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第33話 図書室にて
-ユイ視点-
図書室は、今日も静かだった。
窓から差し込む光は柔らかく、
埃の匂いがわずかに漂っている。
人の気配はない。
それでも、ここは学園の中だ。
完全に切り離された場所ではない。
私は書架の間に立ち、数冊の本を机に積んだ。
謹慎という言葉が頭をよぎる。
でも、だからここにいるわけじゃない。
誰にも見られず、
誰にも邪魔されない。
今は、それだけで十分だった。
頁をめくる。
血族、魔法式、女神信仰。
どれも答えにはならない。
けれど、断片だけは残っている。
学園は、守ってはくれなかった。
説明もしなかった。
ただ、処理しただけ。
それでも――
終わったとは思えない。
私は手を止め、視線を落とした。
黒い紙。
あのとき、確かに見た。
帳面の頁に、文字が浮かび上がった瞬間。
見間違いじゃない。
魔法とも、少し違っていた。
あれは、記録されるべき何かに反応していた。
偶然じゃない。
そう、分かっている。
――確かめなければ。
学園を去る前に。
ここが、本当に居場所じゃなくなる前に。
私は本を閉じ、静かに息を整えた。
今すぐ動くつもりはない。
でも、立ち止まる気もなかった。
まだ、やることがある。
だから、ここにいる。




