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お花の妖精と僕の物語。  作者: 胡桃澪
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2-2 桜の妖精を見つけた!(雅也視点)

「わぁ、これが桜の木ー! 綺麗だねぇ」

「すっかりお花見シーズンだな」


チューリップの妖精が我が家に来てから数週間。公園デビューというのをさせてみた。


チューリップは初めて見る桜並木を見て感動していた。


家の近くに桜が綺麗な公園がある事は知っていたが、来たのは初めてだ。チューリップがテレビを見て桜の木を見てみたいと言わなければきっと来る事も無かっただろう。


「あれぇ?」

「どうした?」

「あの子……ようしぇいの匂い!」


チューリップが指を指したのは桜の木の木陰に隠れている桜色の髪をハーフツインにした小さな子供だった。


「どうしよう……今日になってもパートナー見つからないの……」

「こんにちはぁ!」

「なの!?」


チューリップはその子に話しかけに行った。


やっぱりあいつ陽キャだな。


「僕、チューリップのようしぇい! あなたはー?」

「お、お仲間なの!? 僕は桜の妖精なの」

「パートナーしゃん見つかったぁ?」

「まだ。僕、人と話すのが苦手で。はずかしはずかしなの」


僕……男の子なのか!


女の子だと思ったがチューリップいわくお花の妖精は男児のみらしい。


「しょっかぁ。ねぇねぇ、おにいしゃん! この子のパートナー探すの手伝おうよ」

「えっ? でもそう簡単には……」

「パートナーを見つけて幸せにしゅるのが僕らのお仕事!」

「猫や犬とは訳が違うからなぁ」


いきなり子供を引き取って面倒見ろだなんて。


「おにいしゃん、ペンある? この箱にひろってくだしゃいって書いて!」

「あ、ああ」

「桜くん! この箱入って!」

「な、なの? 分かったの」


チューリップはひろってくださいと書いた段ボール箱に桜くんを入れた。


「えっ? えっ?」

「みなしゃーん! 桜の妖精しゃん拾ってくだしゃーい! いっぱいいやしゅよー!」


チューリップは大きな声で呼び込みをする。


そんな無茶な!


「いっぱいいやしゅの……」

「桜くん、もっと大きな声でねぇ?」

「が、頑張るの」


桜くんはチューリップと違ってかなり内気な性格らしい。小さな頃の自分を思い出す。


「何あれ可愛い」

「ちっちゃい子二人で遊んでるのかなぁ?」


通りすがりの人達は足を止めない。


俺はあっさりチューリップを受け入れたけど、他の妖精はパートナー探しに苦労するんだな。


「じぇんじぇん止まってくれないねぇ」

「やっぱり僕にはパートナー見つからないの……」

「そ、そんな事!」

「公園人たくしゃん来るからきっと見つかるよ!」

「なの……あっ!」

「どうしたんだ?」

「あのお兄さん……」


桜くんは公園のベンチに座っている金髪の男子高生を指さした。


「知ってるのか?」

「よくこの公園で見かけるの。いつも寂しそうで気になるの」


一見不良っぽい見た目の子だけど……大丈夫か?


「気になるなら声かけようよ!」

「でも……」

「一緒に行こ、桜くん!」

「あ、おい! チューリップ!」


チューリップは桜くんの手を引き、彼の元へ。


「すみましぇーん」

「あ?」

「ほら、桜くんっ」

「な、なの。あの……お兄さん! ぼ、僕のパートナーになって欲しいの」


桜くんは勇気を出して彼へ。


「ぱ、パートナー?」

「す、すみません。この子、誰かを幸せにする為に桜から産まれた桜の妖精でえっとその……幸せにする人間のパートナーを探してるんですよ」

「何すか? それ。宗教的な誘いいらねっすけど」


事情を説明するも、やはり信じて貰えない。


まあ、俺も最初チューリップには戸惑ったしな。


「桜くんはようしぇいだって分かるように魔法使ったらいいんじゃないかなぁ」

「なの! やってみるの。えいっなの!」


桜くんが手を叩くと、何も無かった場所にいきなり桜の木が生えた。


「な、な、なんだ!? 突然桜の木が生えた!?」

「あと、しょれー!」


桜くんが掛け声すると、桜くんの手のひらの上にはたくさんのさくらんぼが。


「えっ! マジで桜の妖精……なのか?」

「えっへんなの」


彼の疑いは桜くんの使った魔法によって無くなったようだ。


「なるほどね。貴方はチューリップの妖精と暮らしている人間のパートナーで、チューリップの妖精と一緒に桜の妖精のパートナー探しを手伝ってたと?」

「ごめんなさい。こんな不思議な話簡単には受け入れられないとは思うけど……」


俺は彼に詳細を話した。


「この子……パートナーが見つかるまでずっとこの公園にいるしかないのか?」

「そうだねぇ! パートナーが出来ないと、自分を生み出した桜の木がある場所から離れられないねぇ」


そうか、パートナーが見つからないから桜くんはずっとこの公園に……。


「もう1週間いるの。僕が上手く声掛けられないから」

「ーーうちに来るか?」

「なのっ!?」

「親父がなんて言うか分からねぇけど、お前……俺が良いんだろ?」

「うん。お兄さんをパートナーにしたいの」

「誰かに必要とされたの初めてだからよ。それにお前が生まれた桜の木ってあれ?」

「なのっ!」

「俺と母ちゃんの思い出の木か。何か縁も感じるし」


えっ! あっさり決まった!?


「あ、ありがとう! えっと……名前……」

「東雲大地っす」

「あ、俺は長谷川雅也です」

「長谷川さんっすね。あの……妖精のパートナーっていまいちまだよく分からないんで連絡先交換いいっすか?」

「ああ、うん!」

「ありがとうございます!」


見た目は派手だけど、悪い子じゃ無さそうだな。


「良かったねぇ! 桜くん」

「なの! ありがとうなの。チューリップくん」

「今度は一緒にあしょぼうねぇ」


こうして桜の妖精は無事に東雲大地くんというパートナーを見つけたのだった。


「妖精っていろんなタイプがいるんだな」

「うん! 春夏秋冬たくしゃんいるってぇ! またお友達増やしたいなぁ」


チューリップと出会ってから色々な事が起きる。


大地くんかぁ。


高校生の友達ができるとはな……。




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