表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/53

獣ダンジョン(地下1階)

すみません、やはり仕事が忙しく、時間が取れそうにないです。

しばらくの間、更新が止まりますがご了承下さい!

 リューク王子とリコリスを率い、獣ダンジョンの地下一階を散策する。出てくる魔物は初級ばかりで、ウサギや狼の様な獣系である。


 獣系の魔物は素早さの高い者が多い。その代わり、特殊な魔法やスキルを使う事がない。初見殺しの様な攻撃も無いため、初心者のレベル上げにはもってこいである。


 更には、毛皮や爪、角、尻尾等の部位をドロップする。これは魔力の塊であり、錬金素材として重宝されるものばかりである。つまり、金銭的にも美味しいという事である。


 とはいえ、地下一階は初級冒険者が沢山探索している。素材も多く流通しているので、そこまでの高値で売れる訳ではない。本当に稼ぎたいならLv11以上になって、地下三階の魔物を狩る必要がある。


 そして、今回のガーランド王国訪問の目的は、彼女達全員のLv15を目指す事だ。金銭面はどうでも良く、アトリやアル、リコリスのレベルを、そこまで鍛える事である。


「とはいえ、少々時間が必要かな……?」


 ウサギ型の魔物と戦うリューク王子に視線を向ける。苦戦こそしていないが、一対一で良い勝負という状況である。


 そして、護衛の騎士達はリューク王子を囲み、魔物の不意打ちに備えている。一対一で負ける事は無いだろうが、数が増えると不利になる。その時は彼らの出番という訳だ。


 なお、彼のステータスを見たが、はっきり言えばアルの劣化版と言える。剣と水魔法を使うのだが、『火の加護』を持たない分、全面的にアルより能力が劣っているのだ。


 勿論、アルはチートスキル持ち。彼と比べるのは可哀そうだとわかっている。それでも、能力で劣っている分だけ、それが成長速度にも影響するのも事実である。


「そして、あちらは、と……」


 リコリスに視線を向けると、彼女はリューク王子を見守っていた。ハラハラした表情で、婚約者の勝利を祈っているみたいだった。


 そして、その背後ではメイドさんが後片付けをしている。リコリスが倒した魔物の、ドロップ品を回収しているのである。


 リコリスはLv7の水魔法の使い手で、この階層の魔物は一撃で仕留めてしまう。『ウォーターハンマー』という魔法で、圧殺してしまうのである。


 凄腕暗殺者のメイドさんが居るので、不意打ちを受ける事もない。魔物が現れても、遠距離からの一撃で仕留めるのでダメージもない。


 リコリスにとって地下一階はピクニックも同然。彼女にとっては修行になっていない。王家との約束さえ無ければ、アトリ達と一緒に行かせたのにな……。


「……っと、リューク王子が勝ったか」


 無傷とはいかなかったが、当然ながらリューク王子が勝った。良い装備を身に着けているし、負ける要素の無い相手だったしね。


 そして、剣を鞘に戻し、呼吸を整えるリュート王子。そんな彼の元に、リコリスが駆け寄っていく。


「リュート殿下、お怪我をされていますよ! どうぞ、これを使って下さい!」


 リコリスが差し出したのは、小さな小瓶であった。それは初級ポーションと呼ばれる物で、小さな傷程度ならすぐに治してしまうアイテムである。


 だが、リューク王子はその受け取りを拒否した。険しい表情を浮かべ、リコリスに対して冷たく告げた。


「この程度で騒ぐな。わざわざ、ポーションを使うまでもない」


「す、すみません……。でも、沢山用意してありますので……」


 リューク王子の言う通りである。大した負傷ではないので、このまま継続戦闘でも問題はないだろう。


 ただ、婚約者を心配する、リコリスの気持ちもわかる。ポーションを使うのは勿体ないが、怪我したままでは彼女も気になってしまうだろう。


 ならば、ここはオレの出番だろう。両者が納得する、一番効率的な手段である。


「――ヒール」


「「あ……」」


 リューク王子の傷が瞬時に癒える。オレのヒールはHPを半分まで回復可能。その上、消費魔力も少なく、この程度なら『瞑想』でも行えば瞬時に回復できる。


 リューク王子はバツの悪そうな顔でオレに向き直る。そして、すっと頭を下げて来た。


「申し訳ありません。私が未熟なばかりに……」


「誰もが初めは未熟です。気にする事ではありません」


 頭を上げたリューク王子は、嬉しそうな笑みを浮かべた。こうして見ると、やはり彼は素直なんだよな。オレへの敬意があるらしく、とても丁寧な態度で接してくれる。


 噂で聞く程に悪い青年とは思えない。父親のガーランド王も、リコリスの父であるフローレンスさんも、どうして彼を悪く言うのだろうか?


 恐らく、オレには見せていない一面があるのだろう。それが何かはわからないが、この修行の間は素直なままで居て欲しい。平穏無事に修行を終わらせたいからね。


「――ん……?」


 ふと、刺さる様な視線に気付く。視線の主はメイドさんである。だが、こちらの視線に気付くと、またいつもの無表情に戻ってしまった。


 ……うーん。彼女も良くわからないんだよな。時々、険しい表情となる時がある。だが、それも一瞬のことなので、彼女の考えが読めないのである。


 最悪、『鑑定Lv3』を使う手もある。ただ、プライバシー侵害になるので、不要に乱用したくはない。これは不味いと思ったら、その時に改めて使わせて貰う事にしよう。


「まあ、問題は無いんだ。ゆっくり、気長にやるとするか……」


 目的のLv15まで、どの程度の時間が必要だろう? 一週間だろうか? それとも、一カ月だろうか?


 魔王復活までは、まだ二年もある。時間は有限だが、そこまで差し迫った状況でもない。今は焦らず、安全確実に事を進めるべきだろう。


 オレは自分にそう言い聞かせ、リューク王子達と共に再びダンジョンを進み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ