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Beelze 学生異能戦記  作者: 芥川りゅうくん
宿泊研修編
5/7

ふたつの戦闘

「警察関係者の者です」

「申し訳ございませんが、同行願います」


赤コートの男が翔駒に突然話しかけてきた。


「俺…え、僕ですか?」


突然の出来事に翔駒が狼狽えながら応答すると、赤コートの男はまたしても通信機を取り出して、背を向いて小声で何かを言い出した。


「…やはり報告の通りDAが甚大です。住民の安全を考慮して、屋外で確保します。」


あまりよく聞こえなかったが、なんとなく嫌な予感がした。

翔駒は慌てて茜と由美がいた窓際の席に顔を向けるが、いつの間にか便所に行ったのか、雅を見送りに行ったのかもうそこにはいなかった。

天童は優希にしつこく話しかけており、こちらには見向きもしない。



「「『握殺亜人拳I』!!」」



突然、半透明の赤い巨躯の手が店内に出現する。


「うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」


翔駒は目の前の信じられない光景に悲鳴をあげて外に駆け出した。


「何だ?!何だあれえええええ!!」


「誘導には完了しましたが対象が錯乱状態に陥りました。」

「指示を仰ぎます」


『了解。あまり騒ぎにならないように丁重に身柄を拘束しろ』


「了解」


駐車場まで逃れるも、次から次へと手の像が空中で生成されては、翔駒目掛けて襲いかかる。

瓦礫が舞い、頬を切り裂き鋭い感覚が走る。


「すばしっこいな」


「まっ、待てって!警察がこんなことしていいのかよ?!てかなんだよこれッ…」

「うわぁあぁあ!!」


言い終わる前に左足を手に掬われる。

赤コートの男がいつの間に持っていたコーヒーを片手に割れた窓ガラスをゆっくりと跨いで駐車場に出た。


『坊主』

『被害は最小限に抑えろ。あとがうるさい』


「承知していますよ」

「あと…田部です。いい加減名前で呼んでくれません?」


よく見ると、無数に襲いかかる手の中に赤コートの男の手と動きが連動しているものがあるのを見つけた。

翔駒は、コーヒーを飲む動作を行おうとしている手と連動している巨躯の手に飛び乗り、他の手に飛び移り


「?!」

(あの小僧…他の手を介してこちらに向かってきている)


『どうした』


「いえ、何でもありません」


『油断は禁物だぞ』


「はい…『握殺亜人拳II』」


先程の手より一回り大きな手が赤コートの男の前に出現し、じゃんけんのパーの形に大きく男を守るように開かれた。


「うわっ!」


翔駒は手に激突し、そのまま体を手に握られる。


「クッ……ソ、なんなんだよこれ…」


「…終わりました。」


『よくやった。そのままにしておけ。今もう1人送る』


「しかし、妙ですね…ここまで追い込んでもなお異能を顕現させないとは」


『最後まで気を付けろ。足を掬われるぞ』


ふと半透明の手越しに店内を覗くと、瓦礫の奥でこちらを覗く天童と優希、鵺子の存在に気付いた。


優希が泡を吹いて倒れるのが見える。

意識が薄れる中、天童がこちらに駆け出してくるのがわかった。


「俺のダチになにしとんじゃあああ!!」


突如、駆けている天童の体が透けていく。


「!!…もう1人からも膨大なDAが放出されました。」


『今捕らえている対象はそのまま拘束しておけ。』

『なるべく早く対処しろ。必要なら2人目を送る』


天童は翔駒を締め付けていた手をすり抜けて、翔駒を揺さぶる。


「おい起きろ兄弟!!」

「何が起きてるんだ?!」


「…天童」


翔駒の目が覚める。


「あ?」


「体、透けてるぞ」


「…?」


天童は後から自身の体の劇的な変化に気が付いた。

明らかに物質をすり抜けている。それに加え、体が微かに地面から浮遊している。


「何これ夢?」


「…わからないけど、俺も前変な夢を見たよ…」


「おい!!寝んな!!生活リズム崩れるぞ!」


赤コートの男の方を向き直す。


(これ…どうもあのハゲが操作してるっぽいな)


天童は男と反対の方向に走り出す。


(…?仲間を置いて逃げるのか?)


駐車してある車を蹴り、方向転換して走行中の別の車に飛び乗った。


(なるほど…こいつも俺の『ニアマンハンズ』の上に乗るつもりか)

(まだ異能の詳細がよくわからない以上、下手にこちらも攻撃しずらいな)


「トロいなこの車!駐車場で飛ばさねえでどこで飛ばすんだよ!」


車が別の手の付近まで近づいたその時、天童は手に飛び乗った。


「甘いな」


天童の乗る手が突然動き出した。


「うおぉおっ?!」

(何だこれ…もしかしてリンクさせてる手をこっちに切り替えやがったのか?)


「…手強いな」

「コーヒーブレイクはここいらで終わりにするか」


赤コートの男は空のマグカップを床に落とし、右手を前に据える。


「さて、右手解放。ここからは本気だ。」



同時刻、町工場付近にて



(ここら辺だと伝えられたはずだ)


息を切らしている雅がラケットケースを担ぎ、近辺を彷徨いている。


「お探しなのは俺かなァ?」


スパイクヘアの鋭い目つきの男が工場の陰からぬるりと現れる。


「!!」


雅は腰を落として警戒状態になり、ゆっくりとラケットケースから刀を取り出した。


「アレェ?バドかと思ったら剣道部の方かなァ?」


「黙れ…俺は野球一筋だ。」


「あ、そう?まぁ別にどうでもいいんだけどねェ…」

「だってお前、今死ぬから。」


突如、雅の足元の地面が変形し、口が出現する。


「いただきまァ〜〜す」

「よく噛んで食べないとね…ってアレ??」


「そんな簡単に俺を出し抜けると思うなよ」


雅は背後にバックフリップして回避していた。


「志島願…クレジットカードの暗証番号を不当に利用したり、女性用便所に陰茎を出現させるなど数々の異能犯罪をしてきた男」


「よ〜く聞こえませんねェ〜」


志島と呼ばれる男は聞こえないと耳の近くで雅に掌を向けて、その掌に耳を出現させて雅を挑発する。


「ニュース見た?俺ら異能犯罪者は今までアングラだったんだけどさァ、それも今日までだワ」


「貴様…そんな事はお天道様が許さんぞ」


「君も可哀想だよなァ、無垢な学生のくせに公安に利用されてるんだろォ?」

「巷じゃテロリストに変な特殊部隊みたいなのも投入されてるらしいしなァ…」

「やっぱ個人で犯罪するのがいっちゃんいいわなァ。リスクも低い。ソロプレイこそが至高なのヨ。」


「大人しく聞いていたら、この野郎…!」


雅が抜刀し、居合の構えを取る。


「ねェ君大丈夫ゥ?!さっきから息切れしてるけどォ!もしかして喘息かァ?俺もなんだよなァ」

「なんなら俺の薬分けてやってもいいぜェ。処方箋なんて勿論貰ってねェけどな。あ、俺に降参したらだぞォ。当たりま…


突如、振るわれた刀から放たれた斬撃が志島の脛を直撃した。


「イギイイイッ?!」


右膝をついて床に倒れ込み、歯を食いしばり余裕だった表情が崩れる。


「言わんこっちゃないな…」


「へへへ!コンチキショォオ!」


志島は右足を引き摺りながらも、迷路のような工場の中に逃げていく。


(取り敢えずは逃げられたなァ。さぁ、こっからはヒットアンドアウェイってこった)

(しゃーねェ。俺は隠れながら、チマチマ攻撃させてもらうぜェ)


「『四肢混合殺法』」


志島が静かに謎の言葉を詠唱する。

突如、地響きと共に地面を突き破り腕や足が雅の周囲に出現する。


(ヒヒヒ、俺は隠れ蓑を変えながらこうやって攻撃させてもらう)

(しっかしいいなァ?技名を自分で考えて声に発するだけで異能の顕現がスムーズになっちまう。いいシステムだ。最高だよなァ?)


「…。」

雅は呼吸を整え、襲いかかるひとつひとつの四肢をゆっくりと、しかし確実に斬り落としていく。


(あいつッ…もう全部斬り落としやがったァ?!)

(まぁいいぜェ。アレはただのデコイ。時間稼ぎにすぎねェ)

(俺は今のうちに場所を変えて、あいつの動きを邪魔する。さぁ、トンズラさせてもらうぜェ!)


雅はラケットケースからまた何かをゴソゴソと取り出し始める。


(ア?何してんだあいつ)


取り出したのは、なんとペイントガンであった。


(は?あいつ俺をおちょくってんのか?舐めプのつもりか?ア?)

(まぁいいぜェ。サバゲーなら得意だしよォ)


「ヒヒッ、『毛髪絡め』」


雅の足元におびただしい量の髪の毛が出現する。


「気色悪いな」


雅は足を取られる。


(まだやれるぜ!時間稼ぎできることは何でもしてやるよォ!)

(じゃあなクソガキがぁ!)


その刹那、工場の無数の骨組みの間を掻い潜った黄色い物体が志島の背に命中する。


「ギッ」


(いってえなァ…へへっ、いいぜェ?)

(こんなペイントガンの一つや二つ当てられた程度、何の意味もねぇ!逃走完了だァ!)


勝ち誇ったその時またしても、斬撃が工場の壁を切り裂き志島の腹部を捉える。


「グッグァアァアァアァア!」


「二の舞を踏んだな」

「これが俺のバトルスタイルだ。」


「チキショウ!!いってえええ!」


「ピーピー五月蝿いぞ木偶の坊」


「何で場所がわかったァ!俺はペイントガンを撃たれた後すぐに場所を変えたはずだぜェ?!」


「俺は色盲だ。色が識別できない。」

「だが、昔からハッキリ見える色が唯一ある。」

「ショッキングイエローだ。これだけは壁越しでもハッキリ視認できる」

「その傷じゃもう動けないだろう…大人しくお縄につくんだな」


「…ッ!」


「嫌だァア!何だよそれェェ!意味わかんねえよォ!てか何で刀からあんな意味わかんねえもん出せんだよォ!狡いぞォ!!」


「黙れ」


赤子のように癇癪を起こしてのたうち回る志島の顔の右隣に、刀が深々と突き刺さる。


「ヒッ…!」


「いい加減口を閉じたらどうだ」


「グァアーー!俺の華々しい犯罪者街道を無茶苦茶にしやがってェェェ!!」


雅は峰打ちで志島を気絶させ、そのまま背負い込んだ。


「…帰るか」


雅は心残りがあるのか、不服そうにしょんぼりと歩き出した。



同時刻、パーキングエリアにて



天童はトリッキーな手の動きに翻弄されていた。


それに対して、赤コートの男は余裕といった表情を浮かべている。

(俺の手は基本細かい動きはできない…だが、二つの手のみは俺の両手と連動させることで詳細な動きが可能だ)

(せいぜいあの男の異能も物体を透過できるのと少し浮遊できる程度の物だろう)


「ハァ、ハァ…!」

(長く手の上に居座ってると振り落とされちまう)

(素早く動いてアイツが対応する前に手を乗り継ぐ!)

(そしてあいつ本体を穿つぜ!)


赤コートの男は大胆に天童本体に近づき始めた。


「へへ、わざわざお出迎えしに来てくれたのかよ」

「舐めんのも大概にしろよな!」


天童は透過を再発動し、自身の乗っていた手をすり抜けて地面に着地する。

そのまま赤コートの男目掛けて走り出した。


「一辺倒なことよ」


対する赤コートの男は、掌印を結ぶように軽やかな動きで自身の真下に手を出現させ、そのまま高所に移動する。


「んだボケェ!」


天童は近くの走行中の車の上に飛び乗り、透過してしれっと車内に入り込み助手席に座る。


「ってうわぁぁぁぁあ?!何だアンタ!!」


40代後半の男性ドライバーは突然の出来事に驚愕し、卒倒してしまった。


「悪いおっちゃん!」

「車借りるわ!」


助手席からハンドルを握り、アクセルを踏んで赤コートの男を持ち上げている手の腕目掛けて車を走らせる。


「ハイグラ取ればいいってもんじゃないぜ!」


尺骨辺りに車が激突すると、赤コートの男は呻き声を上げた。


「ぐおぁあっあ!!!」


「んだよ、ちゃんと痛覚も連動してんじゃねえか」

「そんなら話は別だぜ!」


車から降りた天童は、割れた窓ガラスを両手に持ち男を支える巨躯の腕に突き刺してクライミングし始める。


「くそッ!!!!!!!!」


赤コートの男は右手首を押さえて悶える。


『ああ、田部。どうした』

『田部、応答せよ。』


「今集中してるんすよ先輩!!」


「なぁ、教えろよお前!学生いじめて楽しいか!!」

「お前ショーマとどんな関係なんだ?!あ?!」


ガラスをどんどん突き刺し、腕を登る。

ついに掌に辿り着き、足を乗せて赤コートの男と対面する。


「オラ、お前もう終わりだぜ」

「洗いざらい話してもらうからな。」


「…俺は公安の人間だ。」

「異能未登録者の身柄を命懸けて確保し、登録させる…」

「ニュースで見なかったのか…」


「あ?しらね。俺そういうの疎いかもしんないわ。」


「くそッ…」

(学生だからと舐めていた…)


「ショーマ!聞こえるか!?」

「お前よく逃げれたな!チョベリグだったぜ!」


「煮るなり焼くなり勝手にしろ…」


赤コートの男は膝をついて項垂れている。

その時。


「おい!そこまでだ!」


「あ?」


遠くから、2人、いや3人の警察関係者と見られる人物がやってきて瞬く間に天童を包囲してしまった。


「…遅かったな…もう逃げられないぞ」


「チッ」

「あー…降参降参…」

(やべぇなこれ…退学モンかも…いや、下手したら少年院にぶちこまれちまいそうだな)


天童は、見晴らしのいい掌の上で両手をあげて降参した。

その様を、優希と鵺子、そして茜達は見ていた。

定期テスト対策等で遅れてしまいました!

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