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Beelze  作者: 芥川りゅうくん
第一章 宿泊研修編
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第十五話 VS快楽殺人鬼①

「真斗さん、大丈夫でしたか??」


「えっ、ええ」

「スタッフは全員で消化にあたれ!逃げ遅れる子供がいないように目を光らせるんだ!」


より一層炎が燃え上がる。


「雅君、遅れていますよ」


「申し訳ございません…」


(まったく、即時帰宅せずに続行とは公安側は何を考えているんでしょう)

(公安は我々教職員に対して何も教えてくれない…ただ一つ、共有された情報として挙げられるのは教職員の異能所持者のことだけ)

「はやく二列横隊の中に混じ…


《「うわぁぁぁぁあぁあっ?!」》


「!!」

(この男だけではなかったのか?!)

「『絶対秩序(ユニ・グラヴィティ)』」


小田の体が叫び声のする方へ不自然に高速移動していく。


(小田さんのMPAは重力を操る…)

(先程私や生徒に行使した重力を強めて相手の動きを束縛するほか、)

(自身にのみ影響する重力源を半径20メートルのどこかに設置することも可能)


小田の体が"横に"自由落下している。


(効果範囲こそ狭いけど、重力源の再配置を繰り返すことで実に繊細な動きが可能になる)

(さっきの叫び声がなんなのかは私にはわからないけれど…異能を持たない私は避難誘導や消化に力を入れないと)


野崎(のざき)は現場の指示に尽力する。





「いやぁ、」

「できれば教員の皆様の記憶にも干渉したいし、眠っていただきたい所存なんだけど」

「大人にまわすDAが勿体無い」


ねっちょりした口調で雲原もとい福江輝は呟いた。


(こいつ、宗吉(そうきち)じゃねえのか)

(ガワだけだ…!宗吉の皮を被ってやがる…!)


「いやはや、こうも教員ともども生徒たちが異能持ちだと違和感があるなぁ」


『どうする…?!』

『俺は学年一冴えてる天才の緑川リョウだぞ…!』



「リョウ」


天童(てんどう)がネクタイを整えながらやってくる。

周囲に火の粉が舞い、それらしい雰囲気が演出されている。


「うお、飛鳥(あすか)!」


「心で理解した。」

「ソイツは宗吉(そうきち)じゃない」


「…!」


「中学の頃はアイツとはほぼ関われなかった」

「親が話すなとよ。」

「部落があった地域出身だからってさ」

「肩書ばっか気にする嫌な親だ」


「…」

「天童…」


「俺はインドが大好きだ。」


「??はぁ?」


「だがな、カースト制度は大嫌いなんだよ…」

「だからお前!雲原宗吉の贋作(にせもの)に一撃喰らわせてやる」

「カリーパンチ!!」


炎を手に纏って宗吉に襲いかかった。


「「「遅い!!」」」


勢いよく振り下げられたそれは軽々避けられる。


「テンちゃん遅いなぁ!」


「うっせえ!」


ブラフとして使った炎を纏わせた右手に意識を集中させる。

すれ違いざまに左手を宗吉の右脇腹に直撃させ、更に『ゴーストメリーゴーランド』を発動して腹部を貫通させる。


「黙れ!!軽々しく言われたこともねえあだ名を口にすんな!」


「天童!!その手、大丈夫っぺ?!」


「俺は心配すんなや、リョウ。」


そう言うと豪快に制服を脱ぎ捨てる。

黒色のいかにも御曹司らしい黒色のシャツと、タイトなジーンズが露わになった。


「それ制服か?!」


「魔改造してもらった」

「工大生にな」


「嘘こけ」

「…アイツ、今の手応えがなかったよな…」

(回復してる…?)


緑川には疑問があった。同じく、天童にも相手が()()()()()ことに気付く。


「お前のMPAは?」


「え?」


「DA…だっけ?ダダ漏れだぜ」

「お前もあるよな、異能」


「…変な頭の奴に教えてもらったんよ 使い方」


(あの多田うんたらみたいな奴か)


「一回、やってみるわ」


宗吉を見据えながら手に何かを込める。


「待て」

「発動する時は腹に力を込めろ。」

「あと、言霊みたいな要領でなんかしらの技名を発してみるんだ」


「えぇ…?共感性羞恥…」



「早くこいよー」

「俺の息子がこんな金髪のチャラいやつと絡んでたと考えるとなぁーあーー」


「だから遊べてねえんだよ…!」

(クソ親はアイツ(神一)で見慣れたと思ってたぜ)


天童は雲原宗吉?からの攻撃に備えて構える。


(考えろ…クソカッケェ俺のMPA)

(技名…技名!!)

「「『獄炎(ヘルファイア)』!!!!」」


緑川の目の前にショッピングカートが現れる。


「へ?」

「あっえっ、…」


「oh…」


天童も絶句した。


「…」

「『百鬼具用・権怒羅(ゴンドラ)』!!」

ショッピングカートで突進する。


「無謀だなぁ」

「若い子特有のそのファイトな心意気、嫌いじゃないよ」


「『鰐牙死転(デスロール)』!!」


突如、宗吉の近くまで来るとショッピングカートの持ち手を掴んだまま大回転した。


「おおおおお」

「面白い面白いよ」


数歩下がるだけで避けられてしまう大胆な攻撃。

宗吉が手を叩いて面白がる。


(何かウラがあるはずだ…攻略法は絶対にある)


「…さて、この所逃亡生活でまともに人と話せてなかった」

「君たちにここで自分語りをしよう」



俺は雲原純平(くもはらじゅんぺい)

大阪のとある地域で産まれ、物心ついた頃から小学校でよくいじめられてた。理由は?

えたひにん…?意味がわからない。どうでもいい。

特にアイツ…ヤマダはよく俺の靴に画鋲を入れてきたなぁ。


「ホラ!言えよ!画鋲入っててガビョーン!ってさァ!」


クソガキが。当時は憎たらしかった。でも、時が経って不動産業に就き始めた頃。

アイツがベビーカーを押してた。覚えてるよ…大分顔が変わっても雰囲気でわかる

アイツは俺を覚えてくれてた。挨拶も。

その頃は知らなかったが潜在的なDAが覚醒してたのか?どうでもいい。

アイツの息子…一目見て俺は思った。


ぐちゃぐちゃにしてやりたい。

した後のアイツの顔が見てみたかった。

やってみた。…それはもう最高に気持ちよかった。

限界もわかんないほどに歪められた赤子だったモノをストーカーして見つけ出したアイツの家に直接送りつけてみた。

アイツの悲鳴と妻の嬌声が2軒先からも聞こえてて面白かったなぁ


そこから俺は児童虐待の気持ちよさに目覚め、児童養護施設を設立して運営を始めた。

孤児たちと道化師の姿で遊ぶ。いつしか、俺の地域の評判は根強いものになっていた。

それと同時にサディストな感覚は薄れていき、一時期は自首も視野に入れてたさ。


孤児の1人と積み木で遊んでたある日。ある男がやってきた。

大野。この頃には教員だった小学生の頃の俺の元クラスメートだ。

来月に養子となる予定だったウチの16歳の孤児が大野のとこの学校に入学するらしく、その視察だと。

そん時に、窓からか知らないが俺が女児と2人きりでプールを泳いでたのを見たんだろう

たちまち噂が飛び交った。通りすがりの顔も知らない赤の他人にすれ違いざまに罵倒をされる。

俺は今思えば動機を求めていたのかもしれないな。子供で、遊ぶ、快楽殺人鬼となる動機を。


宗吉は養子だった。評判が良かった頃に擦り寄ってきた女と一緒にそれなりに育ててきた。

一度殺しをした俺にのらりくらりとやれる権利はない。評判が広まると、卓上に離婚届があるのを見つけた。


その時、何かが切れる音がした。

俺が虐めるたびに宗吉は自分を隠すようになった。

友達にバレないように。傷跡をどこからか漁ってきたメイクで隠す。

中学生になるとピアスを全身に着け始めた。その頃から不登校だ。

当たり前だ。俺が殴るから。抑えようとしても抑えられない。可哀想なものを見ると興奮する。

特に、死体。死体はもう戻らない。背徳感が倍増する。

育て上げた家畜を捌いて一夜にして食すような感覚だった。

殺した。

あととりあえず大野も殺そうと思った。あの髭面。外面だけ良い風にして。

逃亡生活を続ける中、俺は偽名を適当に考えた。異能で顔を変えながら逃げる中、ホテルで見かけた福江の苗字と輝という名前。これは良い。良い組み合わせだ。

もっと殺していこう。俺がこうなったのは他人のせいだ。悲劇の道化師をこれからもどうぞよろしく

ふふふふふふふふふふふふふふふ



「…お前それアメリカの牢獄だったら即刻リンチだぞこの野郎!」


「心得てるさ」

「俺に明日はないんだよ」




その時、福江輝の本体はとある児童養護施設にあった。

八景町ハピネスハウス


「…」


《…〜♪》

ロッキングチェアに座り、貧乏ゆすりをしながらクラシックを聴く男。

人影が部屋に伸びる。



「…誰だ」


「大野先生の仇を討ちに来た」

「殺した理由をつらつらと述べて、潔く出頭しろ」


「うそつき」

「包丁を持ってるよね?」


ゆっくりと七瀬のほうへ指をさす。


「図星?」


七瀬は背中に包丁を隠し持っていた。


「…」


「殺すことは、殺されること。」

「生に執着は、ない。」


「殺した理由をただ言えよ」


「せっかちな厨房(こども)だ」

「なんでわかったんだい?ここと、俺が」


「まず様々な遺品からアリバイを探した」

「大野先生は毎晩Vlogを撮っていた」

「それを全部観た。」

「次に公安から異能未登録者の情報を得た」

「特に指名手配されていたお前と先生が動画内でよく語っていた男は共通点が多かった」


「僕は福江輝だぞ?」


「なんでだ、なんで殺した」

「俺の…俺の恩師だったんだ」


七瀬は俯いた。


()()()()()?」

「ハハ…だったんだ、だっぷんだ」


「「何が可笑しいんだ!!」」

「このっ…快楽殺人鬼め!」


「過去形にするなよ。」

「俺は今でも殺した息子を愛している」

「大野…あのメガネもなにかと懐古厨だろう、教え子の君にはウケると思ったんだがな」


「やはり殺すか。」


静かに憤る七瀬は包丁をゆっくりと取り出す。住宅街のソーラーパネルに反射した光が鋭い刃先を反射する。


《おめえは筋がいいなぁ》

《インタビュー終了ね》

《エアロスミス、聴くか?》


「うわぁぁぁぁぁあぁあ!!!!!」


「『迷える子羊(ストレイシープ)』」


包丁を構えていた七瀬が突如力なくその場に倒れ込む。


「俺は夢に入って相手の記憶を盗み見する他…」

「記憶改ざんや分身体の創造、強制的に眠らせることや、少し先の未来を予想することができる」

「寝てる相手を殺すのはあまり面白くない。でも、2度と起きないという悲しみが興奮する」


「ストロベリーフィールドフォーエバ〜〜」


七瀬の喉に包丁が突き立てられた。


「…?」



「ブフッ…!!」


ドライブ中の鵺子(ぬえこ)は突然吐血した。


「私の等価交換…」

「生徒の死を私の臓器で代替すること」


フロントガラスの内側に血液が付着した。

電話をかけ始める。


《もしもし、鵺子さん?》


「誰かが"死んだ"みたい…」


《…そうか》

《アンタはよかったのか?これで》


「私の責任よ。(あかね)ちゃんをそそのかして、天童くんに車を借りて…アンタの部下の巡回ルートに誘い出して」

「危険があろうと、茜が幼馴染の子達や友達と無事に行事を終えられるように…もしもの時もちゃんと戦力がいるように」

「全部私のエゴ。名目上は宗吉くんの救出だけど…」


《彼はもう死んでいる》


「私が土地を…譲ったのが駄目だったの」

「最悪の男」

「あのせいで多くの子供が…」


《無理しなくていい》

《アンタはただの親戚だろ…本当なら僕が茜らのことを》


「いいえ…私の贖罪…せめてひっそりと終わらせて頂戴」


一部の無機物にも纏われる謎めいた異能、MPA。

多くのDAを持たぬものでも条件を利用することで自身のDAの何倍もの効力を発揮することができる


鵺子の生来のMPAである治癒が底上げされ、命尽きた生徒たちを蘇生する保険と化していた。



「…?」

(偽ソウちゃんの動きが鈍くなった…)


「あれは…?」


「先生?!?!」


気づけば小田が後ろに立っていた。

天童達は後ろを見上げる。


「君たちのような逃げ遅れた生徒らを保護しに来ました」

(なぜ記憶抹消されない…?ここにいる雲原宗吉は彼等の記憶から私のMPAを消そうとするどころか)

(生徒達を襲っている…?!)

(公安側はまだ私達教職員に隠していることがあるようですね)


「ソウちゃんは…本当に本物は死んじまったのかよ」


緑川がやるせない表情でつぶやいた。


(?)


「さっきのお前の話本当かよ!!フクエか知らねえけどよこの虐待野郎!」


(どういうことだ…協力者であるはずの雲原宗吉が死んでいると?)

(仮に彼等のいうことが本当だとして、なぜそんな重要な情報を教えないのでしょう。)


『先生…先生もニュースとかで見たろうし、自分自身の異能もあってわかってると思うんですけど』

『コイツは…俺の昔のダチなんです…』

『2組の天童とは…家庭の事情とかで友達になれなかったけど……は、あいつは…』

「アイツはダチの偽物です!!お願いします!!先生のMPAの力を貸してください!!」


「俺からも頼むぜ担任」


「担任ではなく小田先生です。」

「…まぁ、いいでしょう」


眼鏡をクイッと整えてみせた。


「『絶対秩序(ユニ・グラヴィティ)』」

「『混沌渦中(カオスホール)』」

「生徒の悩みに耳を傾けるだけではなく…」

「行動で報いてこその教師です」


(話がすげーわかる先生だ!)

「ともかく、フクエ!!よくわかってねえけど、お前は絶対にボコボコにしてやる!」


緑川はショッピングカートを顕現させた。


(3年の七瀬くんが大野先生の件で何か画策していると公安の人から聞きました)

(犯人が誰かはわからないですが…無事を祈ります)



「…」





(なぜ再生する?この厨房の異能か?)


「…なんか回復してきたなー!」

「…大野先生の加護だ…これは」


(まずい、山荘で戦わせている分身体…傀儡の操作が間に合わない)


「仇討ちだ…覚悟しろ、雲原純平」

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