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支配と理解  作者: 御中御庭より
1章 学園編

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第13話 噂と日常

昼休みの中庭は、いつも通りだった。


昼の光。

行き交う生徒の声。

食堂から持ち出されたパンの匂い。


一見すれば、何事も起きていない。


ただ、話題だけが、どこか似通っている。


「ねえ、聞いた?」

「いや、だから違うって」

「でもさ……」


言葉は小さく、途中で切れる。

誰も、最後まで言わない。


それでも、

皆が同じ方向を避けているのは分かった。


俺はベンチに腰掛け、

中庭を眺めていた。


視線は自然に散る。

長く留まる場所が、なくなっている。


そこへ、肩口から声がした。


「ね、エリオ」


振り向くと、ミレイアが立っていた。

いつも通りの距離。

いつも通りの笑顔。


「噂、聞いた?」


「……少し」


「やっぱり?」


ミレイアは、わざとらしく肩をすくめる。


「夜の屋上にね、おばけが出るんだって」

「ヒュー……ドロドロ〜、って」


両手を上げて、揺らす。


軽い。

冗談めいている。


けれど、その目線は一度だけ、

中庭の奥を確かめていた。


恐らく、血の件だ。

そう思ったが、口には出さない。


事実は、もう別の形になっている。


ミレイアは笑っている。

明るくて、変わらない。


――少なくとも、そう見える。


周囲を見渡す。


表情は穏やかだ。

けれど、立ち話は短い。

笑い声は、すぐに引っ込む。


皆、どこかで線を引いている。


「……一応、書いておこうかな」


俺がそう言うと、

ミレイアは首を傾げた。


「真面目だね」


「仕事だから」


冗談めかして返す。


人目のない場所へ移動し、

鞄から帳面を取り出す。


白いページを開く。


・噂がある

・内容は定まっていない

・誰も説明しない


それだけを書く。


評価も、感想も、付けない。


帳面を閉じると、

中庭の喧騒が、また耳に戻ってきた。


日常は、続いている。


ただ、

何もなかった顔をするのが、

少しだけ上手くなっただけだ。


俺は立ち上がり、

ミレイアと並んで歩き出す。


学園は、整っている。

秩序も、規則も、機能している。


――だからこそ。


その静けさが、

俺にはひどく不自然に思えた。

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