11月16日 バット
今日は、朝から那奈、新谷、蒼井の4人でキャッチボールをしていた。体育の授業は、選択制。私たちは、ソフトボールを選んだ。新谷以外は、みんなスポーツは苦手だった。
那奈「楓、次、バッティングしようよ」
私 「バッティング?」
那奈は、グローブを取って、自分のつけていた手の匂いを嗅いだ。
那奈「うん。キャッチボールだけだとつまんないよ」
私 「そうだけど」
そう言って那奈は、新谷が持っていたバットを取りに行った。
蒼井「何してんの?那奈は」
私 「なんかバッティングがしたいんだって」
近くにいた蒼井は話しかけていた。バットを取りに行く那奈の後ろ姿を見ながら話した。
蒼井「バッティング?ハハハ」
私 「おかしいこと通り越したヤバいでしょ」
私もグローブをとり、床においた。
蒼井「でも、嬉しかったんじゃない?」
私 「何が?」
蒼井「那奈が戻ってきたこと」
蒼井は、那奈が戻ってきたことに触れた。
私 「さあね?」
悟られないように、視線を逸らした。
蒼井「絶対嬉しいね」
私 「じゃあ、なんでそう思うの?」
蒼井「だって、那奈が帰ってきてからよく笑ってるでしょ」
自分でも、いつもより気分が上がっていることに気がついた。
私 「そうかな?」
蒼井「そうだよ。自分で気づいていないだけだよ」
私 「そんなことないよ」
蒼井の言うように、自分の中で抑圧をかけていた。
蒼井「嘘だよ。でも、戻ってきて嬉しいでしょ?」
私 「さぁね」
まだ、那奈は向こうで話しこんでいた。
蒼井「なんだよ、それ」
私 「なんだろうね」
必死にごまかそうとしていた。
蒼井「まぁ、私も嬉しいんだけどね」
私 「那奈ねぇ、、、、」
言葉を詰まらせていた。"おーい"。向こうから、那奈がやってきた。
私 「バット借りれたの?」
那奈「うん」
バットを揺らしながら、私のところに来た。
私 「何するのよ、借りて」
私は、那奈が借りたバットを見ていた。
那奈「だから、私が今からバッティングをしたいって言ってるじゃないの」
私 「どこで打つのよ」
那奈「そうね。じゃあ、楓が投げてよ」
私 「えー。めんどくさい。汚くなるし」
今日も那奈の笑顔が見えて、とても嬉しかった。また、こんな日常生活が戻ってくるなんてな。自分でも信じれなかった。




