表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼のいる町  作者: 浅草なぎ
1/1

さよならを言うために

少し前におばあちゃんが死んだ。


大好きだったおばあちゃん。

今日も仏壇に手を合わせる

「行ってきます、おばあちゃん」

そう、花園まやかは呟いた


中学一年の頃、学校から帰ってきたとき

鍵を開けると、玄関から台所につながる廊下でおばあちゃんは倒れていた


心筋梗塞だった。


私とおばあちゃんは二人暮らしでいつも家事などを分担して日々を過ごしてきた

この家で

知らない叔父さんと、叔母さんの手を借りて葬儀はつつましやかに執り行われていった


笑っているおばぁちゃん

動かないおばぁちゃん


心臓に悪そうなお線香の匂い、私は不慣れな手つきでお焼香をおこない

誰もいない家で過ごしたあの夜

そんな夜からは程遠く今は桜の季節になった


家の電気を消していつも通りの静寂の家になる


学校へ登校するときいつも徒歩で行く

見上げれば、この時期特有のパステルっぽい青空が目に優しく

ふと、鼻をくすぐる桜の香りがして(ああ、春だな)とほんのり嬉しくなった


学校が終われば辺りは少し赤がかり物悲しくなる

おばあちゃんは、桜餅が好きで特に道明寺の方がお気に入りだった

「買って帰ろうかな」

そう思いながらスーパーの桜餅(道明寺)を買って帰る


夕方、おばあちゃんはこの時間を逢魔が時と呼ぶ

私はそういう話はあまり信じられないでいる

魔物になんて逢ったことがない


でもおばあちゃんはいつも

「逢魔が時に出歩いたらいかんよ、鬼が出るけぇね」と言っていた

五歳の私は無邪気に問う

「鬼って?あの泣いちゃうの」

「んにゃ、赤い方だよ。優しい嘘じゃない、本物の」

「へぇー」

その時の祖母は、今思えば険しい顔をしていた


、、本物の鬼

おばあちゃんは会ったことがあるのか

それは聞けなかった

何となく聞いてはいけない気がしたから


懐かしい思い出を淡くかみしめながら

家に帰ると、

電気がついていた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ