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変装




 『向日葵の石城』。


 向日葵が咲き溢れる庭園を抜けた先に、城壁と側防城塔に挟まれた城門塔があり、そこを潜ると、騎士館、井戸、庭園、菜園、池、居館外使用人居住館、納屋、穀物庫、貯蔵庫、家畜用放牧場があり、そこを抜けてなだらかな坂を上り主城門を潜ると、鍛冶場、井戸、そして、衛生塔と防御城塔が併設されている居住館である荘厳な石造りの城に辿り着くのである。




「ところで。えっと。澄明ちょうめいさん」

「澄明、と呼び捨てで構いません。義仁よしひと様」

「ああ。じゃあ、澄明。このすげえ管理が大変としか言いようがない大きな土地と建物には何人住んでいるんだ?」


 ざっと説明されては城の前に辿り着いた義仁。城の中に入ろうとする澄明を呼び止めては、疑問を投げかけた。


「はい。現時点では義仁様とわたくしの二人でございます」

「は?」


 思いも寄らない返答に、義仁は目を点にした。


「俺と澄明の二人。だけ。え? あ。じいさんが亡くなってから、蜘蛛の子を散らすようにここで働いていた人たちが出て行ったとかか?」

「いいえ。わたくしが記憶している限りでは、わたくしと旦那様の二人だけでした」

「この城にたったの二人? え? 嘘だろ。あんた、だって、じいさんのところで何年働いてたんだよ? 六十年間ぐらいは軽く過ぎてるだろ。その間ずっと二人だけってあり得ないだろ」

「六十年間など、とんでもない事です。十三年間でございます」

「あ。はあ。なるほど。小さい頃から働いてたわけじゃなくて、途中から働いてたわけか」

「いいえ。幼少期より働かせて頂いております。旦那様に拾われた五歳の時より十三年間。旦那様が亡くなられるまではずっと旦那様の傍で働いておりました」

「………ん? あんた今何歳だ?」

「はい。義仁様と同じ十八歳でございます」

「………んん? ん? え? じゃあ、よっぽど苦労したのか?」


 どう見ても六十年間は生きてきたような外見をしている澄明がまさか自分と同じ十八歳だと言われて混乱しか生じない義仁に向かい、これはただの変装術でございますと、澄明は言った。


「旦那様に釣り合うよう、変装術を極めたのでございます」








(2026.2.3)



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