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お花の妖精と僕の物語。  作者: 胡桃澪
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3-1 スーパーぷりちーなひまわりの妖精現る!?(桃花視点)

私、星野桃花(ほしのももか)は世界で一番可愛い。私が微笑んだらどんな男だってファンにさせる自信はあるし、皆がハッピーな気持ちになる。


「みんなぁ! また桃花に会いに来てくれるー?」

「桃花ちゃああん!!」

「もちろん会いに行くよー!!」


小さな頃は内気でずっと下ばかり向いてたし、とても太っていた。そのせいで男達は基本的に私を見下し、いじめてきた。


だけど、憧れのアイドルを見つけて以来私は必死に努力した。ダイエットしてオシャレにも気をつけて、歌やダンスの練習も死ぬ気でやって。


中学一年でアイドルグループの研究生として受かり、高2の今やずっとセンターに立つ存在へまで上り詰めた。


そう、私が一番可愛いし輝いている!


なのに……。


「おはよう、みんなっ」

「桃花ちゃん、おはようー!」

「今日も可愛いー!」


教室に入ると、男子達が一気に押し寄せる。


「出たよ、ぶりっ子」

「また男侍らせてる……」


女子からは嫌われやすい存在になってしまった。


まあ、くだらない嫉妬なんて気にしないけど。


「あ、東雲くん! おはようっ」

「うす」


私は同じクラスの東雲くんが教室に入って来ると、明るく挨拶する。


東雲大地だけはどうしても解せぬ。


こんなに可愛くて明るくて皆に優しい私が話しかけてるのに何でいつも塩対応なわけ!


ちゃんと目ついてるわけ!?


前に校外学習の班に入らないか提案した時もクラスの皆の評価上げる為に誘ってるとか失礼な事言ってさ!


本当にムカつく!!


「桃花ちゃん、毎朝東雲にも挨拶して。怖くないの?」

「だって東雲くんもクラスメイトでしょ? 私はクラスのみーんなと仲良くなりたいんだぁ」

「俺も桃花ちゃんともっと仲良くなりたい!」

「俺もっ」

「えへへ、皆ありがとっ」


はぁ、他の男はみーんな桃花に夢中なのに!


何であいつだけーっ!!


「本当、星野桃花うざっ」

「学校でまでアイドルモード全開でさ。常にチヤホヤされてないと気が済まないんじゃない?」


女子からは聞こえるように陰口を言われる日々。


これが学校でだけなら良いんだけど……。


「おはようございまぁす!」

「桃花ちゃん、おはよう! 今日は撮影よろしくね!」

「はい、頑張ります!」


学校が終わると、私は雑誌のインタビューへ。


「どうせまた桃花のページが多いんでしょ?」

「萎えるわー。事務所のゴリ押し」

「てか、うちら桃花の引き立て役じゃねぇし」

「ねー! マジさっさと卒業してほしいー!」


他のメンバーの話し声が聞こえると、私はため息をつく。


センターになって活躍するようになったのは私がとにかく努力したからだ。


事務所からゴリ押しされる私が気に食わない?


文句なら事務所に言えしっ。


大体、私がセンターだって気に食わないなら私から座を奪うつもりでもっと頑張りなさいよ。


実力足りないくせに文句ばっか言ってるんじゃないわよ!


はぁ、私って嫌な奴……。


だから、敵ばかり作るんだ。


「お疲れ様でしたー」


仕事を終えると、一人で帰る。


両親は仕事でなかなか帰らない。


ファンに寂しい思いをさせないのがアイドル!


だけど、私の寂しさを埋めてくれる存在はいないのだ。


「この公園に来たのも久しぶり……」


昔よくダンスや歌の練習に使ったステージがある公園に来てみた。


久しぶりにここで練習しようかと思ったら先客がいた。


「みんなぁ、ありがとう! 世界一ぷりちーな妖精、ひまわりだよ!!」


幼稚園児ぐらいのパーマがかった金髪の男の子が立っていた。


今の子供ってあんな派手なんだ。


って、今21時だけど……。


「ちょっと、あんた! こんな時間にちっちゃい子が出歩いたら危ないじゃない!」

「ひまわりちっちゃくないよ!? でっかい大スター!」

「お父さんお母さんは!?」

「ひまわりは生まれた時から一人なんだからねっ」

「おまわりさん呼ばないと」

「ひまわり、悪い事してないよ!?」

「あんたのお父さんお母さん探すのよっ」

「ひまわりのオンステージ邪魔するなしっ! これからたくさんのお客さんが!」

「誰も来る気配無いじゃない」

「やだぁぁ! ひまわりここでもっと歌って踊りたい!」


うわ、泣かれちゃった。


私、子供はあんまり得意じゃないのよね。


「まいったわ……仕方ない。あんた、うち来る?」

「ひまわり、ここにいたい!」

「お風呂のが歌声響いて気持ち良いわよ」

「ひまわり、生まれてからまだお風呂入った事ない! 行く!」

「はぁ!?」


まさかネグレクト?


だから、一人で?


「あ、でもここから出るにはパートナーがいるんじゃーん!」

「は? パートナー?」

「あんたひまわりのパートナーにしてやっても良いよ!」

「はぁ? 何か生意気ね! それに、私は桃花! スーパーアイドルの桃花様の事知らないわけ?」

「桃花! 桃花、桃花っ」

「おい、呼び捨てすんなし! お姉さんでしょ」

「桃花だってスーパーぷりちー妖精なひまわりの事知らなかった!」

「知らないわよ。その辺の子供の事なんて」

「いいからパートナーなれし!」

「はぁ、出る為に必要なの? 良いわよ。パートナーでも何でもなってあげるっ」

「やったぁ! ひまわりようやくここから出られる!」


パートナーがいないと出られないって何なの?


「本当に近くにお父さんお母さんいないわけ?」

「ひまわりはそこのおっきなひまわりから生まれたからお父さんお母さんいないしー?」

「はぁ?」


確かにステージの側には大きな向日葵の花が咲いている。


「ひまわりはひまわりの妖精だからねっ! えーいっ!」


彼が手をかざすと、何も無かった地面から大量の向日葵が生えてきた。


「な、何これっ!?」

「ひまわりの魔法ー!! 超いけてなーい?」

「よ、妖精? 私、疲れてるのかな」

「あとねぇ、あとねぇ! ひまひまイェーイ!」


彼は突然向日葵の花に変化した。


「ひ、ひまわりの妖精……?」

「そう! 世界一ぷりちーなお花の妖精、それがひまわり!」


頬を何度つねっても痛みを感じる。


とんでもない奴を拾ってしまった!


「わぁ、ここがひまわりのお城ー!」

「はぁ、まさか子供を拾うなんて」

「桃花ぁ、ひまわり何か食べたい!」

「はぁ? 妖精も腹が減るわけ?」

「人間の食べ物とか超気になるー!」

「はぁ、オムレツでも作るわ」


オムレツを作ってひまわりに食べさせる事にした。


「うわぁ、ぐちゃぐちゃのこげこげー! 全然ぷりちーじゃないじゃーん!」

「なっ!? 文句言うならあげないわよ」

「食べるもーん!」


料理苦手すぎよね、私。


「どうよ? 初めてのオムレツは」

「悪くないかもねー!」


なんか上から目線よね、こいつ。


誰かに似てるわね。


「スーパーアイドルの手料理が食べられるなんて早々無いんだからねっ」

「ひまわりだってスーパーアイドルだもん! 妖精界のっ。ひまわりが住んであげる事もっと桃花は喜ぶべきー!」

「あんただって私が住まわせてあげる事に感謝しなさいよ! アイドルの部屋は男子禁制なんだからねっ」

「桃花、超えらそー!」

「あんただって! 図々しいのっ」


こんなクソガキと上手くやってけるのかしら。


「ひまひまイェイイェイ! 今日もぷりちー大妖精、ひまわり様ー! みんなひまわりにひれ伏せ、イェイイェイ」

「ちょっと! じっとしなさいよ! 髪洗えないでしょ!」

「お風呂はひまわりのオンステージだぞ! 桃花っ」

「長く入ったらのぼせるわよ」


お風呂でひまわりの髪や身体を洗ってあげると、私はすぐさまベッドに飛び込んだ。


「ひまわり、やっぱり超美声じゃ無い!?」

「あんた、自己肯定感高すぎなのよ」

「ひまわりは世界で一番ひまわりが好き! 桃花も一緒でしょー?」

「そうね。だから、私には心を開ける相手がいないのかもね……」



いつだって私は結局自分が一番なの。


「じゃあ、良いコンビになれそう! ひまわり達!」

「はぁ?」

「自分が大好き同士!」


そっか、ひまわりは私に似てるんだ。


「あんたにやたら腹立つ理由が分かったわ」

「はぁ!? ひまわりはぷりちーで癒しを与える存在なんだからね!」

「どこがよ」

「お花の妖精は人間のパートナーを幸せにする使命があるんだ! だから、ひまわりが選んでやった桃花は超ハッピーになれるよねー!」

「そうなんだ……」


パートナーってそういう事。


幸せに……ねぇ。


私の望む幸せって何なんだろ。


「じゃあ、ひまわり! 私は学校行くから! 私が帰るまで寝室にこもってる事」

「ひまわり監禁ー!?」

「火とかつけちゃったら危ないから! 今日は仕事無いし、早めに帰るわよ」

「ひまわりも学校……」

「だーめ! 良い子にお留守番にしてたら、タピオカ買ってあげるから」

「タピオカ!? ワクワクする名前じゃんっ」

「じゃあ、行ってきます」

「桃花、行ってらっしゃい! ひまわりを待たせたら許さないからねっ」

「はいはーい」


ムカつく奴だけど、初めて誰かに行ってらっしゃいと言って貰えた事が嬉しくて。


あいつ、本当に私を幸せにする存在なんじゃ?


初めてだった。


私が素の自分で話せる存在は……。


タピオカ以外にも色々買ってやるか、あいつに。




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