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支配と理解  作者: 御中御庭より
0章 幼少期編

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第2話 日常と記録

目を覚ましたとき、俺は泣いていなかったらしい。

あとから母にそう聞かされた。


理由は分からない。

赤ん坊だったはずなのに、泣かなかったらしい。


成長は早かった。

言葉も、歩くのも、周囲が思っているより少しだけ。

それを不自然だと思われない程度に、俺は調整していた。


五歳を過ぎた頃。

自分の部屋の隅で、妙なものを見つけた。


分厚いノートだった。


装丁は地味で、文字も書かれていない。

だが、紙の量だけが異様だった。

子供の持ち物とは思えないほど、重い。


左開きのノートだった。


ページを開くと、

右側は普通の白い紙。

左側は、黒い紙だった。


どのページも同じ構造だ。

偶然ではない。

最初から、そう作られている。


文字を書くためのものには見えなかった。

俺は無意識に、黒い方を避けるようにページをめくった。


いつからそこにあったのかは分からない。

誰に聞いても、知らないと言われた。


俺はノートを閉じた。

捨ててはいけない。

理由は分からないが、そう思った。


その日も、町の集会所へ向かった。

ミレイアが、先に来ていた。


「遅い」


開口一番、それだった。


「別に約束してないだろ」


「でも遅い」


理屈は通じない。

いつも通りだ。


集会所の前で、子供同士が揉めていた。


一人が菓子を持っている。

もう一人が、それを奪い返そうとしている。


「俺が買ったんだ!」

「金取っただろ!」


声だけが先にぶつかる。


ミレイアが、迷いなく間に入った。


「ちょっと!」


子供たちが振り向く。


「人の物取るとか最低じゃない?」


子供の一人が言い返す。


「だって――」


「だってじゃない!」


平手が飛んだ。


乾いた音がして、子供は尻もちをついた。

周囲が、一瞬で静まる。


俺は、何も言わなかった。


大人が駆け寄り、事態は収まった。

その場では、それで終わったように見えた。


あとから聞いた話だ。


菓子を買ったのは、確かに子供1だった。

だが、金は子供2のものだった。


勝手に使われ、

勝手に責められ、

勝手に叩かれた。


それ以来、子供2を見かけなくなった。


どこへ行ったのかは、誰も知らない。


家に戻り、俺はノートを開いた。


右の白いページに、事実を書く。


子供。

菓子。

平手打ち。

その後、姿を見なくなった。


評価は書かない。

感想も書かない。


ただ、起きたことだけを並べた。


ページを閉じて、思う。


――これは、使える。


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