#72 ちょっとしたイタズラ…犯罪ですよ!
何とか再起動しました。
私、佐々本賢治は西恩寺社長達が
入ってくるであろう手前左側の扉を
見つめながら呟く。
「気になるコメントは…ニヤつく男の子
の顔と奏さんと名前を呼ぶ女の子の
声…。」
@梟の集い No.1
:コレにアイツ、気がついてない…。
映っているんだけどニヤケ顔。
@梟の集い No.3
:うちの親、音響に拘り持つ人で
TVスピーカーじゃあ物足りなくて
けっこうお高いSoundStick使って
いるんだ。
ただいまーあれっ靴多いね、奏さん
の靴だって声が最後に聞こえる。
@お姉様とお呼びし隊 近衛隊長
:SoundStickは最低でも5.1hn
ないと駄目ですよ。
後、バスも上げないとです。
あの厳つい男に確認しろと言われて
コメント欄を見ていたのだがわからん。
私の二人の息子と仲間が馬鹿をしただ
けではないのか。
断片的な事しか書かれていないコメント
に困っている。
配信された捏造動画にニヤつく男の子の
顔は映ってない。
顔はモザイクで隠されていたし…。
映されているボテッとした体形の
西恩寺さんの娘の声は吹き替えで
園田家の娘が喋っている…。
わからん、全くわからない。
コレにどうして娘の由香里まで
関係してるのかわからない…。
動画確認はしたのだが由香里の声は
間違いなく入ってない。
SoundStickって何なんだ?
5.1hnって何なんだ?
バス…訳わからない。
音量を上げても由香里の声は聞こえて
こない…。
英雄も勇気も他の子達も由香里は
関係してないと言うが、西恩寺さんは
関係者として由香里を見ている。
コメントを読み進めて行くうちに
明らかに誰のことを指しているのか
分かるコメントが出てきた。
@サメ狩り師
:買い替えたTVでこの動画をキャスト
して見たんだけど、知ってる奴が
映ってた。
ホントだった、ニヤつく男の
子の顔。
アイツじゃんか!
@ジョーズキラー
:男の顔はモザイク掛かってたぞ?
モザイク外したんか。
@鮫討伐
:そうじゃない。
ボクも梟さんから教えてもらって
見たけど、モバイルのサイズが問題なんだ。
@ジョーズキラー
:サイズが問題って?
@サメ狩り師
:TVサイズ40インチあれば
ギリいける。
キャストしてみ。
@ジョーズキラー
:……見つけたぞ!
@鮫討伐
:どうやらマヌケ達が見つかった
ようだな。
バカな事したよコイツら。
顔さらしてんじゃん。
@ジョーズキラー
:コイツらって…他にもいんの?
@お姉様とお呼びし隊 近衛隊長
:いらっしゃいますよ。
他にお二人ほど。
私の家のTVおっきいので見えて
ます。
@鮫討伐
:ブラックパネルだったら分から
なかっただろうけど、鏡面だか
らハッキリと分かるんだよなぁ。
馬鹿な事をしたよコイツら。
このコメントから画面サイズが小さいと
見えず、大きいと見えるものらしい…。
ハンドルネームがサメに対して敵意を
持っている名だ。
何かしら鮫島と関係しているのは間違い
なさそうだ。
映ってた顔の人物を知ってると書いて
ある。
これらのコメントは間違いなく
学校関係者、生徒だな。
手前に座る子ども達の誰かが映って
いるのは間違いない…。
最悪だ…ココだけの話で済めばと…。
いったい誰が映っているんだ?
突然、音も無く開く扉にビクッと
して見ると、
「どうぞこちらへ。」
紺色のスーツの襟にキラリと光るバッチ
を付けた銀縁メガネの女性が入場を
促している。
私は慌てて立ち上がるが、大半の者が
座ったままだ。
仁王立ちで腕を組み、コチラを
睨みつける西恩寺副社長をガラガラと
音を立て台車が運ぶ!?
へっ…台車で運ばれている?はっ?
一瞬呆気にとられたが、直ぐに私は
立ち上がり、
「たてえぇぇっ、頭を下げろぉぉ!」
っと座っている面々を怒鳴りつける。
「あっ、謝罪はけっこうです。
謝って済む問題ではないので。」
用意されたマイクを使い厳しく述べる
ラビット社の西恩寺茉莉花社長。
逞しい少年が銀髪エメラルドグリーンの
瞳を持つ美しい女性をお姫様抱っこで
中央の真ん中の席左に運び、そっと
座らせる。
超一級のモデルと言われても納得して
しまう程の美女の左に、西恩寺茉莉花
社長とヴァン副社長が座っている。
もしかして…動画の娘さん?
変わりすぎだろう…まて…あの動画…いつ
撮られた物なんだ…。
それにあの逞しい少年…見た事が
あるような…。
逞しい少年が入って来た扉の方を
見ると、着ているスーツがはち切れ
そうな…見た事あるガッチリ体躯の
男性とグラマラスボディーの女性
が入って来た。
「坂巻さん…何故?」
あの逞しい少年が…あの時の少年だっ
たのか!
「ここから、この場は録画させて
いただきます。
ご了承できない方はお帰り下さい。
話し合いの結果によって民事で訴え
ますが、刑事罰にできる程の証拠が
ありますので…良く考えて
ご判断下さい。」
ラビット社専属の弁護士がそう述べると
ヴィィィィっと音がすると、壁と天井
からカメラが出てきた!?
「録画しても良いですか?
お返事頂けますか?」
そう言って銀縁メガネを人差指で
クイッと押し上げて我々をひと睨み。
「ちょっと待ってくれ!
子供のちょっとしたイタズラだろう?
ここまで大袈裟にしなくても…。」
鮫島潔が立ち上がり怒声を上げるが
「言ったの言わないのと、後で言われ
ても困るので話し合いの証拠として
録画するのです。
こういう場合ごく当たり前の事です。」
そう言って銀縁メガネを人さし指で
クイッと押し上げて
「録画が嫌ならお帰りください、残った
方々との話し合いの結果、のちに家裁
もしくは裁判所からの出頭命令文が届
くでしょう。」
そう言って10秒待ちます、お出口は
アチラですと指差しカウントダウンを
始める。
鮫島は私達を見廻すが誰も席を立たない
のを見て力無く席につく。
「…9…10秒たちましたので録画を
開始します。
後、勘違いしておられる方がいるよ
うなので最初に1言言わせて頂きます
イタズラではなく犯罪ですよ。」
認識を改めて下さいとニコリともせず
無情に告げる八坂弁護士だった。
お読みいただけたら嬉しいです。




