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罅入りボトルの少女

全身が砕けるまで走馬灯で過去にしがみつかないといけないのならば、一瞬で終わる方が幸せなのかもしれない。


……脳裏で動き続けるデジタル時計が2分経つ。

このカウントも走馬灯なのだろうか?



(……何が起きてるんだ?)



体の感覚はとうに無くなり、声も出せない。

首元を撫でる草の匂いがのった風は……首がある筈の部分も撫でている。


悪寒が背筋を……いや、後頭部を撫でていく。

その予感が外れている事を望みながら、白一色の世界でいつの間にか瞑っていた目を開いた。


清々しい程の青い色が、瞼の代わりに視界を覆う。

雲が空高い位置で霧散していて……それなのに暑くない。



(夏……だよな。山の中に空?偽物か?いや……余りの衝撃に俺の頭が狂ったか?というより死んでない方がおかしいか……)



登山。

光柱。

落下。


最も関連がありそうな時間帯を思い返したところで現状の説明となりえる情報は一切無い。


体の感覚が存在せず……恐らく首から下が破砕されたりちぎれ飛んだり、俺の頭だけが吹っ飛んだ可能性が高いのだろう……そんな状況では、自身の手足の確認さえ出来ない。



(くそっ、手か足だけでもあれば……!)



足掻こうにも足掻けない。

草原の僅かな窪みにハマっているせいで、一瞬考えてみた地面を噛んで動く方法も試せない。


……だが、そうやって時間をくっていると、段々と頭にモヤがかかってきた。



(流石に、もたない……!)



落下した衝撃で何処かに吹っ飛んでいった死神は、ようやく俺を見つけたみたいだ。

魂を刈り取る不可思議な刃が俺の首の体液の流出を遡り、鼻を貫く感覚に襲われ、視界が曇っていく。



霞んでいく青い空……


人の体で汗をかきながら遊べる夏の清々しい空、古文で見るような文字列はこのような空を指したのだろうか?

理解できない筈の表現に想いを馳せるクラスメイトの思考力に驚き、それを採点できる教師共に懐疑を抱いたが……



(やっぱり心情描写を理解出来る人間が分からない!テンプレなら豪雨に打たれている筈だ!)



太陽の下で爽やかな風に揉まれながら、首ひとつの男が虚ろな目で蒼天を睨む……


俺の失望の表現だ……

零点だろう、何が違うかは分からないが。



(……くそっ、足まであれば歩けるのに!)



重複表現をする程に求めても意識の混濁は進むばかり。

終わりが近い。



(……っ!とにかく、何かよこせ……っ!)



藁にもすがる思いで俺は何かを望んだ。

だがそれを声にも出せないことに苦痛を感じていると、諦めの気配が鎌首をもたげる。


もはや俺は全身を消失させて風の中を転がされているような、風を感じることが出来る触感だけが最後に残り俺の思考の踏み台となっていた。


そして、それも薄まっていく。


とにかく声を出したい。

果てるにしても、この苦痛を響かせてから……!


喉も肺も無いのに、餌を求める魚の様に大きく顎を動かす。

哀れな姿を晒しているが、口がなくなる前に使いたいから。



(足を……!)



もっと色々楽しみたかった。

生きる責任しか俺には見えていない。



「腕を……!」



……ぐわんと頭が揺れた気がする……?

今のは心の声だろうか……?

それとも……?



「戻しやがれ……!」



バタバタッ。

打ち上げられた魚が発するような音。


発声と共に、不意に投げ出された四肢がのたうち回っている。

先程までの俺は頭だけでも暴れようとしていた、その意思が伝達され手足が手当り次第に地面を叩き続けた。


慌てる間もなく、次第に俺の体は機能を取り戻していく。



痛覚。

オリハルからの刺激により、俺が図らずとも行動を抑制しいたずらに体が傷つくのを防止する。何が起きたかを直接、それぞれの個人だけが分かる刺激で伝えてくれる。


触覚。

たった今まで欠如し、先程の暴れっぷりからして操作さえ念頭に無かった筈の体を即座に認識させる。既に全身が地面に横たわっていることが分かる。


聴覚。

全身の感覚が戻ると、次に風の音から周囲の詳細を漠然と察知し、咀嚼する。どうやらここはかなり広い草原であり、穏やかな風が吹いているようだ。


味覚と嗅覚。

舞った土の破片が口に入って苦さと異物感を伝える。はっきり言ってこいつは邪魔だ……たが、マキナの体液特有の錆くささが心の余裕をもたらした。


視覚。

傾けた頭の先に、なだらかな丘の縁まで覆い尽くす数多の細い葉っぱが瑞々しく育っていた。低い位置で白む空と、適切な光に活き活きとしている緑の境界。



……ぼんやりと遠景を捉えていた目のピントが目と鼻の先にある葉脈に迫る過程で、何処かに浮いていた俺の意識が体内に戻ってきたのを感じる。


四肢に力を込めゆっくりとうつ伏せに、そして肘と膝のそれぞれの先を湿らせながら起き上がった俺は、景色に向かってため息をつくしかなかった。



「なんだ、ここ……!?」



全身を軽く叩いて体の所在を確認しながら目線を撒くと、山より圧倒的に広い草原が波立っていた。

まるでCGのような世界……突然戻った俺の体を含めて現実味が無さすぎる。


首を撫でて身体と頭が繋がっているのを確認しながら、なんとなく頭だけ振り向く。


緑の背景がまた呑気に横たわっているのかと思っていたが、灰色と黒、主張の強い銀の差し色がどっかりと塗りつぶしていた。

造形を確認する前に目を滑らしてしまい、即座に体を回して二度見をする。



地に対し平行で、幾何学的な形をしたアンテナを広げた円錐を歪に型どる二つの塔。

それを繋ぐように浮いた一つの黒い箱。もしかしたら部屋じゃないか?


ソレから童話の糸を思わせる銀のパイプが下に伸びて、ドームの形をしたガラス張りの天蓋を被った植物園の様な建造物に繋がっていた。



「……でかくね?」



山の中に海岸沿いにある放映局並の建造物が建っている。

何かの陰謀論を肯定をさせようとイメージ画像に出そうなB級ホラーのような造形に、もはや麗々しく感じる。


バッグの無い背中が寂しく、それに地上に戻りたいという焦燥感から人の気配を求めて近づいた。


扉無き入口が大きくなるにつれて植物園という直感が色づいていくのを片隅におき、構造物を支える鉄骨以外の透明な部分に違和感が湧く。

よく観察してみると隅が湾曲して内側の影を塗りつけていた。



「……かんっぜんな透明だな。少しも汚れてない……人が居るのか?」



気になることが多い。

足元を見て思案に耽る。


……あ、靴が無い。


バッグと共に消失したのだろうか、素足で草を踏ふとオリハルが濡れていくのを感じる。

それ自体は殆ど楽しくはないが貴重な経験だ。



俺はその感覚に緩やかに没頭し、何の気なしに顔をあげるまでただ真っ直ぐに進んでいた。


建造物の入口は草に覆われておらず、灰色一色である大理石の様なサラサラした触感の石畳が俺の姿を反射している。

点々と黒い液だれの跡がある以外は、間近で見ても本当に綺麗だった。



「すんませーん!誰か居ませんかー!」


「……すんませーん!!おーい!!」


「……居ないか。」



俺の声は廃墟全体に響き渡り、ただ虚しく残響を返すばかり。


人の気配がないということが確信に変わりかけるが、それでも何かあるだろうと不安を振り払って中に入る。



「なんだ、ここ……」



左右の壁には黒い液だれが、少しトンネルの様に曲がった天井から伝って白い壁を濡らしていた。

ウェルカムマットも無く、足裏の草の匂いを落とすことが出来ない俺は変わらない石畳の床を歩く。



「外側に対して内側、くっそ汚くないか……?」



虫はいないが、廃墟と聞いた際のイメージと変わらない汚さが何処までも続いている。

チラシらしき紙で出来た何かは一つもない事から、やはり秘密基地のような隠された建物なのだろうと予想して息を潜める。


正面へ少しの間歩き続けていると、木の扉が行く手を塞いでいた。

小窓が存在しており、外から植物園だと名づけたガラス張りのドームが見える。



何故か民家のような横開きの扉をスライドさせる。

内側からは消毒液を散布したような、ツンとした匂いが廊下になだれ込んでくる。




ガラス越しの光の下、ドームの中央にそびえ立つ大きな機械。


黒い箱が病に犯された蜂の巣のように絡まりあい、淡々と白く点滅している……


気分の悪そうなガタイのいい男からは距離を置きたくなるように、俺の足は未知の物体に対して進むことを拒んだ。



ふと、目を下げると白い箱……蓋がズレている。


そこから飛び出している足。

まるで昼に見た遺体のような足……?


そうか、本物だ。

肉の影が箱の縁を撫でている。



「……お、おーい?」



すらりと伸びる柔らかい色の足、人の理想の様な形をした細い足からの反応はない。

死にたてホヤホヤなのか……血色が悪い様には見えない。


それともやっぱり、RARだろうか。

影まで出来るRARなんて知らないが。


アールエーアールと定着している、ちゃんとした名称があったはずの技術……

人体に服装を投影し、マキナ化した人間のみならず、ノーマルな人間からもそこに肉を持った人間が居るように見える技術。



「……死んでるのか?」



さて、腕を伸ばせば足に届く範囲まで近づいた。

そこまで近づくと箱の下半分から床にかけて沢山の管が寝そべっているのがよく見えており、ドームに偏在している機械と繋がっているようだ。


……生死不明の足に、話しかける。



「おい、寝てるのか?」


いや、その問いかけはおかしいだろうか。

反応が無いことに訝しみながらもう一度問いかける。


「起きてるなら返事しろ。」



沈黙。

ドームの外で体を擦る風の音がした。


とても小さく鳴り響く機械の声が煩わしくなるほどに、俺は箱の方に注意を向けていた。




「────う、う……っ!」



苦しげに盛れてくる女らしき呻き声。


廃墟に衰弱した少女が居る理由を聞くのは、今は後回しにしなければならない。



「チッ!!」



俺は蓋に手をかけ、力任せに開こうとした。

しかしコンクリらしき蓋は固定されているかのようにビクともせず、本気で掴む指のオリハルの方が悲鳴をあげている。



「引きずり出すからな!」



ならば。

俺は柔らかい皮膚に人間らしさを感じながら、彼女をズルりと引きずり出した。


沢山の花が一緒に飛び出し、彼女の茶色い髪の毛に緑色の葉っぱを絡ませて膨れ上がった。

射し込む光の下で細く舞い上がる。


……患者用の服に見える薄青い服の一枚を羽織っていた彼女の体は痙攣し、今にもこと切れそうな細々とした呻き声を唾液の泡と共に吹いている。



「……脱水症状じゃねぇか!」



見慣れた病状を見て対処方法は頭の中を流れていくが体を冷やす氷やとにかく必要な水が、構造が一切分からないこの建物の中で早々に見つかるとは思えない。


震える少女の体は、同時にかなり強ばっている。

本来なら個人の判断ではなく直ちに救急車を呼ぶ必要がある程の重症だ。


しかし、ゴーストタウンの周辺は採算がとれないと判断されて殆どの基地局が撤退していて殆ど電波が繋がらないし、もし山岳救助の人々を呼べたとしても山の中に突撃してもらうのにどれだけの時間がかかるのだろう。


……つまり、この少女を助けることが出来る人間は俺しかいない。

衰弱死を見届けるより奔走する方が正しいと、自身を奮い立たせる。



一度この場を離れるため、嘔吐が出来るよう少女を横向きに転がした。

体勢が安定した事を確認し、床を弾いて部屋を飛び出す。



飛び込んだのはロッカーの立ち並ぶ広めの部屋。

密閉した袋の中に機能するであろう紙コップを見つけ、袋から取り出した。


「ウォーターサーバーだ……液体が黒ずんでやがる!」

「それ以外は……ゴミ袋。持っていこう。」



次に食堂らしき空間で見つけたのは、暗がりの中で眠く光っている包丁。

バールの無い今、代換えとして持っていこうかとも考えたが、頑丈さが足りないとして止めた。


「冷蔵庫!……機能してないか。中身もないっ、くそっ!」

「水道は……うごいっ……真っ黒だからダメだ。」

「よし、食塩はあった。」



ダンゴムシの様に右へ左へ駆け回って見つけたのは、唯一、整然とした廊下を汚すように鉄扉の間から溢れ出して床に潰れているダンボール。

遠くから見た瞬間は轢かれた虫の肉片のようにも見え、いささか躊躇った。


「荒らされたみたいだ……中は暗いな、倉庫か。」

「うっ、臭い……みかんでも腐ってるのか?」

「……大量の飲料水だ、よし……外の一部分が粘ついてるのが気になるが……破裂したペットボトルがあるな、それのせいか。」




膨れ上がった袋からペットボトルを落とさないよう抑え、幾度と迷いながらも目的地に走った。

魂呼びのように声を張り上げる。



「戻った!生きてるよな!?」



ツンとした匂いの立ち込める機械の部屋に飛び込み、オリハルを床で滑らしながら少女の隣へ膝を近づけた。

変わらず苦痛に潰れているが、容態が急変した事は無いようだ。



「う、おぇ……」



キッチンペーパーを叩き出しながら少女を観察する。


細くて小さい体だ、極めて刺激を抑えた方が良いだろう。ペットボトルの蓋を回して、それを受け皿にして零しながら注いだ。


彼女の頭を斜め上を向くようにして少女の乾いた唇の隙間から極小量の水を流し込むと、水だと分からないからかそのまま受け入れることなく出してしまう。

白い肌を濡らしていく水は殆ど無色で、僅かに酸味のある匂いを放っていた。


そのまま数度、彼女の呼吸が荒れないよう気をつけて水を流し込むと反応が変わってくる。



「ん、くっ……」

「……よし。」



一本目のペットボトルが半分を切る頃に、ようやく喉をか弱く拍動させて飲み込んだ。

苦しそうにしてるが仕方がない、あと何回か飲み込めたら少しずつ塩を混ぜていこう……



…………



あれから何時間経っただろうか。


……少女の介抱を始めたのがいつだったかを覚えていないため、丑三つ時の時刻にさえ実感が湧かない。

何せドームの外からは何時までもずっと同じ様に俺たちは投射されていて、光の強弱や影の移動は全く無い。


消費した時間に対して全く変わらない景色が、意外な程にとても気持ち悪く感じている。

何気ない本能はずっと脳に根強く残り続けているのだろう。




……いつしか少女は仰向けになり、安定した呼吸を繰り返していた。


血栓とか俺のよく分からないことが色々あるとは思うが、彼女が目を覚ましたらとりあえず山は超えたと判断して色々考えなければ。



「帰りたいな……いや、この空間から離れたいというか……」



落ち着いて床に座ってみるが、居心地の悪さは筆舌に尽くし難い。

さっきまでずっと緊張していた間にすっかり慣れてしまったが、このまま消毒の匂いに浸かり続けていると俺の体にも染みこんでしまいそうだ。流石に全身を買い換える程のお金がある訳じゃない……



「……はぁ。」



今が終われば、その先を考えてしまう。

そして未来があれば過去もある。


時間というツルを引っ張ると、疑問と喪失感が丸々と肥えた状態で出てくる。

しかも皮が厚いだけで身になる部分はほとんど無い、痩せた貝の如き無為な……



「……バッグ。」



中身というイメージは、バッグの中に詰めた数々の出品物の事を想起させる。


金が足りない。バッグも無い。

なんだかんだ愛用していたバールも無い。


……はぁ、俺の金庫から金材質の物体を取り出さないといけないな。



「くそ……ちっ、くそ……はぁ……」



取り戻せないやるせなさに舌打ちしていた……その時だった。



衣擦れの音。

肌色がくるりと、大きく開いた目をこちらを向けた。



「────あ……?えっと……けほっ、けほっ!」

「……っ!起きたのか!?」


「けほけほ……うっ、頭が、痛い……!」

「体を起こすな!慌てるな……お前は脱水症状だったんだ……」

「はい……」



心細そうな表情をそのままに、目を閉じながらドームを見上げる少女は見た目相応の年齢のようだ。

中学生程度の体躯はあまりにも弱々しい。


……だが、患者の着るような服を来ている彼女の家は何処なのだろう?

まさかここで人工的に作られた……そんな事がありえるのだろうか?


思考の渦が常識の歪めかけたタイミングで、少女の掠れた声が響いた。



「あの……」

「なに?」

「ありがとう、けほっ、ございます……」

「……あぁ。どうも。」



……捨ておくには忍びない。


のらりくらりと少女を見捨てて逃げる事も人道的には最悪すぎるが、これ以上の面倒事から一切逃げるための選択の一つではある。

……話すか。



「……お前の家は何処だ?この建物の何処かに金はあるだろうからな。」

「えっとですね……ここじゃない……ここじゃないけど……」

「……警察の所へ行くか?」

「……本当に?」



────本当に?

その言葉は、俺のなだらかに流れる思考を堰き止めた。


何に対しての言葉だろうか?

死にかけた彼女の言葉なのに、その言葉には不思議な魅力があった。


危険で、楽しい……

いや、馬鹿みたいな選択肢だと頭を振って一蹴する。



「……お前が決めろ。ここに残るか、警察に行くか。」

「……どうして欲しいですか?」


「おい、聞いてないのか?」

「……聞かないと、動けなくて。」



少女は天井の方に向けて儚げに笑った。

その可愛らしく美しい造形的な表情は、変わらないドームの背景によく合っている。


……残れと言えば残るのだろう。

警察に突き出せば、きっとその先は自分で開拓していくだろう。


今後の一生に関わる重大な選択肢を、100円内に収める菓子を決めるかのように軽く問う口調に対して俺は眉をひそめて考えこむ。


そして一つ、決断に至る仮説を立てた。

真っ当な環境に生きていたらまさかこんな所で置いていかれる訳が無いだろう。


────使い捨て。


もはや彼女は『捨てられたモノ』かもしれない。



「……暫く保留する。」

「えっ?」


彼女の目が再びこちらを見た。

目が合う。


翡翠の色が漂う、蒼い目。

吸い込まれそうな程に美しい。


「俺と一緒に来い。暫くしたら行くアテが分かるかもしれないだろ?」

「はい、分かりました。」



……結局、彼女の言葉に甘えてしまった。


『本当は』もっと関わりたい。

『本当は』この事を皆に言いふらしたい。

『本当は』がんがん彼女の悩みに踏み込みたい。


その方が楽しそうだから。


つまり子供なのだ、俺も。

いや、子供というより……俺の性格なのかもしれない。

時が経てば直るというイメージというのが一切湧かないのだから、自覚していかなければならない。



「ただ、もう少し横になっていろ。腹に入れる物が無いか探してくる。」

「……分かりました。」



その声は先程よりしっかりしていて、きちんと呼吸に合わせて放たれていた。

回復がとても早い。


そして彼女はマキナ化した人間ではないのだと今更ながら確信した。

食塩水を直接かけて元気になる金属があったら、きっとそれは義務教育で習うに違いないから。

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