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Beelze  作者: 芥川りゅうくん
第一章 宿泊研修編
12/16

第十二話 罪と罰

真面目に夜はちゃんと寝ましょう

日が傾き、部屋の中の茜の影が伸び始める。

突如、今まで忘れていた『雲原宗吉』という人間のことを思い出した。


「そうだ、今度遊ぶなら雲原ってやつも誘おうよ」

「入学式初日に遅れてきたやつでさ、結構おもろい…


「…えっ」

「ソウ君のこと、何で知ってるの?」


「えぇ?だってクラスメート…」


「だってソウ君、この学校にいないじゃん…」






「森!後ろ!!」


「!!」



『うおおおっ』


昭弘の真後ろにいた3組の釘井が、もう一つのボールを昭弘目掛けて振りかざした。


(外野か!!!!)

(!!ノッポの癖に影が薄いやつだ…気付かなかった!)


「うおっしゃあ!!!」


体を三日月型にひねってギリギリ回避する。


「どうしたぁ!2組!3組!お前ら束になっても俺には当たら…」


《ピピー!!!》


「お前らー、時間だ!」

「何だ、1組で残ってるのは森だけじゃないか!」

「ドッジボールは個人種目じゃないぞー、勘違いすんな!外野に積極的に回してけ!」


体育会系の体育教師 山本(けん)が悪意なく昭弘のメンタルを削る。

遠回しに自己中にボールを避けているだけだと言われたようなものだ。


「…」

(恥ずかしいぜ…。)


1人の男が昭弘に歩み寄る。


「いい試合だった。前半はヒヤヒヤさせられた」


(雅…)

(フン、負けてしまったが悔いはない)


「あぁ、お前も相当なやり手だった。ありがとう」


(ふふっ、これがスポーツマンシップというやつか)


「いや何負けてんねーーーん!」

「無能コラ!」


同じくハンドボール部の低身長系男子、篠崎が外野の方から水を刺すように昭弘を非難する。


「…」


「あ、あは、あはは」

「ヨシ!お前ら、解散だ!自分の部屋に戻れ!」

(締まらない…)





壁に掛けられた館内の案内を眺めていた。

ボーっとしながらも、廊下を歩き出す。


「俺たちは同部屋か」

「偶然だな翔駒」


(みやび)が赤い曼荼羅(まんだら)模様の柄が入った廊下のカーペットを強く踏みしめながら翔駒(しょうま)と並走する。


「ん…あぁ」

「何となく雅とは別の部屋だと思ってたよ」


「な…」


「?」

「あー!!え、別に俺違うって!雅のこと好きだよ!」


「いや、あぁ…」


「てかさ、大丈夫だった?」


「何がだ?」


「いや、その、風呂の件…」

「お前…あれ、全裸だったんだろ」


翔駒は言葉を選ぼうと間を開ける努力をするが、対する雅は意外にも飄々としていた。


「ん?あぁ、全く問題はない」

「森閑の女子達は優しいからな」


「あ、マジ?!なら良かったわもし病んで不登校とか…」


「ただ」

「この近くに樹海があるかどうかだけ教えてくれ」


「早まるな!!」


「みなさん、そろそろ全ての班が風呂は終わりましたね」

「そこの緑の箱に入ってる牛乳を1人1本飲んでください」


そう言って廊下のスペースで腕を組んでいた小田は瓶の牛乳が詰まったコンテナを指差した。


「すみません小田先生あの…」

『先刻の落盤事故の件で…』


『あぁ、わかりました。今行きます』



『長門!おい、今小田センとどっか行ったあの女の人現代国語の先生だよな?』


『小柄だけど大人って感じでバチくそ刺さるべや』


『お前パパラッチしてこいよ』

『先生が2人で個室とかスキャンダル確定やん!』


『お前しょーもないからやめときや…俺は降りる』



142号室


《こちらが旬の食材、サワラ!》

《お味はいかに…??》


《うん、サッパリ!》


「今日の番組表クソほどおもんないなぁ」

「明日登山してその後焚き火だろ??」


天童がトランクから私服を取り出して海老反りになりながらテレビを観ている。


(なんか、いい雰囲気だな)

(居心地がいいや。)

「明日の焚き火は他クラスと合同?」


「せやで」


「…なぁ、」

「翔駒、優希、外行こうぜ」


「え、僕も…?」


同部屋の優希は角で縮こまっていた。


「トランプするんじゃなかったのか?」

「一応アソビキングのデッキも持ってきたんだが…」


「!!」


優希の首が勢いよく90度曲がり、目が輝き出す。


『雅クントレカとかやるんだ…意外だワ』


「天童、外って?」


「ん、コンビニ」


「はぁ??」


「買い出しに行くぞ。」

「まず作戦会議からだ!フー!ゾクゾクしてきたぜ」


「マジで言ってんの?お前やめろよ本気で…」


「乗った」


真面目なイメージがある雅の予想外すぎる回答に翔駒はその場でずっこけてしまった。


「嘘だろ?」


「ヒヒーン雅クン君ならわかってくれると信じてたにょ!」


(さっき誘う時名前出してなかっただろ…)


「優希君…行くよな」


恐ろしい剣幕だ。


「は、はいいきますいきます」


目を丸くして頭を勢いよく縦に振る。


「おけ。翔駒は了解取らんわもう」


「あのさ、監視カメラってどうすんだよ」


「緑川達が調べたけど、それらしいものは一つも見当たらなかったってよ」



《コツ…コツ》


薄暗く無機質な廊下の絨毯ゾーンを越えると、大理石のホールに出た。

外はもうすでに真っ暗だ。廊下にいた時は個室から聞こえた話し声も、今は何も聞こえない。


『そもそも金あんの?』


『バッキャローあるわ!俺の奢りだ』


「お、お世話になります…」

優希は先陣を切っておそるおそる装飾で溢れたガラスの両開きドアを押し外に出る。


《キイイイイイ》


軋む音が外に響く。暗闇の駐車場では、林の中から羽虫の鳴く声が聞こえてきた。

背徳感が徐々に4人を襲う。


『うおおおお!』

『なんかこういう時トイレしたくなるのは俺だけかァ?』


『お前だけだよ…』


『いや、俺もだ』


『雅…』


山荘からある程度離れたところで、小走りで下山していく。


「帰りの作戦はあるんですか?!」


息切れしかけている優希が問うた。


「あるわ!…こっから降りるとコンビニが一軒だけある」


「何でそんなの知ってんだ?!」


「カイ…緑川達の情報(ソース)だ」


「あいつらマジで何者なんだよ!暇かよ!」


下り坂を思いっきり駆けていく。

確かにコンビニと思わしき光が見えてきた。


「見ろよ!俺たちの野営地だ!」

「進め!」



「ハァ、ハァ、ハァ」


コンビニに着いた4人。だだっ広い駐車場に座り込む大学生くらいの不良達が興味津々と言った面持ちで4人を見てきた。


(当たり前だな…こんな真夜中、制服姿に金髪と作業着の男がコンビニにいたらそうなる)


特にこの中でも一際小柄な優希には何か目を引くものがあったのだろうか。

5人の不良の中から黒いジャケットと青のGパン、ニット帽のサングラスの男が優希の方へ歩み寄る。


「兄ちゃんら森閑の生徒だべ?」


制服のワッペンを見て、缶コーヒーを持つ手の人差し指で差した。


「あ、、うす」


「よいしょお!!」


手を叩き、他の不良達の方を向いて大声を出す。


「君ら小田って知っとるか?」


ポケットに手を突っ込んで足をフラフラさせながら会話を続行する。


「あ、はい」

「担任です」


『バカ!』


翔駒は優希が正直に言ったことを咎めようとした。


「ふぅん…」

「俺、村井。村井和彦。よろしく伝えといてや」


「…知り合いですか?」


「知り合いも何も先輩やけん」

「ワシら、バックパッカー」


「へぇ…ここ地元なんですか?」


「おん。フヘ、ごめんななんか付き合ってもらっちゃって」


「あぁ、いえいえいえ」


「とりまよろしく頼むわ」


4人の取り巻きの元に戻っていった。

何やらワイワイ話している。


「気味悪かった〜、そんじゃ戦利品(お菓子)仕入れに行くぞ」


「そうか?俺は意外と優しそうだと思ったけどな。」


《ウィーン、『イラッシャイマセ!』》


「小田先生って昔はワルだったのかなぁ」


「ブイブイ言わせてたんちゃう?」


天童が気持ち悪いジェスチャーで表現する。


「知らんけど。」


「グミ買うか」

「3袋くらい買うべ、コーラ味」


「なら俺はポテチだな」


「おーいポテチなんて食ったらパフォーマンス落ちるぜbro!」

「雅クン普段から控えろよ??」


「あぁ、気をつける」


「翔駒何食う?」


天童が後ろを振り向いた。



「…優希は?」



公安本部 今朝


「こういうケースは稀だな」


「…本当にあの子達を利用して良かったのかねぇ」


「鵺子さん、もう遅すぎるよ」

「アイビーが手加減してくれて助かった。」


「MPAを知っているような素振りは一切出さないようにしたわ。」


《(あのニュースの話、本当だったのね…)》


「にしても、本当にすぐ応援が駆けつけるなんて」


「うん。今度の法律は凄く徹底しているよ」

「…心配かい」


「当たり前よ」


「宗吉君は本当に可哀想だ。」

「妹もよく遊んでた。…同じ幼馴染の、間宮君も」

「…教員の自殺、あれは事件だよ。確実に」


「可哀想にねぇ…お父さんが本当に」

鵺子は口を左手で抑えた。


「戦力が足りない。次の森閑学園の宿泊行事で、優希君がまた暴走したらどうしようもなくなる」


「ならどうする気なの?」


「公安を送り込む」

「二課の連中は今榊翔駒(さかきしょうま)沢嶋雅(さわしまみやび)の護衛という名目で捜査に当たっている」


「聞いたわ」


「山荘で暴走したケースを想定して、二課で防ぎきれない場合は『アラクネ』を動員する」


「使用者は決まっているの?」


「榊翔駒だよ」


「本当に情がないのね…」

「友達を殺させる気?」


「全部、そのためだろ?」


手すりを両手で掴み、身を乗り出してカーテンウォールから朝ぼらけの街を展望する。


「パーキングエリアの件も、鵺子さんの発案じゃないか」

「お互い様だよ」


「…これで本当にいいのかな」


「今はいい。我々の本当の目的は教師をMPAで自殺誘導した『福江輝』もとい『雲原純平』の捜索と、間宮優希の監視。そして…」

「雲原宗吉の救助だ」


白玉哉太の瞳に映る街。その眼は確かにどこかを見据えていた。



現在 工場地帯


「ここら一帯は2丁目と3丁目の境でしてね」

「ここが福江さんが買い取った土地です」


男はペラペラと資料をめくりながらしゃべる。


「ここがか」

「…探偵って意外とスーツなのか、勉強になる」


ハキハキした声だが、普段通りの勢いはない。


「はい、依頼人の住所に訪問すると、よく営業の人と間違えられますよ…」


「佐賀鵺子は6年前に福江にこの土地を譲渡しておりまして」

「所得税…


「そんなのはどうでもいいんだ」


「は、はい」

「…七瀬さん、本当にいいんですか?保護者の方などともう一度…」


「いい。俺にとって真実を知る事は100万よりも大切だ」


「…」


「いつだ?」


「ゑ?」


「さっきの話、もう一度聞かせてくれ。すまん」


「6年前、福江は例の裁判から偽名を使用、その時期です」

「佐賀鵺子が彼の本名は知ったのはそこから後の時期だと…」


「転移後の住所は?」


「は、はい」

「八景町ハピネスハウス3-3-4です」


「今から向かう。」


「!あの、くれぐれも…!」

『…行ってしまった』

「あ!!報酬は要りませんよ!初回ですしまだ高校生なので!!」


七瀬は振り向く事なく来た道を戻っていく。

地面を踏みしめる一歩全てに憎悪が込められていた。


「福江輝…福江輝…福江輝…」


《英語を覚える際は、頭に刻み込め!》

《エアロスミスはいいぞ〜、ほんまにかっちょええんじゃ》


《サッカーはパスが命だ!頭に刻み込め!》


「大野先生…今、仇を…」

「福江輝、福江輝、福江輝」

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