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Beelze  作者: 芥川りゅうくん
序章 始業編
10/16

第十話 覚醒

遅れました

「まだだ…」

「まだ終わらんぞ!!!!!」


「??」


「「グオオオオオオオ!!!」」


男は立ち上がり、再度透過しようとする天童(てんどう)に掌を向けて発光させる。


「またこれかよ!」


「しぶといな」

「『牙突•狼奔』」


雅が男に向かって突撃するも、紙一重で右に躱わされる。


「!!」


「『殺しの終光(ディバインキャノン)』」


『『早刻』』


その時、男の四肢が四方に吹き飛んだ。


「ギャア!!」


情けない断末魔と共に男の体が地面に転がり落ちる。

その背後には光を反射させた刀を哉太がいた。


「哉太さん!」


「アジサイ!!なんで彼らをこんな危険な案件に投入したんですか!」


「あれ、僕はやれとは言ってないんだけどな」


「とぼけないでくれ!」


「戦力になりそうだから投下した、それだけだよ」


「え?」


その突き放すような回答に、思わず3人は息を呑む。


「言っておくが僕は君たちの事を大切に思っているわけじゃない。」

「もうわかっているよね?」

「特に雅くん」


地面に転がる数多の死体が心なしかこちらを覗いているように思えた。


「いや…ぐっ」


「君たちは駒以外の何者でもない」


「そ、そんなひでえ事…」


「僕はね、茜がMPAを持っていてなお戦闘の意思があるなら同じように扱うつもりだ」


「…」

妹の話はすでに雅は知っている様子だった。


「あー、ごめんね。でもよくやってくれたね」

「この男たちも一課が追っていた犯罪者たちの一部でさ」


「いやっ」

「なんですかその言い方!いくらなんでも酷すぎ…


《ゴバァァァン!》


3階の駐車場辺りから轟音が響いた。


「うおっ!!うるせえ!」


「ごめん!君たちはここで待機しててね」

『…どうやら、全てを話すにはまだ早いようだね』


ボソッと何かを言い残して、刀を片手に哉太が青く滲んだ残像を残して広場を駆け出していく。

その頃、モールの反対、道路側に2人の影が現れる。


「だーかーら!もう金出せないんだと何度言えば」

「もう今月は俺も瀕死なの」


「お願いしますよ〜そこをなんとか!」

「ケチ!萩田さんケチ!」


「は??おかしいだろこれ!10対0でそっちがおかしい」

「よくわかんないけど黒いの買ったじゃん!」

「なんでわざわざ別の店まで歩かせるんだよ?!」


「トップスとボトムスは別ブランドで揃えたいんですよ!!」


「意味わからん」


その2人の正体は言わずもがな、翔太の警備を任されていた萩田達であった。

その頃、翔駒はたった先程まで明るかった空が暗闇に呑まれたことを悟った。

モールの街灯に灯りがつき始める。


「何してんだあの人たち…」


「役に立ってねえよな?」


「お前ら…あまり言うなよ」


雅が言い合いをする2人の方を見つめながら呟いた。


「なにが?」


「あの人…萩田さんは公安トップクラスの実力派だ」



一方その頃 駐車場にて


「ッ!!!!」


「お目覚めかよ坊やァアあ」


気絶していた正井の目が見開かれた。


「ぐうぁあっ!!逃げろ優希!」


「…!」


触手の中でもがいていた正井が突如分身を再発動して圭を襲わせる。


「もう学習済みだよぉお!!!」


触手によって一薙ぎで分身体は吹き飛んでいく。

何本もの触手を同時に操るが、数本操りきれずにコンクリートの柱に打ち付けられた。


(あいつのショクシュ、タコの足みてえに脳みそがひとつひとつに入ってんのか?)

(じゃねえとこんな正確に操れることの説明がつかねえ)


「小賢しいんだよ最近のクソガキはぁあ!!」


(未詠唱で出した分身は俺程度の力量すら出せない…)

(ならせめて)


圭は石を投げてきた優希がいたはずの自動ドアの方向に顔を向ける。

しかし、そこにいたのは優希の姿を模した半透明の分身体だけだった。


「あ"?」


「ケッ、ゲームでも人生でもなんでも、大切なのは立ち回りだよ」


男の意識外から優希が現れて、ハンガーの先で後頭部に致命的な一撃を入れる。


「グギガァ!!」


「はぁ、はぁ、」


仕留めたと安堵する優希の足元を触手が縛る。


「うあっ?!」


「優希ィ!!!」


「このクソガキが…このあとも殺す予定があるんだよ」

「手っ取り早く死んでくれ!!」


少し湿り気を帯びた太い黒色の触手に全身を拘束されて、意識が遠のいていく。


「ガ、ガ」



【おい】


四角い、肉の壁でできた羊水に満ちた4LDKの部屋。

明日に全身を赤と黒の服で染めた蝿のような仮面の男が両手を組んで俯いている。


立ち上がりベルトに手をかけて、ゆっくりと扉に向かう。

ガチャリとドアノブを開くと、真っ暗な廊下が広がっていた。

《処置室》と看板のある部屋や、その奥から無数の呻き声が聞こえてくる。


羊水が部屋から流れ出し、やがて足首を埋める水位まで下がった。


やがて『非常口』と書かれた鉄の扉に辿り着くと、躊躇なく開けて眩しい光の中を進んでいった。




「おはよう」


「?!?」


優希が首を180度回転させて圭の方を向いた。


「あ、ァアお前もMPA持ちか兄貴に殺すように言われてるんだだから殺


触手に爪を突き立てて、肉を抉ってみせた。


「あぎゃ、あぎゃぁあぁあ?!」


「???」


血塗れのパーカーで身を包んでいる正井。文字通り言葉を失っている。


《ドゴッ!》


優希は無言で左足を軸にして右足で圭を蹴り飛ばす。

圭は風を切る音と共に吹き飛んでいった。


地面に思いっきり落下し、全身の当たる箇所に痛みを覚える。


「い"た、痛い」

「!!」

「あ、ぁあ兄貴!!来たぞ!化け物来た、秋元さん、ぁあ」


圭が両脇にある街頭にしがみつきながら、必死に逃げようと血痕を残しながら体を引きずる。


『ねぇ、何あれ』

『映画の撮影じゃない?』


再度触手を発現させ、店の中にいる一般人に向かってしならせる。


「キャーーーーー!!!」


ガラスの破片が舞った。


「うるさい、うるさい、うるさぁあい!!」

「ヒッ!!」


圭は追跡してくる優希の存在に気が付き戦慄した顔になる。

振り向きざまに2本の触手で対抗しようとするも、両手で塞がれてそのままもがれてしまった。


「痛いいい!!ビキイイイイ」

「ガァ"っ」


いつの間に距離を詰めていた勇気が、圭の頭を鷲掴みにしてぐしゃぐしゃと首の骨を折る。

全身がひしゃげて、跪いた圭の亡骸がそのまま地面に転がり落ちた。


「…」


優希は自身の手についた血液を圭の着ていたスーツで拭う。

その時、優希の前方、レンガの床の上に1人の男が立っているのが見えた。

街頭の黄色い光を反射して、服が光り輝くがそれとは対照的に目の奥には冷徹な感情が見え隠れしていた。


「先に聞いておくよ。君は敵か?」


哉太が問うと、優希ならざる者は頭を少し掻いたのち自身の手を見ながら呟いた。


「俺は…何だ?」



その頃広場にて


「うぇ?!」

「そんなことで俺ら放っておいてたってマジ…?」


「萩田さん…はぁ」


「いよいよ本格的にヤバい人だな…」


天童は萩田を非難し、雅も軽蔑の眼差しを向ける。


「は???いや、俺だけの責任じゃないでしょ!俺とコイツでヒフティヒフティだろせめて!」


指をさされて瑠奈は一瞬呆気に取られた表情になったが、すぐさま黒目を見開き言い返す。


「はぁ?!…さっすが先輩責任転嫁が十八番ですね」

「大体!前もカフェでパンケーキ4人分私が奢って文句言ってたの先輩ですよね!同じこと言えないですよ!」

「それで監視対象も見失ったし本当…」


(この人たち前科持ちかよ!)

「てか奢り奢られ論争を任務中に持ち込むなよ…」


五月蝿(うるさ)いな少年!文句言うならもう一度瑠奈に金的させるぞ!」


「なんだよそれひっでえ!」

「手のひらクルクルパーやん!何回転すりゃ気が済むんだよ」


大人気ない口論が繰り広げられている所に、異形の頭の男と瑠奈のバディである木村優奈がやってきた。

背後には多数の救急車やパトカーが停車しており、けたたましいサイレン音が鼓膜を打つ。


「おぉ多田君じゃないか!」

「これで多数決ならこっちが有利だ」


「何を、こっちには優奈ちゃんがいますよ!」


「未だ勢力は拮抗したままか…」


「しょうもね…翔駒、ケガとかねえ?」


「あ、あぁ」

「俺は大丈夫だけど…」


「…一旦考え直そうぜ」


「うん」


哉太の心ない言葉や、天童達の苛烈な戦闘を目の当たりにして翔駒の決意は揺らいでいた。


「俺も一旦は普通に学生やるわ」


なにより、異能があるのに使えない自分が足枷になっていると思っていた天童も哉太の提案から降りたということが、翔駒にとっては決定打となっていた。

ある種の嫉妬であったのだろうか。


「ようしお前ら、俺達が家まで送ってやる」


異形の頭を持つ多田が無機質な声で2人の会話に割って入ってくる。


「何で偉そうなんですか…」


「瑠奈ちゃんも言えないだろ?」


「なっ、ちゃん付け…」


「須磨くん、現場監督は任せた」


「はい!」


警察官と思われる男性は、無機質な声をその聞くと敬礼して声を張り上げて返事をしてみせた。

公安というのはそんなに偉いのか。


その後、公安の大人達の痴話喧嘩に巻き込まれながらも、送迎バスを利用して無事に翔駒達は自分たちの家に着くことができた。


「はー辛かった、今日からこれがルーティンかよ」

萩田が体を伸ばして不服そうに吐き捨てた。


(天童の家…日本庭園みたいなのもあったな)


天童と雅に続いて、最後に家に送られた翔駒は送迎バスでの2人との会話を思い出した。



「お前らって兄弟おるん?」


「兄弟?」


天童からの突然の疑問に一瞬固まる。


「俺はいる」


足を組み、運転席の方を見つめながら雅が答えた。


「マジ?ちなみににいちゃん?弟?」


「兄者が1人、姉者が3人だ」


「あ、あにじゃ、あねじゃ…?」


雅は何か思い詰めたように手を組んで地面を向く。


「少し自分語りしてもいいか?」


「語っていいとも」



俺の実家はペンキ屋で、葬儀屋も兼ねていた。

俺が産まれた時にはすでに3歳、6歳、8歳の姉と14歳の兄がいた。

それ以外の家族は父、母、遠い親戚の人たち…みんな大人で、その内のほとんどが老人だった。


俺の親父は昔よく海外に出張して仕事をしていて、汚い仕事で沢山金を稼いでいたみたいだ。

今じゃほぼ売り払ってて想像できないけど、100坪以上の土地があったらしい。

親父は凄く厳格な人だったと聞いている。いつも、お母さんが親父のことを支えようとしていたけど冷たく返されてばかりだったみたいだ。

兄貴からは、お母さんは凄い強い人だったってよく聞かされてきた。


親父はある仕事を境に、足に銃創を負って仕事できない体になってしまった。

その仕事先からインド人の女性を連れてきたみたいだ。

どういう経緯で知り合ったのかは知らないけれど、そいつに親父はずっとゾッコンだった。


まもなくお母さんが死ぬと、俺が産まれた。

俺が幼少期の頃からすでに家は潰れかけていて、兄貴はいつもピリピリしてた。

妹達の世話を1人でこなして、依頼された仕事をこなして…

親父は歳のせいか、痴呆が進んで会話もままならなくなっていった。

なんでもそのインド人の女はジャイナ教徒?で、いつも親父に変なことを吹き込んでた。


ある日、俺が小学校から帰ると家が燃えてた。

あのインド人の女は酷い状態で死んでて、家の周りを見てみたら消防隊がうちを囲んでせっせと消化活動していた。

俺はふと思い出して咄嗟にみんなを探した。いたのは次女だけで、残り2人の姉妹と兄は失踪していた。

沢嶋家に代々伝わる黄金でできた木魚の部屋『精神統一の間』にいる坊主らも撫で切りにされていた。


兄はよくあの女は財産目当てだとか言ってたけど、最初は俺はあの女の仕業だと思ってた。

でも違かった


兄貴はいつも優しかった。優しい親戚のおじさんが風呂で溺死して、葬儀をした時も俺を慰めてくれた。

俺は泣ける人間じゃないけど、お前は精一杯泣いていいんだって。

でも、家が燃えたあの日現場に残った刀に指紋等のDNA鑑定をした結果、兄のものが見つかったんだ。



翔駒はあの話が頭にこびりついて離れなかった。

あまりにもシリアスな内容に天童もドン引きしていたのを思い出す。


俺はやっぱり雅のことを何も知らない。


鍵を開け、ドアノブに手をかけた。

ふと、スマホの振動を感じ、通知を確認してみる。


『僕は明日から札幌に出張するよ。もし不在の時何かあったら、萩田君達を頼ってね。byアジサイ』


(あの人、電話番号のみならず俺のメアドまで…)

(というか駐車場のやばい音は大丈夫だったのか?)


そのことをメールで聞こうか頭の中で検討したものの、野暮だと思い踏みとどまった。



「おかえり、翔駒」

「今日も遅いなぁ、明日の宿泊研修遅れないよう早めに寝なさいよ」


「うん」


「姉ちゃん怒るぞ!」


チューブの中を覗き込み、絞り出た歯磨き粉を歯ブラシに擦り付ける。


(そういや、本当なら今日宿泊研修に使うもの買うべきだったな…)

(まぁあんな事件起きたんだからしょうがないよな。)


そう自分に言い聞かせ、スーツケースの中に衣服を詰め込んでいく。

基本動作を繰り返すうちに、明日からのことが少しワクワクしてきた。宿泊研修、林の中でやるんだっけな?


「姉ちゃんも手伝おうか?」


ラフな格好の姉が部屋に入ってきた。


「うおっ!勝手に開けるなよ…」

(今日姉ちゃんいんのかよ…)


「フフッ」

「別に見られて困るようなものないでしょ?」


「いや、そういう問題じゃ…」


「ふーん」


「〜、〜…」

『…』




【起きてくれ】

【翔駒くん】


「?!」


ガバッと布団を脱いだ。

目の前にいたのは見覚えがあるようでないような男。


「久しぶり」

「僕の異能の効果が薄れてきたようだ」


「…?あれ…どこかで…?」


「忘れちゃった?」

「しょうがないよね…僕DAが足りなさすぎるもん」

「もう少し継続してくれたらな。」


「な、なんで俺の部屋に…?」

「てかなんの話?誰?」


「全く、デジャヴだよ」

「大野先生の仇、とってあげてくれよな。翔駒くん」

「あと、家族は大切にね。あ、茜のこともよろしく頼…」


「へ?」



寝坊した。


(にしても変な夢だったな…)

(ていうか、夢の中にいた俺と同じくらいの歳の男…どこかで見たような)

(まぁいっか)


俺は急ピッチで支度して家を飛び出し、森閑学園に辿り着いた。



「遅いですよ」


小田が校門で待ち構えていた。


「やい遅刻魔ショーマ」


校庭で体育座りをして並んでいる生徒たちに紛れて、緑川と山岡たちが囃し立ててきた。


『うるせぇな…ったく』


「あー、みなさん!今日は待ちに待った宿泊研修の日ですね」

「この日があるのも保護者の皆さんやそして…


宮河校長先生がマイクを手に取り、長ったらしい話を始める。

翔駒が辺りを見回すと、なぜがガクガクと震える優希が目に入った。

どうしたんだろうか。

他クラスの正井…異能登録の時にいた男と酷似している正井も、同様に何かを恐れているような雰囲気で周囲に目配せしている。

もう少し気の強いやつだと思っていたばかりに、彼の怯えている姿を見るのは新鮮だ。あまり親睦はないが、今度話してみようか。

そう考えているうちに意外と早く校長の話は終了した。

そうだ。先輩の七瀬と連絡先を交換しよう。宿泊研修のためにUNOやカードゲームも持ってきたんだ。優希も喜ぶだろう。

楽しくなるぞ。


翔駒たち1年2組は2号車のバスに乗り込む。

途中、バスのアナウンスの女性が転けそうになった茜を助ける。

心なしか、その時に見えた茜の顔が泣きそうなふうに見えた。


「翔駒、バスの座席ってそういやいつ決めたんだ…?」


雅が話しかけてきた。そういやいつ決めたのか。今まで一回も休んでいないが、学校の総合的な学習の時間でもそういうのはなかったはずだ。


「あ、ごめ〜ん。」

「ウチらが先公に問い合わせて、勝手に座席決めちゃいました〜」


「把握よろ」


『は?』


天童が目を細め、眉を顰めて意味不明といった表情を浮かべた。

翔駒はすぐに自分の席の隣を確認する。


(戸部…綾乃の隣)


まぁ、着くまでの辛抱だ。どうせそんなにかからない。

ふと窓を覗くと、七瀬先輩が腰に手を当ててニコッとこちらを見ながら笑っていた。

どうやら新入生の部員ひとりひとりと窓越しに顔を合わせてるようだ。


『おーい!』


後ろの席にいた天童と手を振る。

前は確かに色々あったが、なんやかんややりやすそうな人だ。

声は聞こえてないだろうが、手を振りかえしてくれた。


「へへっ」


バスが発車する。


「じゃあ何かビデオでも見ますか…それとも、レク係がやりたいと言っていたカラオケ大会でもやりますか?」


「うおー!するする!」


「静粛に!!!運転手さんの邪魔にならない範疇で完結させてくださいね。これは絶対条件です」


小田はメガネをクイッと上げてそう言った。

バスは川にかかる橋を渡り、速度を上げ始める。


「風呂楽しみだなー!」


「赤坂!風呂上がり牛乳飲めるってよ」


「あ、自分牛乳無理なんで」




その頃七瀬は校内の更衣室にいた。


「ナナー!授業始まるまでには戻っとけよん」


扉越しに3年生、七瀬の同級生のおちゃらけた声が聞こえる。

七瀬はスマホを取り出して、ビデオを観始める。


『ズバリ、大野先生のドリブルの秘訣はなんですか!!』


『そうですねぇ…まぁアウトサイドキックで相手を出し抜く事を意識すると、初見では非常に有効です。』

『しかし、やっぱり日頃からの練習が最もの要因ですかねぇ…』


『成程…!精進していきます!』

『先生、動画だからといってそんなにかしこまらなくてもいいですよ!!』

『いつもの調子でお願いします!!あ、ここはカットね1年』


そのビデオには、2年生の頃の七瀬と今は故人となった去年の大野先生が映り込んでいた。

どうやら練習の合間に大野先生にインタビューしているらしい。部員たちが忙しなく交代してシュート練習している風景が後ろに映っている。



ビデオを観終えた七瀬の筋肉が隆起し、内に秘めたる怒りが爆発する。


「先生…やっと見つかりましたよ」

「小児性愛症の男…先生が証言したんですよね」

「あなたは最期まで正義の人でした。どうか安らかに眠ってください」


独り言を静かに、震えた声で呟いた。

それは普段の様子と比べれば異様なのは一目瞭然であった。


「自身の息子までも手にかけたという…」

「この自分が必ず先生の遺志を継ぎます」


楽しい宿泊研修の裏で、不穏な過去の事件と教員の自死の真相が邂逅しようとしていた。

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