11月6日 話し合い
私が教室につくと、多くの生徒が話し合いをしていた。私は、後ろの扉から気づかれないように自分の席へ向かう。すると、女子の副委員長である高田が私に挨拶をしてきた。小声で挨拶をして席についた。私は、朝のホームルームに行なわれる英単語テストの勉強をしながら、高田たちの話に耳を傾けていた。
高田「で、どうするの?」
高田の周りには、5、6人の女の子たちがいる。私は、施設という英単語"facility"の綴りを確認していた。
寺崎「だから、言ってるの。合唱でいいって」
新谷「それは、めんどくさいって。みんないないとできないから」
寺崎と言い合いをしているのは、新谷穂波だった。合唱ということは、文化祭の出し物なのか?高田や寺崎が話しているのはわかるけど、なんで新谷が話しているのだろうか?
高田「二人とも、今のままやと決まらないよ。もう、ジャンケンで決めたら?」
高田は、呆れてものが言えない様子。
寺崎「いや、私は、合唱がいいの」
寺崎は、合唱にこだわっていた。
新谷「‥‥」
新谷は、寺崎の発言に困った様子を見せた。彼女と出会ったのは、高校2年の時。当時、那奈と仲良くなった後、新谷も一緒に話すようになった。新谷と私は、どことなく似ている感じがあった。しかし、那奈がいなくなったことによって、新谷とも段々話さなくなるようになった。彼女のことが嫌いになったわけではなく、私と新谷を繋ぐものがなくなったような感覚だ。
高田「美桜、ジャンケンだったら、平等でしょ?」
寺崎「うーん、、、」
高田の提案にも首を傾げていた。
高田「新谷は、ジャンケンでもいいの?」
新谷「うん、私はジャンケンでいい」
新谷は、だんだんイラついてるように見えた。
高田「美桜、早くしようよ」
寺崎「やっぱり嫌。合唱以外のことするなら、私は参加しないから」
すると、後ろから寺崎の友人である林が声をかけてきた。
林 「美桜、もういいじゃない」
寺崎「嫌。もう、この話やめよ。疲れた」
高田「じゃあ、一旦話やめよ。新谷、また後でいい?」
高田は、場の雰囲気を察して、この話を続けることをやめた。
新谷「わかった」
新谷は、そう言って教室を出て行った。その後をついていくように、蒼井も立ち上がった。私は、二人の行方を見ながら、寺崎たちの話に耳を傾けた。