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第7話 比較と沈黙
噂は、音を立てずに広がる。
誰が言い出したのかは、分からない。
気づいたら、皆が知っている。
午後の教室。
席が少ない。
戻ってきた生徒たちが、低い声で話す。
「やっぱ、午後組ってさ……」
続きは、言わない。
言わなくても、通じる。
魔法石の色。
授業に出ていない時間。
雑務。
断定はない。
だが、印象は残る。
廊下を歩くと、視線が触れる。
長くは見られない。
確認するだけ。
「あの人も、午後だよね」
声は小さい。
俺は振り向かない。
図書室の前で、一度立ち止まる。
今日は入らない。
理由はない。
今じゃない、という感覚だけだ。
部屋に戻り、ノートを開く。
噂。
比較。
沈黙。
黒い紙は、何も返さない。
噂は、事実より先に走る。
それだけを書き足した。




