第12話 処理と秩序
― 学園側の処理 ―
緊急会議が開かれた。
集まっているのは、学年担当の教師と数名の管理職。
顔ぶれに欠けはない。
欠けているのは、温度だけだった。
議題は一つ。
数日前、学園内で起きた出来事について。
詳細は整理されていない。
だが、共通点だけは揃っている。
通路。
生徒。
負傷の痕跡。
「血痕は確認されています」
報告役の教師が、淡々と告げる。
「すでに処理済みです」
処理、という言葉が使われた。
清掃の話なのか、出来事そのものなのか。
誰も確認しない。
「色については?」
別の教師が尋ねる。
「血液である、という認識のみです」
「特異な反応は確認されていません」
曖昧な答えだった。
だが、それで十分だという空気があった。
「当事者の特定は?」
「できていません」
噂は出回っている。
だが、噂は資料にならない。
この学園は、型を重んじる。
感情で裁けば、規律が崩れる。
前例のない事態ほど、
前例に沿って扱わなければならない。
「学園内で完結させるのは危険だ」
誰かがそう言った。
反論は出なかった。
「教頭に報告します」
それが、結論だった。
事実のみを書面にまとめる。
推測は削る。
断定もしない。
危険、とは書かない。
だが、安全とも書かない。
「学園規律のみでの対応は困難」
その一文が、最後に添えられた。
教頭は書面に目を通し、宛先を確認する。
王都。
形式に従い、封が閉じられる。
特別な手続きではない。
いつも通りの流れだ。
誰も、何かを壊したつもりはなかった。
ただ、
いつも通りの手続きを行い、
いつもより重い報告を上げただけだった。




