだ。


まぁ、良い展開だ。

坊ちゃんが楽しかったのであれば、何より。


午後の明るい陽射しに照らされながら、車はゆっくりと港へ走る。

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