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第3話:聖女が王国を支配する





 ヒカリ・ノダが現れてから、王国は明らかに変わり始めた。


 聖女としての立場を与えられた彼女は、王国中の注目を集め、貴族たちはこぞって彼女に近づこうとした。

 ヴァルヒーヌ王子もまた、彼女を守るべき存在として、以前にも増して彼女を気にかけるようになった。


 ——いや、“気にかける”なんて生易しいものではない。


 王国全体が、ヒカリに魅了されていた。


 「聖女様は、我らが国に光をもたらしてくださる」


 「聖女様の力があれば、この国は繁栄するに違いない!」


 「やはり王子様と聖女様はお似合いですわ……」


 貴族たちのそんな言葉を聞くたびに、エレシアは静かに微笑んだ。

 まるで何も感じていないかのように。


 しかし、胸の奥では、冷たい何かがじわじわと広がっていた。


 ——王国は、彼女を選んだ。


 彼女ではなく、聖女を。

 ヴァルヒーヌ王子もまた、エレシアではなく、ヒカリを。


 「……エレシア様」


 その日の夜、王宮の広い廊下を歩いていたエレシアに、優しい声がかけられた。

 振り向くと、ヴァルがいた。


「遅くまで何をしていたの?」


「少し、考え事をしていたの」


「……そうか」


 ヴァルはどこか言いにくそうに視線を落とした後、意を決したように口を開いた。


「エレシア、君に頼みがある」


「何かしら?」


「……ヒカリを、支えてやってほしい」


 その瞬間、エレシアの時間が止まった。


「……え?」


「君ならできるだろう? 君は王女で、聡明で、ずっと国を支えてきた。だから、聖女であるヒカリのことも、導いてやってほしい」


 ヴァルの瞳には、純粋な期待が宿っていた。

 まるで、それが当然のことのように。


 王子は、エレシアに”聖女を支えろ”と言った。


「……わかったわ」


 エレシアは微笑みながら答えた。

 何も感じていないかのように、何も傷ついていないかのように。


 でも、その瞬間、エレシアの心は完全に壊れたのだった。








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