12月20日 秘密5
いよいよ、今年も残り10日ほどだ。あっという間だった。今年も。いろんなことがあったけど、那奈が戻ってきてくれたことが一番嬉しかった。彼女がいなくなった時は、一生ネガティブなままなのかと思ったけど、戻ってきた途端、私の何かが爆発したようにポジティブに変わっていく気がしたのだった。私は、スマホに映る那奈との写真を見つめていた。
ー12月16日ー
窓から差し込む夕日は、まるで那奈を優しいく照らすような光だった。那奈は、まるで天使のように美しく、綺麗な寝顔だった。私は、そんな彼女を見て微笑みながら、起こし始めた。彼女の肩を軽くゆすっていく。しかし、これでは全然起きないようだ。彼女は眠っているように見えたが、那奈の顔が少しずつ変化していくのがわかる。微かに眉をひそめ、まるで何かに悩まされているようにも見えた。
そこで、彼女の頭のそばに口を寄せ、ほのかな息を彼女の耳に吹きかけた。古谷と堂上は、ニヤニヤしながら笑いをこらえているようだった。私もやってて、笑いそうになる。そして、小声でつぶやいた。"那奈!!おはよう!起きてくれる?"
私の声に、那奈は反応したみたいだった。少し目を開け、チラリと私の方を見つめる。夢から覚めたときのようなまばたきをしながら、まぶたをゆっくりと開けた。彼女が目を開けると同時に、私は那奈の温かい手に触れた。那奈は、いつもの笑顔があった。そして、握ったその手を彼女は、優しく包み込みこんだ。
「おはよう。今、どこ?」。いつもの那奈だった。どうやら、電車の中で爆睡していたということは理解していたみたいだった。そして、那奈の明るい声に、古谷と堂上は、微笑んで頷いてくれた。初めまして、古谷です。そして、横から堂上です。と挨拶をされた。何が何だか、わからない那奈のはずだったが、自然に挨拶を返した。"聖徳3年の下田那奈です。よろしくお願いします。ハハハ"。
まるで、ずっと話していたかのようだった。目をこすりながら、窓の景色を見ていた。「終点までいこうか」。なぜ、終点なのかはわからない。けど、納得した顔で窓の外を見つめる。私は、この顔を何度も見てきた。「わかった」と二つ返事をした私は、周りの乗客を見渡した。もうすぐ、終点ということもあり、ほとんどの乗客は降りていた。おそらく、あと二駅くらいだろう。すると、前にいた古谷が話し始めた。




