New Game
※AI画像生成によりイラストを作成しています。
簡単なものでしたら、ご依頼も受けたいと思います。
第一章は一日に四話ずつ更新します。
皆様に楽しんで貰える作品になれば嬉しいです!
<補足コメント>
第1章、第2章はシリアスな場面が多いです。
第3章からギャグテイストも加わって行きます!
オレの名前は早瀬 明。ブラック企業に入社したことで、オレの人生は色々と詰んでしまった。
毎日帰れず泊まり込みは当たり前。休日が貰えることは稀。新人が辞め続けるので、仕事は楽になる気配が無い。
それが異常と気付いた時には30歳に達していた。これまでに、女性と付き合った事など無い。たまの休みもストレス発散に、ゲームに没頭するのみだった。
そして、前夜は無理をし過ぎた。10日ぶりに家に帰れたが、自棄になってしまったのだ。一睡もせずにぶっ続けでゲームに没頭してしまった。その結果……。
「――過労死、か……。あいつら大丈夫かな……?」
職場の仲間を思い、若干の不安を覚える。貴重な戦力が消失し、今後の業務が回るか心配だった。
しかし、こうなってはオレにはどうしようもない。申し訳ないとは思うが、後の事は残された人たちに任せよう。それよりも今は、自分の事を考えないとな……。
オレは周囲を見渡すが、多数の木々に囲まれていた。目覚めた場所は完全なる森の中だった。
念の為にほっぺを抓るが非常に痛い。やはり、夢の中ってことも無さそうだな……。
着ている服装は、白シャツに黒のスラックス。それに革靴と、会社帰りの恰好である。ただし、高級そうな黒マントと、木の杖がそっと添えられている。
そして、手元に視線を落とすと、そこにはメニュー画面が浮かんでいた。オレの良く知るゲームに似た画面がね。
ひとまず情報を求め、そのメニュー画面を操作してみる。その表示内容に、オレは思わず唸り声を漏らす。
「うーむ……。オリジナルキャラになってるな……」
表示名は『アキラ』。職業は『導師』で、レベルは『30』となっている。
名前は問題無い。適当に入力する時は、大体『アキラ』と入力しているからだ。その表示名に違和感はない。
しかし、職業の『導師』って何だ? ここがオレの想定するゲーム世界なら、『魔導士』はあっても『導師』なんて職業は無いはずである。
更にレベルも『30』と微妙な高さだが、この数値は何処から来ている? まさか、オレの年齢が30歳だからでは無いよな……?
「意味がわからん……」
オレが死ぬ直前にプレイしていたゲームは『救世のラナエール』。超大作RPGであり、重厚なシナリオで人気を博す名作である。
基本シナリオは四人の勇者が魔王を倒す物語。封印を解かれた魔王が世界を蹂躙し、それに立ち向かう少年少女の成長を描いた物語である。
基本シナリオは間違い無く面白い。だが、『救世のラナエール』が最も優れているのは、課金によるダウンロードコンテンツである。
サブキャラクター達のサイドストーリーが解放され、プレアブルキャラとして追加される。物語の裏側に隠された、様々な秘密が解き明かされるのである。
更にはマルチプレイモードにも対応している。4人同時プレイによる、期間限定イベントが非常に熱い。ローカル通信だけでなく、オンラインにも対応しているのが非常にグッドだ。
「けど、職業が『導師』のキャラなんていなかったよな?」
大体のキャラは『戦士』『魔法使い』『僧侶』『弓使い』『盗賊』等から開始。特定条件をクリアすると、固有の上級職へと転職するのがパターンである。
初期から固有の職業を持つ者は居たが、『導師』キャラは存在しない。それはつまり、この世界は『救世のラナエール』では無いという事なのだろうか?
オレはメニュー画面を操作し、ステータスやスキル設定を確認して行く。そして、見知った設定の数々に再び唸ってしまう。
「うーん、やっぱりそっくりだな……。とりあえず、戦える状態にはしておくか……」
レベルが上がるとスキルポイントが貰える。Lv30だと30個のスキルを取得する事が出来る。
そして、『導師』は魔法使いと僧侶を合わせた性能だが、やや僧侶寄りの印象を受ける。攻撃魔法も光属性しか選択肢にない。
ひとまず、スキルポイントは半分だけ割り振る事にした。取得したのは『ヒール:Lv3』『瞑想:Lv3』『ライトニング:Lv5』『マジックバリア:Lv5』である。
『ヒール』はLv3でHPが半分程度回復。『瞑想』は一定時間の魔力上昇&魔力自然回復。『ライトニング』はLv5で魔力×三倍ダメージ。『マジックバリア』はLv5でダメージ50%軽減である。
戦闘時の死亡が怖いので、攻撃と防御は最大までスキルを取る。それ以外に関しては、様子を見ながらポイントを使って行こう。
「後は、これも取っておくか……」
オレはついでに『鑑定:Lv1』を取っておく。これでキャラクター、魔物、アイテムの名前が確認可能。キャラクターと魔物に対しては、レベルとHP/MPの残量も確認可能となる。
スキルポイントは残り『13』だ。素材収集系や生産系もあるのだが、この辺りは必要になったら取得で良いだろう。何せスキルポイントは有限だからね。
「じゃあ、早速ショートカットに登録をっと……」
『鑑定』みたいなアクティブスキルは登録不要。これは常時発動型なので、魔力を消費して使う必要がないのだ。
しかし、戦闘系スキルは、ショートカットの登録が必須である。戦闘中にメニュー画面を開いて、一つ一つ選ぶのは時間も手間も掛かるからね。
そして、ショートカットは4スロット存在し、更に切り替えで8スロットまで登録可能。利用頻度が高いスキルはメインスロット。利用頻度が少ないスキルはサブスロットという感じだ。
「……ん、何だこれ?」
オレはスキルを登録しようとして、思わず手が止まる。スキル一覧に習得済みのスキルを発見したからである。
そのスキル名は『不殺の誓い(固有スキル)』。効果は『生物への致死量ダメージを、自動的に手加減する』となっている。
固有スキルとは、キャラ毎に存在する特別な効果である。主人公キャラの勇者達は、非常に強力な能力を保有していた。
だが、オレの固有スキルはデメリット系な気がするんだよな。『救世のラナエール』では魔物は生物では無いので、それは効果の対象外だと願いたいのだが……。
「まあ、良いか……。それよりも、次は所持品チェックだな」
杖やマントの性能も気になるが、所持金や所持アイテムも重要だろう。無一文で所持品無しとかだと非常に困るし、この先の難易度に大きく影響するからね。
オレは祈る気持ちでアイテム欄へと指を伸ばす。しかし、その画面に触れる前に、甲高い声が耳に飛び込んで来た。
「誰か……! 誰か助けて下さい……!!!」
声の感じからすると、幼い少女に思えた。焦りを含んだ声色から、切羽詰まった状況と理解出来た。
オレはすかさずメニュー画面を閉じる。そして、アイコンを叩いてマップを表示させた。少し離れた場所に、敵アイコン6つと、味方アイコン2つが確認出来た。
「よし、まだ間に合いそうだな……!」
詳しい状況はわからないが、これは救援が必要な状況だろう。オレはマップを頼りに、声の元へと駆け出した。
これがゲームか現実かは不明だが、この先のイベントで何かがわかる。その為にもオレは、助けを求める声を無視する訳にはいかなかった。
少しでも面白いと思って頂けましたら、
ブクマと★星を入れていただけますと嬉しいです!
<[導師]アキラ(スキルポイント:17/30)>
☆不殺の誓い(固有スキル)[生物への致死量ダメージを、自動的に手加減する]
・ライトニングLv5(Master) [光属性:魔力×(50+SLv×50)%のダメージ]
・ヒールLv3 [光属性:SLv×15%のHP回復(魔力量によりボーナス補正)]
・マジックバリアLv5(Master) [3分間 SLv×10%のダメージ軽減]
・瞑想Lv3 [3分間 魔力上昇(SLv×10%)/魔力回復(毎秒:SLv×1%)]
・鑑定Lv1 [人物/アイテム/魔物の名称/レベル/HP&MPバー/状態異常を表示]