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お花の妖精と僕の物語。  作者: 胡桃澪
5/6

2-3 初めて必要としてくれた子(大地視点)

桜の妖精を我が家に迎え入れた。


親父には何とか事情を説明し、うちに桜の妖精を置く許可を得た。


「お兄さん、これなぁに?」

「これはおはぎ。うちの親父が好きでな」

「美味しそうなの」

「はははっ。桜ちゃん、食べてみるかい?」

「ありがとうなの! 食べるのっ」


親父はすっかり桜を気に入ったようだ。


考えてみたらあんな小さな子をこんなヤクザだらけの家に置くのってあんま良く無いんじゃ?


でも、桜が俺をパートナーにしたいって言ってくれた事がすげぇ嬉しくて。


初めてだった、誰かから必要とされていると感じたのは。


学校では一切ありえない話だから。


「お兄さん、おはぎあまあまで美味しいのっ」

「良かったなぁ、桜」

「僕、おはぎだいしゅきなのっ」

「おい、お前らぁ! これからは俺だけじゃなくて桜ちゃんの分としておはぎ大量に買ってこい」

「へい! 親父!」


親父の桜への態度もあまあまだ。


「若! 若がちいせぇ頃に使ってた物を入れた箱を見つけやした!」

「ああ、助かる。桜、この中にたくさん絵本やらおもちゃやら入ってっから好きに使うが良い」

「なのー! ありがとうなの! でも、文字がまだ読めないから絵本はお兄さんに読んで欲しいの」

「えっ? あ、ああ」


そうか。


文字の読み書きもこれから教えないとな。


チューリップくんもひらがなの勉強をしているとさっき長谷川さんから聞いたし。


学校帰りに桜に必要そうなもの買い足すか。


「お兄さん、読むならこれが良いのっ」

「えっ? シンデレラ?」

「可愛くてしゅてきなの」

「そ、そうか」


桜は見た目女子っぽいし、中身も乙女思考なようだ。


「そして、シンデレラはお城で王子様と暮らして幸せになりましたとさ……」


夜になると、俺は桜の為に読み聞かせをした。


だけど、桜は俺の隣で爆睡していた。


「寝ちゃったか……」


こんな安心しきった顔で眠るとは。


俺にこんなに懐く子供早々いないからな。


顔見ただけで泣く子供が殆どだ。


桜は自分では人見知りで臆病で恥ずかしがり屋な性格だと言っていたが、俺に懐いてくるくらいだから普通ではない。


翌朝になると、横には桜が居なかった。


「桜!?」


俺は慌てて寝室を出て桜を探しに行く。


「おぉ、桜の坊ちゃん上手ですねぇ」

「なの。お料理楽しいのっ」


台所に行くと、桜が料理担当の舎弟と一緒に料理をしていた。


「何やってんだ?」

「ああ、若。おはようございます! 桜の坊ちゃんがやりたいと言うんで」

「朝ごはんとお兄さんのお弁当作ったのっ」

「あ、ありがとうな」


お弁当、桜でんぶたくさんかかってるな。


ご飯がピンク色……。


「いただきますなの」

「はい、いただきます」

「桜ちゃん、おかわりはたくさんあるからねぇ」

「親父、顔緩みすぎだ」

「いやぁ、早くも孫が出来た気分だぁ」

「孫って……」


平日の朝はいつも憂鬱なはずなのに。


「お兄さん美味しい?」

「ああ。すげぇ美味い。桜はえらいな、お料理手伝って」

「若……久しぶりにわらいましたねっ!?」

「はぁ!?」


舎弟達は涙目だ。


「若がこんなに笑ったの久しぶりでぇ」

「確かにな。大地の奴、いつもつまんなそうな顔してやがったからなぁ」

「お、親父まで!」

「お兄さんをいっぱいニコニコにするのっ」


そうか、俺……桜の前だと笑えるんだな。


「じゃあ、学校行ってくる」

「お兄さん行ってらっしゃいなの! お弁当どうぞなのっ」

「ああ、ありがとうな」

「学校頑張ってきてなの」

「おぅ! 帰ったら遊ぼうな」


桜に手を振り、学校へ向かう。


今日は良い気持ちで学校へ向かえるな。


「あれって東雲くん……? わ、笑ってる?」


帰ったら桜と何して遊ぼう?


ワクワクした気持ちでいっぱいだ。




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