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Beelze  作者: 芥川りゅうくん
序章 始業編
9/16

第九話 白蓮会直系東雲組若頭 秋元陣

「ヒヒヒヒヒヒヒ」


ボロボロになった便所で、黒服の男は剃刀を手に持っては大理石の洗面台に立ちそれを人差し指と中指の間に突き立てた。

口角を上げ、自身の顔面の傷を見て箔が付いたと喜ぶ。


「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」


三日前 東雲組本部


「まだかよ」


事務所の裏の部屋、そこで20、30人の大人数の極道達が縦長のテーブルを囲んでいる。


「錦城さん、5時からの予定ですが」


白いスーツの男が口を開く。


「仕留め損なったんじゃないだろうな…」

「まぁ俺たちにとっては好都合なんだがな」


錦城という、パイナップル柄の黄色いアロハシャツとサングラスの筋肉質な男が応えた。


ーー(たすけて)!!」「ーーー(兄貴お願いします)…」

その隣の席には、5人の若い男が口にガムテープを貼られ手足を縛られて拘束されていた。


「お前らも、ごめんなぁ。まぁ、あいつらが来るまでの辛抱だから」


「そろそろ来ます」


Gと刻まれた銀色の腕時計を眺めて坊主の男が言った。


「…」


コンコンと両開きの扉が外側から叩かれる。

ドアが軋む音と共に、物陰からさらに数十名の極道が現れた。


「はーい、遅れたもうたわ」

「…あ?主賓がおらんやないか。」

「これじゃ本題に移らないがな。」


先頭に立つその男が入ってきた瞬間、場の空気が凍り付いた。

灰色と白のボーダーが入ったスーツを着た、華奢なオールバックの男。


「陣…魚肉屋と例の…」


「あぁ、あのシーメールも連れてきたで」


そう言って身体中に大量の焼き痕が残った女性を連れてくる。


「このオカマ何も喋らへんねん、まぁええ、後は好きにしいや」


そう言って乱暴に机に女性?を振り飛ばした。


「魚肉屋は」


「今頃ドザエモン(水死体)やろうなぁ」

「俺の舎弟がお前んとこのオタンコナスみたいなヘマしでかしよったら話は別やけどな」


顔面を錦城の近くに寄せて、威圧する。


「…」


「そないなことどうでもええねん。けーくんは?」

「丁度ええんやあんくらいのぺーぺーが」


「今、連れてくるが…くれぐれも刺激するなよ」

『発現したばかりで不安定だ』


「忠告してくれてありがとさん」

「暴れてもその前に殺すから安心しときや」


ガムテープで口を縛られた黒服の若い男が連れてこられる。


「ーーーー!!!ーーー!!」


バリッと勢いよく剥がされる。


「すいません兄貴!!俺ちゃうんす!なんか俺は殺せって言ったのに、なのに、羽生が…」


「えろうよう喋る口やな〜〜」

「あの5人は何も喋らへんねん。物言えば唇寒しってなぁ。ほんまけーくんのこと見習ってほしいわ〜」

「あ、あと()()()()()ちゃう。()()()()()や。」


「……あの、俺はただ…」


「お前の異能が映り込んでんねん」

「このカタギが撮った動画に」


そう言って、部下から剥ぎ取ったスマホの画面を黒服の男に見せつけた。

その画面には、駅のホームにて激昂して周りに叫び散らかす黒服の男とスマホを向ける一般人達が写った縦動画が流れていた。

その尾骨辺りに、確かに黒い何かが写っている。


「これ、お前やんな」


「だからっ!」

「羽生が情けでいらんことして、そんでケミカルの連中が駅まで逃げたんですよ!」

「俺、っ、おれ、本当に殺そうとしたんですけど、でもあいつが気づいたらいなくて、」


秋元の怒りの籠った冷徹な眼光に気付く。


「あ……すみません本当に許してください、、次はやるんで、本当に、お願いします」


「半グレ殺し損ねて、お茶の間にけったいなもん流して…」

「お前今からどうなるかわかってるんか」


「すみません指なら何本でも詰めます何なら今詰めます」


「指?」

「んなもんいらん」


両腕を黒服の男の両肩にポンと置いた。


「今度、昇格式をする。頼むで」


「え?」


「佐渡ィ!本部長に伝えときや」


「わかりました陣さん」


金のネックレスをかけた黒いタンクトップの太った男が答える。


「…ところで、条件があるんやけど、のめるか?」


「は、はい」


「なんやっけ?混ぜもんした…ケミカル?の連中と、ここに映ってる限りの野次馬全部殺せ」


「え」


「おい陣!今自分が何言ったのかわかってるのか?!」

「お前、カタギを殺せって!そんなことしたら…」


「黙れや」

「なぁ?できるよなぁけーくんなら信じとるで」


「…はい、できます!全員殺しますんで」


曇っていた表情を無理やり光らせ、希望を掴んだかのように言う。


「あと、なんか異能持っとる奴がいたらとりあえず殺しときや」

「未来への投資や」

「キラ、ネオンはけーくんを送れ」


「はぁ〜い」

若い地雷系のメイクをした2人の若い男が皮肉を込めたように優しく黒服の男を外に送り出した。

黒服の男が2人に連れ出されたタイミングで、錦城が口を開いた。


「…何のつもりだ陣」


「使い捨てや。」

「あいつはウチの人間やない。」


「は?」


「戸籍をちょこっと変えるんや。」

「つまり鉄砲玉にする。ほれ、アンタにもそのために来てもらったんやで?」


スーツの男達をかき分け、異様な雰囲気を纏ったオーバーオールを着た目隠しの男が現れた。

薄暗い陰気な蛍光灯の光がスキンヘッドに反射している。


「日本のマフィアは苦手だな」

「こうも暑苦しいと調節がうまくいかない」


「頼むで、ジェイ・タン」


何かに気付いたかのように、錦城の表情が濁った。

「貴様…!おい!陣!お前、圭のことを爆殺するつもりか!」

(ジェイ・タン…NYで連続爆破事件を起こした例の男か)

(牧師爆殺を皮切りにイギリスの新興組織と手を組んだのは知ってるが…何でこんなところに)


「当たり前やろ。何?念の為やで」

「特定のワードを口にした瞬間爆発するようにしといた。な?ジェイ先生」


「うん。僕の腕に間違いはない。存分に信頼してくれて構わない」

「威力はそこらのC4と同じくらいに設定してあるよ。即死は免れないね」


(あおい)…邪魔は禁物やで」

飯田原(いいだはら)が誰の利権か思い出しや」

「大体なぁ!俺ァお前みたいなインテリおぼっちゃまがいっちゃん嫌いやねん」


「クソ野郎…」


「じゃあな、帰るわ」

「このオカマだけ置いていくで」





洗面台に立つ黒服の男、圭は鏡に反射した自身の傷だらけになった顔を見て感慨に耽っていた。


「『サインオーダー』」


「!!」


血まみれの圭に掴みかかったのは正井。


「俺を無視するとはいい度胸してるぜ!!」


標識を『落石注意』に変更し、脛のあたりに打撃を生ませる。


「!!」


突如天井が音を立てて崩れる。


(どうする…今のうちに距離を取るか)


瓦礫から手が飛び出す。


「あ、お、俺、もう疲れた、でもお前を殺す」

「秋元さん、秋元の、兄貴」


譫言(うわごと)ばっかうるせぇな!」


(どうする…逃げた方がいいが、閉所というこの状況を手放すのはナンセンスだな)


「『サイドスクワッド』」


2人の分身体が瓦礫を蹴り、圭をリンチする。

分身体の1人が足を掴まれ、そのまま投げ飛ばされて大便器に頭をぶつけて消滅した。


「元気だな…」


「殺ス!!糞餓鬼!!」


触手が瓦礫を吹き飛ばし、そのまま一直線に正井を捉えた。


「そっちはデコイだよ」


個室から本体が飛び出し、熊のシルエットが映った『動物注意』の標識を生成して地面に打撃を加えた。

その瞬間、3メートルをゆうに超える巨体のヒグマが砂鉄のようなものを纏って出現し、圭に向かって飛び出した。


「うぁぁあああ!」


悲痛の叫びは雄叫びに変わり、触手が分厚い毛皮を貫く。


(このままやってもジリ貧だ)

(同じ標識は最低5分間使えない…ならばどうする)

(とりあえず逃げる時間を稼ぐ!)


正井はヒグマと格闘する圭の隙をついて便所を抜け出した。

標識の絵が変化し、『路面凹凸注意』となる。ある程度走り、後ろを振り向いて地面に強く叩きつけると、モール全体の床が軋み、歪に変化した。


「待てえぇええ、どこじゃぁあ」


便所から血まみれの圭が飛び出した。

その頃には既に正井は自動ドアを通り広大な立体駐車場へ出ていた。


(くそっ、よりによってこんなだだっ広い場所に出ちまったか)

(ここは4階…逃げるにしても相応のタイムを要する)

(ここからはあいつの土俵だぞ…)


「首くれやぁああ!!お達しが来たんだよおおお!」


尾骨から伸びる触手を変幻自在に利用して、圭がモールの歪な床を回避しながら進んでくる。


「あげねえよ畜生…」


分身体を再度出現させ、疲労し切った体でなるべく遠くに逃げる。

スロープを上るところで、標識を再度『落石注意』で生成して床を叩く。

その後、即座に『なだれ注意』に変化させて再度地面を叩いて畳み掛ける。


頭上から大量の瓦礫やどこからともなく現れた雪の塊が圭を押し潰す。


「面倒な野郎がぁあーーー」


瓦礫を押し除けて顔を出したところを、スロープの部分からジャンプした正井が道路標識を振りかぶって襲う。


「グエエエエエア!!」


標識部分が圭の頭部にクリーンヒットした。


(やったか?!)

「!!」


触手が体を締め付けた。


「捕まえたぞ糞餓鬼」


「くそったれ…やるなら早くやれよ」


「餓鬼のくせに一丁前なこと言いやがってよお!」

圭がまた発狂する。


「…どうせ俺と…そんな歳変わんねえだろ…」

「それに、ガキ相手にマジになりすぎなんだよ」


「黙れ!!だまれ黙れぇえ!!!」

「俺は本職だ…舐めた奴らも野次馬も皆殺してやる」


(この男…ヤクザか)

(ガキの俺を雇った…四課か知らねえけど…利用されてこんな風に死ぬくらいなら大人しく逃げとけばよかったな)


「ペッ!!」


狂乱している所を、正井によって顔面に唾を飛ばされた。


「…死ね」


その時、圭の背中に小石がコツンと当たる


「…?」


(あのバカ!何で逃げないんだよ)

(お人好しが…)


徐々に強くなる首元の触手の締め付けにより、正井は失神する。

小石を投げた手は震えていた。


その小石の正体は、逃げたはずだった優希のものだった。



「「お、俺の友達に手を出すなよ!人殺し!」」



時を同じくして、西口広場にて


「おおー!」

「翔駒!きたんか」


「あぁ…今のバーンって音…」


「あぁ、俺も聞いたぜ。ヴィーガン団体が暴れてるってな」


2人はマスカレードマスクをつけ、赤ローブを纏った男女が肉加工品を持ち出してモールの自動ドアから出てきたのを目撃する。


「まぁ、あいつらぶっ倒して帰ればいいんだろ?要するに」


呑気に敵に背を向けて親指をさす。


「まぁ、そういうこと…かな?」


「てか、お前どうすんだ?なんか、MPA使えたっけか?」


「あ…」

「ノリで来ちゃった」


衝撃的な告白に天童は吹き出した。


「ノリ!!」

「お前相変わらずおもろいわ!まぁ、終わったら報酬使ってプリクラとろーなー」


(まぁまぁなフラグ建てるなよ…)


「くたばれ野蛮人ども!」


男の方がこちらに気付いて先制攻撃を仕掛けてきた。

振り下ろされた拳が天童を貫通する。


「あれ…?」


男が呆気に取られてる間に、背後から手刀を繰り出した。


「カハッ…!」


男が地に伏したのを見て、続いては女の方が仕掛けてくる。


「『芳香増強(マッドフレグランス)』!!」


強烈な匂いが翔駒と天童の鼻を刺激した。


「うおおっ!!くっせええ!」

「アンモニア臭だ!」


「愚かな人間共!喰らいなさい!」

天童がはしゃいでる間に、女がローキックで天童の足を払う。


「ぐおっ!!」

天童は顔面からコンクリートの床に倒れ込む。

すかさず翔駒が女にタックルして噴水まで吹き飛ばした。


「油断してたぜ…」

「女性は下半身が発達するとよく聞くからな。」


「…」


「あ、別にエロい意味じゃねえから安心してくれ。俺からのささやかな豆知識だ。知っておこう」


「これ、死体だよな…?」

「こないだパーキングエリアで天童のことを捕まえた連中の…」


天童の言葉を華麗にスルーして、翔駒が床に散らばる死体のことを言及した。

死体はパーキングエリアで天童と赤コートの男との死闘の後にやってきた『サンキライ』と呼ばれていた男の姿に酷似していた。

死体は不自然にバラバラになっており、何かに切断されたような焼けた断面があった。


「おえ…グロすぎ」

「マジかよ…死人も出てんのかよ」


「やべえな…もうこれ、警察とかそれこそ哉太さんに任した方がいいって」


「俺、グロに耐性あるアピールとかしない人間だから普通に吐きそうだわ…」


天童がしょうもないことを言っていると、雅が刀を持って歩いてきた。


「…誰かと思えば、翔駒たちか」


「おおお!!相変わらずクールだねえ!」

「聞いたぞ?!雅クン学校では寡黙で、裏では公安とかいうかっこいい感じの組織と協力してその刀で犯罪者を裁いてるんだってな?!」

「ずりいいよおお!!属性盛りすぎだろそんなん絶対モテるじゃねえかもおおお」


「いや、親が国会議員なのもある意味属性モリモリだと思うぞ…」


翔駒が苦笑しながらツッコミを入れるが、雅の表情は曇っていた。


「…お前らまでこんな仕事をする必要はないのにな」


「え?」

「あぁ、俺は金持ちだけどまぁ社会貢献?ボランティアみたいな感じで承諾しちゃって…


「違う」

「報酬の話じゃない」


「Oops」


天童が口を紡いだ。


「お前らまで、危険な目に遭わなくていいってことだ」

「知ってる中でやってるのは俺と正井だけだ…」

「いくら稼いでも、命には変えられない…でも嫌でも俺は家に金を送らなきゃいけないんだ」

「お前たちは何の事情があってやったんだ?!」

「哉太さんには…アジサイにはお前らが来たら追い返すように言っておいたはずだぞ!」


「…」


翔駒は天童がふざけて口にしたOopsという英単語と、激昂する雅の言葉から大野先生の事を思い出した。

いまだに信じられない。確かに授業を受けたのは数回だが、身近にいた人間が死んだという事実が何よりもグロテスクだった。


「でも、哉太さんは雅クンが俺たちと仲良くしたいみたいな…」


「生半可な仕事じゃない!副業感覚でやっていい事じゃないんだ!」

『アジサイは何を考えているんだ…!』


「だ、だよな…でもさ!俺たちも何かやれることがあったら…」


「そこにある死体が見えるか?!お前達もこうなるかもしれないんだぞ!わかってないのか?!」


「」


天童は口角を下げて下を向く。


「俺は…仲良くしたいけど…こんなとこまで来る必要は」


突如、轟音と共にビルが崩れ落ちる。


「!!!!!!」


「おやおや」

「学生か」


煙の中から人影が見え隠れした。


「…!」


雅が柄を握る。

その刹那。


「『奈落穿つ冥光(ならくうがつめいこう)』」


煙の中から放たれた2つの光線のうちの1つが雅の手首に風穴を開けた。


「ッ…!!!」


「雅!」


翔駒が駆け寄ろうとするが、謎のオーラに圧倒されて体が金縛りにあったかのように固まった。


「児童殺しは趣味じゃないんだがな」

「まぁ敵意を向けた時点で殺すことは確定している」


全身が遂に見えた。体の至る所にサラシを巻き、スキンヘッドで赤いローブを纏った男。

他の構成員とは異なり、マスカレードマスクのようなものは一切身につけていない。


(絶対あいつがリーダーだな…)

「『ゴーストメリーゴーランド』」


天童が襲いかかる。


「やめろ!」


雅が制止した。


「愚直な」

掌から放たれた閃光が目をくらませる。


「ゔぅっ!!」


天童がよろめき、透過を解除した次の瞬間。

男の眼球から放たれた2つの光線が天童の脇腹を掠める。


「避けたか」

「ならもう一度いこう」


次に胸部に向かって放たれた光線は透過により回避することができた。


「乳首なくなっちまったらどうすんだ!」


勢いで背後に滑り込んだ天童は、男の左足に自身の右腕を透過させる。


(登録した時に聞いたが…DA…だったか?能力の流れを一点に集中させて硬化させる!)


天童は硬化させた右腕を瞬時に実体化させ、男の左足を貫いた。


「小癪な小僧め」

「その殊勝な態度だけは評価してやる」


「痛くねえのかよ!」

天童が叫んだ。


「動物が日々感じる痛みはこの程度ではない。」


左足を失った男はものすごい体幹で右足のみで直立する。

男はバックステップで距離を取り、再度光線発射の準備を行う。


「くるぜくるぜえええ!」


虚空飽和砲(ヴォイドレーザー)


だが、予想と異なりその光線は一直線ではなく不規則に移動する。

光線は地面を抉った。


「何だそれ!!こういう目からビームみたいなのって普通固定されてるもんだろ!」


「私のこのビームは視線に対応するものだ。」


(つまり寄り目したら一点に、離れ目なら外側にってことだな)


「すみません降伏します!!」


「?」


男と翔駒達は困惑した。


「俺もう二度と肉食いません!!許してください!!」


天童が突如土下座した。


「…その心に嘘偽りはないか?」


「ありません!!」

「居酒屋でも枝豆しか食いません!!」


「…良い。」

「ようこそ、我々の世界へ」

「さすれば今ここで、菜食主義を誓うがいい」


「はい!俺はもう二度と焼き鳥もホルモン焼きも食わないと」

「誓わねえ!!」


不意打ちのアッパーが顎にヒットする。


「ぐっ…」


男が一瞬気を失ったその時。


「『牙突•狼奔』!」


剣の切先が男の腹部を捉えた。

高速の一突き。それはサラシを巻いていても関係ない、不可避の一撃だった。


「ぶあっ」

「貴様ら…私を愚弄するか」


「天童!」


低い声がモールにこだまする。


「動物愛護団体糞食らえ!!!!!!」

「くたばれやぁぁあ!!」


「そうはいかんぞ!!」

再び天童の視界を閃光が遮る。だが、背後からすでにそれは迫っていた。


(ここまで来たら俺の間合だ…)

「『牙突•群狼』!!」


狼のような幻影が砂塵のような粒と共に現れ、男に噛みついて拘束した。


「『牙突•零式』」


加速された太刀筋は男の皮膚をサラシごと袈裟に切り裂いた。


「ぐぬわぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!」


「うお…」


圧巻の景色だった。翔駒は言葉を失い、膝をついて呆然としていた。


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