修正 7
学園に着いて最初に通されたのは、広間だった。
式場ではない。
整列も、名前を呼ばれることもない。
机の上に、制服が並んでいる。
「順番に受け取れ」
教師が短く告げる。
濃紺に近い黒のジャケット。
立ち襟で、動きやすい作り。
シャツとスラックス。
縁取りは赤。
一年生の色だ。
全員同じ。
違いは、まだない。
着替えを済ませ、再び集まる。
胸元は、空いている。
そのまま式場へ向かう。
高い天井。
並べられた椅子。
前方に、校長と数名の教師が立っていた。
「これより、入学式を始める」
校長の声は落ち着いている。
「イースト中央魔法学園へ、ようこそ」
「ここでは、力を学び、扱い、記録する」
説明は短い。
理念は語られない。
「続いて、学園章の授与を行う」
机の上に、章が並べられる。
中央に嵌め込まれた、小さな魔法石。
色は、まだない。
名前が呼ばれる。
一人ずつ前に出て、章を受け取る。
手渡される直前、
教師が石を見る。
淡く色づく者。
はっきりと染まる者。
何も言われない。
反応もない。
ただ、渡される。
「エリオ・フェルナード」
前に出る。
章が差し出される。
教師の視線が、石に落ちる。
――変わらない。
一瞬だけ、間が空く。
教師は俺の顔を見る。
次に、名簿を見る。
確認するように、指でなぞる。
「……次」
それだけだった。
章は、そのまま渡された。
石は、無色のまま。
理由も、説明もない。
胸元に留める。
赤い縁取りの制服に、透明な石。
それが、俺に与えられたものだった。
席に戻る。
周囲の反応はない。
誰も、何も言わない。
そういう場なのだと、受け取る。
役割が告げられる。
「エリオ・フェルナード。記録補助」
「はい」
拒否も、質問も必要なかった。
式は、それで終わった。
解散の合図が出る。
「エリオ」
ミレイアが声をかけてくる。
「章、付けたんだね」
「ああ」
彼女の石は、薄く色づいている。
「変な感じしない?」
始まった、と言われる気がした。
けれど。
「まだ、よく分からない」
「そっか」
ミレイアは笑う。
「まあ、これからだよね」
今日は、章を渡された。
役割を与えられた。
それだけだ。
俺は、それを記す。
事実だけを。




