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変化

自身が微睡んでいると覚めた時、周囲で何かが唸る音がした。

微かに揺れるコンクリらしき硬さの箱の中で、思考の火蓋が切られて渦を巻いた。



先程から唸っているのを風だと仮定し、重い瞼を揺らそうとする。

そこで私は何かの匂いに包まれていることに気づいた。

鼻をくすぐる良い匂い。


とても好ましくて、でもどうにも甘ったるくて、それに凄くこそばゆい。


「くしゅっ!」


その刺激に耐えきれず、考える前にお腹に力が入って体を跳ねながら頭を持ち上げてしまった。

行動は固くて重いものによって途中で遮られ、頭をコンクリっぽい何かに対して強かに叩きつけてしまう。


「あうっ!?」


鈍い音が、私の額に火をつけた。

段々と熱くなる額を感じながら、しっかり目を開いて現状の把握を始める。



私の肩幅より少し広い程度の空間は四角く囲ってきていて、足元だけが外の光に照らされていた。

……箱の中で寝ていたのかな。


無意識に握っていた花束を頭の上へ移動させた。

少しだけ視界が広がる。


この狭い空間を更に呼吸さえ憚りそうな程にまでとても圧迫している草花を観察する。

くしゃみをさせた白い花だけが所狭しと放り込まれていて、乱雑な敷き詰め方の中で身動ぎすると青い臭さが鼻を覆ってくる。


外に出る為に体を回す範囲もない。

こんな状況からの脱出方法を考えた私は口を結び、大きく息を吸ってから目を閉じた。


花の海に溺れかけながら足をシャクトリムシの様に動かす。

ぎゅっと瞑った瞼の向こうで、顔を撫でていく葉っぱの瑞々しい感触を感じる。


「いたっ……」


……背中で何かが弾けるような感触が走った。

服が引っかかったのかもしれないし、破れていたら嫌だな……


ただそれを確かめるのも外に出てから。


悪戦苦闘しながら奇怪な体勢で移動し、やっと足を箱の外に伸ばすことが出来た……


「んぅ……」


さっき起きたばかりだからか……少し体が重くなってきている……


……涼しい風が箱の外に放り出した足を冷まして……


暖かい光が……凄く、そう、暖かい……


……ふと……意識が遠くなるのを感じて……



……眠くなる……



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