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支配と理解  作者: 御中御庭より


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5/34

修正 5

それは、通告だった。


 相談でも、選択でもない。

 理由の説明も、拒否の余地もない。


 村の中央に人が集められ、

 大人たちは揃って同じ言葉を繰り返した。


 ――学園への入学が決まった。


 年齢。

 条件。

 対象者。


 淡々と読み上げられるそれは、決定事項でしかなかった。


 ざわめきが広がる。

 喜ぶ声、不安な声、誇らしげな視線。


 誰も、「行かない」という前提では考えていない。


 俺も、同じだった。


 拒めないと、最初から分かっていた。

 だから驚きはない。


 ただ、胸の奥で、何かが静かに動いた。


 その夜、俺はノートを開いた。


 右のページに、事実を書く。

 学園。

 強制。

 説明なし。


 そして、左の黒いページに、ペンを当てる。


 ――怖い。


 書けない。


 ――おかしい。


 書けない。


 ――選ばれていないのに、選ばれる。


 それでも、文字は残らない。


 分かっている。

 俺はまだ、「それ」を言葉にできる位置にいない。


 ミレイアは、楽しそうだった。


「一緒に行けるんだよね?」


 疑いのない声。

 未来を信じている目。


 俺は、頷いた。


「うん」


 それ以上は、言えなかった。


 何を言えばいいかは、分かっている。

 どう言えばいいかも、分かっている。


 それでも、言葉は出ない。


 夜更け、ノートを閉じる前に、もう一度だけ黒いページを見る。


 何も書かれていない。

それなのに、確かにそこには「空白」がある。


空白は、嘘じゃない。

まだ触れられないだけの、事実だ。


俺は、この場所を離れる。

望んだからでも、拒めなかったからでもない。


ただ、呼ばれたからだ。


静かな幼少期は、ここで終わる。

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