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#70 倒れずの勇者は腹をクーッと鳴らす。


この間、流行り病になりました。

防御してても伝染るもんは伝染りますね。


遅くなりました。


宜しいお願いいたします。



 「言わなきゃ…駄目ですか…。」


 できればミリアに知られたくない。 

 勇者の通り名を知ったら、きっと気が付く。


「う〜ん、気になるのよね、深山さんにも

 お礼もしたいし…なにか問題でも?」


不思議そうに俺を見る茉莉花さんに、俺の

歯切れの悪い反応を見てちょっとムスッと

した顔のリエンヌ(ミリア)

ヤバい、何か勘違いされそうだ。

だったら怒られても良いから本当の事を

話そう!


「問題…は無いですけど…えっとですね、

 銀月の女神と…倒れずの勇者を見守る会、

 別名、梟の集いです。」


キョトンとした目で全員が俺見る。


「銀月の女神はわかるぞ、梟の集いもだ。

 だがな…」


そう言って、怖いと思ってしまう目線でヴァン

さんは俺を見る。


「「倒れずの勇者って…まさか!?」」


茉莉花さんとリエンヌ(ミリア)の声がハモる。


だよね、昨日の話に関係する事だから

倒れずの意味、絶対にバレちゃう。

ミリアに茉莉花さんとヴァンさんに

父さんと母さんが凄く俺を見つめてる。

他の方々も事情を知らないけど、ただ事では

ないと感じたのか凝視してくる。


「暴力は…駄目だけど…あの時って勝ったの?」


何か誇らしげな顔でニヤッとして俺に

聞く母さん。

当時、俺は謝るだけで理由を言わなかった。

好きな人(ミリア)が困る様な事はしたくなかったから。

今、理由はバレバレだもんな。


「勝ったか負けたかは分からないけど…俺は

 倒れなかったよ。」


あんな事を言う奴らに殴られて倒れるなんて

絶対に嫌だ。


「五対1ってだけじゃなかったんだな。

 粘りまくった…だから打撲傷が酷かっ

 たのか…」


父さんがポロッと一言。


父さん、ソレは言っちゃあイケない事だよ。

ミリアが心配しちゃうでしょ。


「嘘づぎ…ソゴに正座(ぜいざ)!!」


ミリアが鼻を真っ赤にして泣くのを抑えな

がら、直ぐ手前の床を指さして俺に言う。


「はっ、すいません!」


俺は速攻、秒速で正座した。


フングゥゥ、フングゥゥって唸りながら

泣くのを抑え呼吸を整え、ミリアは俺に

アノ時の事を聞いてくる。


「あの時、GYMでスパーリングして  

ボコボコにされちゃったって言ったよね。」


「はいっ、その通りでございます。」


ヤバい、ミリア怒ってる!? 


佐々本達とモメてボコボコになった俺は

次の日、部活で会ったミリアに嘘をついた。

ボコボコに顔を腫らした俺を見て、どうし

たのってミリアが心配してくれた。

本当の事を話したら、きっと困らしてしまう…

だから嘘をついた。


ウチの親はトレーニングGYMを経営していて

トレーニングの一環としてボクシングも

習っていると説明、コレは嘘じゃないし。


「昨日はスパーリングで自身の実力を知る

 ために頑張り過ぎちゃいました。」


見た目は酷いけど大したことないですよっ

てごまかした。


「嘘をついておりました、ごめんなさい。

 後、父さんにもごめんなさい。」


スパーリングの相手は父さんで、空よりも

遥かに高く、宇宙の果よりも遠い父の壁を

乗り越えてみろって煽られちゃって。

頑張ったけどボコボコにされたと、嘘を 

つきましたと父さんに謝罪。


えっ、お前マジ、そんな恥ずかしい事を

オレが言った事になってたのって父さん。


「うん、言ってた。」


父さんの問に返事をするように

ミリアはそう言って俺をジッと見る。

澄んだグリーンアイでジッと見てくる。


「ごめんなさい。」


ナンカもう、謝るしかないと心を込めて

俺はごめんなさいした。


「約束して…もう無茶をしないって…。」


ウルウルした目で俺を見つめるミリア。

俺は言われると思っていた言葉をかけられた。

アノ時から1年はたっているけど。

やっぱり心配させちゃったかぁ…。


「ありがとねムサシ(和真)、もう立って

 良いから。」


っと優しく声をかけてくれる茉莉花さん。


「こんな時は嘘でも良いから無茶しないって

 言ってやれ。」


いつの間にか戻って来てた柳監督が助言を

くれる。


「ごめん…無茶しません。」


「本当に!?」  


「ウグっ……。」


返事に詰まる俺。


ジト目で俺を見つめるミリア。


「勘弁してやれ、引けねえ時って

 もんもあるんだぜ。」


リエンヌ(ミリア)を諌める柳監督。


何故か母さんも、うんうんと頷く…。


ムサシ(和真)ちょっと良いかな、凄い勢いで閲覧と

 コメントが増えている。」


あまり増えると他からの注目をを集めるから

動画閲覧を止めて良いかなってヴァンさんに

言われる。


「ハイ、大丈夫です。」


俺がそう言うと、ヴァンさんはスマホで

誰かに連絡をとる。


「どうだった…間違いない、分かった…」


連絡が終わり、ヴァンさんはジッと俺をみて

一言。


「動画投稿者は佐々本勇気って名前だ。」


昨夜の時点でスマホの所有者名は分かって

いたが、もしかしたらスマホを他人が

操作した可能性もあった。


調べたらラビット社と取り引きしている

鴨志田食品工の…1年ちょっと前までしつこく

営業に来ていた佐々本賢治という男。

そして所有するスマホの使用者は息子の 

勇気という事が判明した。


「知ってる名前だなぁ、立場逆転だ。」


ちょっと恐い顔になっている父さん。

だよね~あの時、俺が理由を話さなかった

から付き添いの先生(陸上部の顧問)が父さんと母さんに

文句をボロくそ言ってた。

しかもアイツラも嘘をついて親が父さんと

母さんを総攻撃。

最後に現れた佐々本の父親が話を纏めて

喧嘩両成敗って事でウヤムヤにしたんだ。


「佐々本勇気の仲間たちも親も一緒に迎えの

 バスに乗っているそうだ。」


ヴァンさんと茉莉花さんはジッと俺を

見つめ続け、茉莉花さんが口を開く。


「何処まで殺り込めれば良いかしら?」


うっ、物騒な事を言う茉莉花さんに隣の

ヴァンさんは獰猛な笑みを浮べて俺に聞く。


「どうしたい、全力でサポートするぞ。」


制裁のさじ加減を俺の希望通りにして

くれると言ってる。

考えているとクーッと腹が鳴ってしまった。

まだちょっとしか食べてないし、眼前の

テーブルにある料理からニンニクの効いた

匂いが胃袋を刺激する。


「すまない、腹が減ってるよな。」


話はまた後でとヴァンさん。

そして茉莉花さんは、


「腹が減っては戦はできぬだからね!

 しっかり食べるのよ。」


と言われ、俺とミリアは自分達のテーブルに

戻る事になった。



午後2時26分



宜しいお願いいたします。

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