修正 5
それは、通告だった。
相談でも、選択でもない。
理由の説明も、拒否の余地もない。
村の中央に人が集められ、
大人たちは揃って同じ言葉を繰り返した。
――学園への入学が決まった。
年齢。
条件。
対象者。
淡々と読み上げられるそれは、決定事項でしかなかった。
ざわめきが広がる。
喜ぶ声、不安な声、誇らしげな視線。
誰も、「行かない」という前提では考えていない。
俺も、同じだった。
拒めないと、最初から分かっていた。
だから驚きはない。
ただ、胸の奥で、何かが静かに動いた。
その夜、俺はノートを開いた。
右のページに、事実を書く。
学園。
強制。
説明なし。
そして、左の黒いページに、ペンを当てる。
――怖い。
書けない。
――おかしい。
書けない。
――選ばれていないのに、選ばれる。
それでも、文字は残らない。
分かっている。
俺はまだ、「それ」を言葉にできる位置にいない。
ミレイアは、楽しそうだった。
「一緒に行けるんだよね?」
疑いのない声。
未来を信じている目。
俺は、頷いた。
「うん」
それ以上は、言えなかった。
何を言えばいいかは、分かっている。
どう言えばいいかも、分かっている。
それでも、言葉は出ない。
夜更け、ノートを閉じる前に、もう一度だけ黒いページを見る。
何も書かれていない。
それなのに、確かにそこには「空白」がある。
空白は、嘘じゃない。
まだ触れられないだけの、事実だ。
俺は、この場所を離れる。
望んだからでも、拒めなかったからでもない。
ただ、呼ばれたからだ。
静かな幼少期は、ここで終わる。




