修正 4
また別の日。
ミレイアと外に出た。
少し騒がしい声が聞こえて、足を止める。
大人が子供を詰めていた。
理由は些細だった。
物を壊した。
疑われた。
証拠はない。
子供は俯いたまま、何も言わない。
「ちょっと」
考えるより先に、ミレイアが前に出た。
「それ、あんたが決めてるだけでしょ」
言い切りだった。
確認も、様子見もない。
大人は一瞬だけ彼女を見て、眉をひそめた。
「子供は口を出すな」
「は? 今まさに――」
「大人の話だ」
被せるように言われて、ミレイアの言葉は途中で切れた。
それでも引かなかった。
「証拠もないのに、決めつけるのおかしくない?」
声が少し大きくなる。
大人はため息をつき、面倒そうに首を振った。
「黙りなさい」
それで終わりだった。
立場の差だけが残る。
言葉は届かない。
俺は前に出なかった。
整理できる情報は少ない。
確認できる事実もない。
ここで割って入っても、状況は変わらない。
やがて、大人は子供の腕を掴み、連れて行った。
抵抗はなかった。
泣き声もなかった。
ただ、目を伏せたまま歩いていく。
「……最悪」
ミレイアが吐き捨てる。
「なんで、あんな言い方するんだよ」
俺は答えなかった。
「言わなきゃ、何も変わらないじゃん」
「言っても、変わらないこともある」
「でも――」
言い返そうとして、ミレイアは言葉を切った。
歯を食いしばっている。
少しして、ぽつりと呟いた。
「あの子、しばらく外に出られなくなる」
「分かるのか?」
「顔見れば分かる。
ああいう時、大人は“しつけ”って言葉を使う」
何も言えなかった。
結果として、
俺が何もしなかったことで、
あの子は確実に不利益を受けた。
その夜、ノートを開いた。
今日の出来事を書く。
大人の言葉。
子供の沈黙。
ミレイアの声。
俺の判断は書かない。
ただ、事実だけを並べる。
――介入は行われなかった。
――結果として、処罰が与えられた。
ページを閉じて、思った。
黙ることは、安全だ。
だが、無関係ではいられない。




