11月5日 親友
彼女と出会ったのは、高校1年生の頃だった。当時から、いつも何かにイラついて、そのストレスの吐き場所を探していた。同級生のみんなは、友だちと一緒にいたり、男子たちと楽しく話をしている。そんなみんなと違い、私は、友だちと呼べる人がおらず、休み時間は、いつも一人で過ごしていた。時々、クラスの女の子と話すけど、強がって素直になれず、上手く話せない。その結果、周りからも、優しくない、怖いなどのレッテルを貼られる毎日だった。
そんな私を救ってくれたのが、下田那奈だった。みんな、私のことを避けることが多かったが、那奈だけは、違った。たまたま、同じ班になった時、食い入るように話しかけてきた。ずっと、"なんでだろう?"という疑問が浮かんでいた。那奈が話すのは、私をイジることか本の話。満面の笑みで、いつも私のことをからかってきた。そんな那奈が、いつしか、私の心の支えとなっていた。
那奈のことを考えながら、ペン回しをしていた。那奈がいなくなってから、早くも5ヶ月。私の心は、ポッカリ穴が空いていた。那奈が学校に来なくなったのは、4月26日。ちょうど、GWに入る前。そこから、いろんな情報が飛び交った。
最初に、那奈のことを聞いたのは、クラスの定本健太郎からだ。GWが終わって少し経ったころだっただろうか。彼から直接聞いた。内容としては、今、何してるかは言えないけど、必ず戻ってくるということだ。それ以上は、何も教えてくれなかった。2度目に情報が入ったのは、7月末に寺崎美桜の話。彼女から聞いたのは、那奈が病院にいるということ。5月頃は、入院していることも想定したが、こんなに長い期間ということに驚いていた。そして、3度目は、高田真波からだった。高田曰く、那奈は、10月から東京にいて、手術をうけるという情報だ。この3回の情報をつなぎ合わせると、長野にはおそらくいなくて、東京の病院で手術をするから、しばらくの間、戻ってくるのは難しいということだろう。
気がかりなのは、私だけでなく、いつも一緒にいた、新谷や蒼井にも連絡がくることはなかったことだ。おそらく、わざとしてないのだろう。私は、教えてくれなかったことに、寂しさを感じていた。誰かから聞くのではなく、直接情報が聞きたい。でも、連絡しても返ってこない。今、那奈は、何をしているのだろう。スマホに目を向けながら、那奈とのやりとりを見返していた。




