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シンデレラと魔女見習い

作者: クロネコ

 継母と義姉達に苛められる少女。彼女を幸せにする為に立ち上がった魔女見習いの幼馴染。けれど、結末は決して、幸福なものではなかった。


むかしむかし、あるところに、シンデレラと呼ばれる娘がおりました。

優しかった母の亡き後、継母と義理の姉達に、酷いいじめを受けている娘です。

まるで、使用人のように扱われ、誰も彼女の味方はいません。

みんな、恐ろしかったのです。

継母の秘めたる狂気が。

毎日のように、シンデレラは家事をこなします。

そして、継母達に酷い言葉を投げつけられるのです。


 ある時、お城から舞踏会の招待状が届きました。

王子様のお妃様を見つける為に、国中の年頃の娘が、呼ばれているそうです。

勿論、招待状の中には、シンデレラの名前もありました。

どうしてもお城に行きたかったシンデレラは、継母に頼み込みます。

継母は、必死なシンデレラを嘲笑いました。


「行きたいのならば、屋敷中をピカピカに磨きなさい。

それから、中庭の雑草を全て、取り除くのよ。

全てが終われば、考えてあげてもいいわ」


どれも、1人でこなせる仕事ではありません。

継母も、それがわかっていて、命じているのいるのです。


 シンデレラは、溢れてくる涙を止めることができませんでした。

すると、魔女が姿を現します。

正式には、魔女見習いでした。

シンデレラと姉妹のように育った幼馴染です。

泣いているシンデレラに魔女見習いは問いかけました。

話を聞いた魔女見習いは、大丈夫だと言って、天を指さし、呪文を唱えます。

するとどうでしょう。

屋敷中が、まるで新築のように真新しくなり、草が茂っていた庭は、かつての美しい庭園を取り戻しました。

亡き母の愛していた庭の様子に、シンデレラの美しい涙が輝きます。

そして、輝きがシンデレラを包み込みました。

光が消え、姿を現すシンデレラ。

もう、ボロボロの服を着て、肌荒れしていた彼女ではありません。

象牙色に輝く肌に、シルクのように滑らかな髪。

金色のドレスに身を包み、銀色のガラスの靴が足を守っています。

けれど見習いの魔法には、限界がありました。

月の力を借りた為、夜中の12時まで。

12時を知らせる鐘の音が鳴り終わってしまうと、美しいドレスは元のボロボロな服に戻ってしまうそうです。

シンデレラにとっては、それでも嬉しい気持ちでいっぱいでした。

魔女見習いがやってくるまで、絶望してしまっていたのですから。


 お城の舞踏会は、まるで夢の世界のようでした。

笑顔の溢れる人々。

継母達に虐げられる中、忘れてしまった場所です。

人々は、シンデレラの姿を見つけると、魔法にかかってしまったかのように、動きを止めていました。

それは、王子様に群がっていた令嬢も。

王子様も、シンデレラの美しい姿に目を奪われてしまいました。

「美しい人よ、わたしと踊っていただけますか?」

シンデレラは、迷うことなく彼の手を取ります。

招かれていた令嬢達は、嫉妬することも忘れ、2人のダンスに見惚れておりました。

まるで、物語のクライマックスが、目の前に広がっているように。


 楽しい時間は、そう長くは続きませんでした。

12時を知らせる鐘の音が、響き渡ったのです。

シンデレラは、魔女見習いとの約束を思い出しました。

そして、王子の様の手を振りほどいて、駆け出します。

元の姿を見られてしまえば、王子様に嫌われてしまう。

そんな気持ちでいっぱいでした。

だから、気が付かなかったのかもしれません。

ガラスの靴が片方、脱げてしまったことに。

そして、シンデレラの後ろ姿を、王子様が悲しげに見つめていたことに。


 お城の舞踏会から数日後、お城からガラスの靴を持った人々が、家々を回るようになりました。

王子様が、お姫様の姿になっていたシンデレラを忘れられなくなってしまったそうです。

お城からのお触れは、ガラスの靴がピッタリと吐ける女性を、王子様のお妃様にするというもの。

国中が、大騒ぎとなりました。

けれど、誰もガラスの靴を履ける令嬢はおりません。

とうとう、最後にシンデレラの家にも、一行がやってきました。

シンデレラは、自分の部屋に閉じ込められてしまいます。

悲しむ彼女の目の前に、再び、幼馴染の魔女見習いが、姿を現しました。


「さぁ、涙を拭いて?

貴女は、幸せになる為に生まれてきた存在。

後ろを振り向かず、笑顔にならなければ」


魔女見習いの言葉と共に、鍵が掛かっていた扉が開きます。


 シンデレラが到着した時、ちょうど二番目のお義姉が、ガラスの靴を履こうとしていた時でした。

お城からの遣いは、2人。

初老の執事と漆黒に身を包んだ騎士様。

最初に履こうとした義姉は、赤く腫上がった足の指先を、メイド達に氷で冷やしてもらっているようです。

そしてシンデレラの姿を見つけて、キッと睨みつけます。

まるで、汚いものを見つけてしまったように。


「残念ながら、このご令嬢も、履くことができないようですな」


執事の声に視線を向けると、2番目の義姉が、懸命に踵をガラスの靴に押し込めようとしている姿が。

けれど、靴が小さすぎるのか、義姉は痛みで顔を歪ませていた。


 「資料によれば、こちらのお屋敷にはもう1人、ご令嬢がおられるとありますが?」

「まぁ、それは勘違いですわ?

あの娘は、遠縁の娘を、使用人として迎え入れただけですもの」


継母の嘲笑う声が、部屋中に響き渡ります。


「使用人だろうが、年頃の娘には違いないのだろう?

ならば、この靴を履く資格があるはずだ」


漆黒の騎士は、扉の前に立っているシンデレラに気が付き、ガラスの靴を差し出す。

シンデレラは、おずおずと靴を履く。

ガラスの靴は、シンデレラの足にぴったりと合っていた。

様子を伺っていた使用人達が思わず、歓声を上げます。

中には、泣き出している者もいました。

そんな彼らに継母は、甲高い声で叱りつけています。


「殿下も、お喜びになられるでしょう」


微笑みを浮かべ、(こうべ)を垂れる執事に、シンデレラは困ったように会釈しました。

こうして、シンデレラはお城へ迎え入れられ、王子様のお妃様になります。

継母と義姉達がどうなったのか?

屋敷に戻ってきたシンデレラのお父様に、シンデレラへ行っていた陰湿な嫌がらせが露見して、無一文で追い出されてしまったそうです。

シンデレラは、王子様と幸せに暮らしました。


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