第26話 歪んだ日常
あの件の後、下級生は数日間の謹慎処分となった。
それ以上の話は、広がらなかった。
処罰は淡々と下され、学園は静かに日常へ戻っていく。
授業は進み、廊下には人が戻る。
笑い声も、雑談も、元通りだ。
それでも――
何かが、少しだけ違っていた。
巡回の教師が増えた。
立ち話は減り、視線は早く逸らされる。
誰も何も言わない。
けれど、皆が同じ場所を避けているのが分かる。
____
昼休み、図書室の一角。
「最近さ」
ユイが、何でもない調子で声をかけてきた。
「この学園、静かすぎない?」
返答に困り、少し考える。
「……戻っただけじゃないか?」
事件は終わった。
処分も下った。
それでも、この学園で何か起こったのだろう、
という感覚だけが消えない。
ユイは肩をすくめる。
「そう見えるなら、そうなのかもね」
それ以上は、何も言わない。
視線だけが、窓の外へ向いた。
ふと、背中に感覚が走る。
見られている。
はっきりと、そう分かる。
気配のある方向へ視線を向けると、
そこには誰もいなかった。
ただ、
空気だけが、張りついている。
ユイが、同じ方向を一瞬だけ見る。
そして、何事もなかったように視線を戻した。
「……行こ」
その一言で、会話は終わった。
帳面を開く。
短く、事実だけを書く。
学園は平常。
しかし、違和感が残る。
閉じたとき、
日常は、もう元の形ではないと知った。




