#62 細けぇ事は気にすんな!
お待たせしたでやんす!
応援ありがとうございます。
感謝感激ィィぃ〜でやんす!
エレベーターは17階で止まり
出るとだだっ広い廊下に出る。
ちょっと歩き、最初のドアに第1会議室と
表記されている。
古堤さんのゴンゴンと力強いノックに驚き
見入ってしまった私達。
「失礼します、お連れしました。」
古堤さんを先頭に私達は広い部屋に入った。
ぱっと見、会議室みたいだけど?
長机は全て後ろに寄せて片付けあり
イスだけ人数分を横2列
「やっと来やがったか。」
柳監督の野太い声が響く。
僕達を見て、柳監督はドドドォーっと
巨体を揺るがせ、勢い良く近寄って来た。
柳監督の手には数冊の冊子…薄いけど台本だ。
「ほいっ、受け取れ!」
僕から順番にマッチョメ
そしてお姫様抱っこ中のリエンヌがムサシの
分も合わせて2冊、柳監督から手渡された。
「おまえ達の席は前列だ、ほれ座れ座れ。」
4つのパイプ椅子が等間隔で並べられ
中央右が僕、リエンヌが左。
僕の右隣をマッチョメが座り
リエンヌ左隣りをムサシが座る。
後方で列中央に小角さん、リーンお姉ちゃん
小鳥遊さんが座っている。
「10分時間をやる、台本を読んでくれ。」
僕たちの正面に立つ柳監督がそう言って
近くにいるスタッフに
窓のカーテン全て閉じろと指示。
台本の表紙に
劇場版
ETERNAL✮LOVERS 星の旅立ち激闘編
告知PV用
そっとページを捲ると…
よぉ、聞いてくれ!
ETERNAL✮LOVERSが劇場版として
映画館で全国公開決定だ。
俺とリエンヌに王国騎士団Vs魔王軍&魔獸
そして、まだ出会えぬ仲間たちの激闘が
映画館で見れるぞ。(15秒)
コレが告知PV第一弾のセリフ。
次のコレが告知PV第二弾のセリフ。
国王 ボルト・サイオーン5世
「戦うしか…道はない!!」
第2騎士団隊長 サジエット・ラウンダー
「下る事は許されん、前進あるのみだ。」
ライト・サイオーン
「こんな使い方もあるぜ、ロングバイィン」
リエンヌ
「ソレを決めたのはアタイの意志だよ!!」
フォルマ・ダンガード
「まだだ、まだやれる事がある。」
ムサシ・ガンリュウ
【うむ旨い…ふぅ~馳走になった。】
マッチョメ
「えっと、これがフォレストビーの蜜だよ!」
12月25日シネマズ系列で全国公開。
映画館で待ってるぜ!(30秒)
原作小説もコミカライズも熟読しているから
どんな状況でこの言葉を発しているか、分かっ
てる。
簡単な説明は書かれているけどね。
短いセリフを読み終わり、僕が顔を上げると
右隣りのマッチョメから
「凄いドキドキする、大丈夫かな…」
理恵さん、場の雰囲気に飲まれちゃったかな。
他の声優陣もマッチョメとムサシが
やっと見つかったから、注目度アップなんだ。
だから何とゆうか…この空間て圧迫感あるよね。
だって、1階ロビーの時みたいな
お祭り騒ぎ的な感じじゃあ無くて…
真剣な雰囲気につつまれてるから。
「どぉしたマッチョメ?!」
柳監督がヌッと近づきマッチョメに話しかける。
ビックリしたのかマッチョメはヒャッと
小さく悲鳴を上げて、ガタッガタッっと
椅子を揺らして固まった。
「オイオイ、俺ってそんなに怖い?!」
柳監督は周りを見渡し
「オレはコ・ワ・イ・監督じゃないぞ!」
皆からの賛同を得ようとそんな事を言うが
「ビジュアル的に怖い部類に入ってますが?」
自覚ないのかしらと、強気発言の古堤さん。
「デカくてツルツルヘッドに黒サングラス」
オマケに黒作務衣に雪駄だし、せめて
サングラスぐらい外そうよって言い、半笑いの
リーンお姉ちゃん。
「ワシもグラサン外した方が良いと思うぞ。」
初顔合わせなんじゃから素顔みせんと
あかんじゃろって、笑い気味に言う小角さん。
「おいっ、ライトとリエンヌ
何か言ってくれよ?!」
古参メンバーからのイジリに僕とリエンヌを
味方にしようとする柳監督。
「もうすぐ10分経っちゃいますよ!」
良いじゃないですか、素顔見せるだけで
マッチョメの緊張取れるならと言うリエンヌ。
顔が笑ってる?
「小鳥遊さん達も柳監督のサングラス取った
顔見てないって。」
後ろの小鳥遊さん達の左に座る、子役の子達が
小鳥遊さんの俺も見てないなぁって呟きを
拾っての発言。
俺は古参の皆さんの監督イジリに、柳監督が
狼狽える姿を見て柳監督は善き人なんだと
感じた。
皆に慕われてなかったら、こんな感じの
イジリにならないもんな。
「すいません、私のせいで監督さんが
皆さんに「いや、すまん!!」」
マッチョメが謝罪途中に柳監督が割って
入る。
「すまん、やっと見つかったマッチョメと
ムサシに浮かれていた、悪いのは俺だ。」
制作に気がはやり、コミニュケーションを
疎かにしていた俺が悪いと言い、柳監督が
ペコリと頭を下げサングラスを取る。
サングラスのしたから、パッチリ二重の
大きな澄んだ瞳に長いまつ毛…強面から
有名なマヨネーズのキャラクターの様に
可愛らしい顔にジョブチェンジした柳監督。
「コレからよろしくな、マッチョメとムサシ!」
そう言ってにこやかに微笑んだ柳監督。
私は椅子から立ち
「はい、よろしくお願いします。」
と言ってペコリとお辞儀をして後ろを
振り向く。
ムサシも同じく、柳監督に挨拶して
後ろを振り向くと
「「よろしくお願いします!」」
マッチョメとムサシのハモリ挨拶が
バッチリと決まる。
「コチラこそよろしくね!」
僕のことはリーンって呼んでねっと言う
笑顔でフレンドリーな猫屋敷リーンさん。
「おうおう、緊張とれたようじゃのぉ」
良かった、良かったって優しい言葉をかけて
くれる大御所、小角明夫さん。
「僕も参加してそれほど経ってないんだ
よろしくね。」
と言ってにこやかに微笑んだ小鳥遊瑠衣さん…
の笑顔が引き攣る。
いつの間にかライトがマッチョメに寄り添うように
隣に立っている。
小鳥遊さんはライトから何かを
感じ取ったみたいだ。
チナミに小鳥遊さんの役は
サジエット・ラウンダー。
「わからない事があったら…俺に聞いてくれ!」
っと陰キャヘアーのワイルド王子モードで
ライトから言われる。
耳元で囁くなんて反則だよっ!!
私はプフゥープフゥーっと鼻息荒く呼吸をして
プルプル震える両足に力を込めて堪えきる。
「今日は告知PVの声合わせ、要は練習だ」
合同練習にしたのは親睦も兼ねての物だと
言う柳監督。
「てっ事で…1時間練習したら皆でランチだ」
そう言ってニマッと笑いサングラスを
掛ける柳監督。
練習の流れは仕上がっている動画を見ながらの
アフレコ。
私達が座る前方4メートル先の天井から
大きなスクリーンがウイーンと降りてきた。
告知PVの映像は宇宙から4色の流れ星が
交差しながら光り輝き、輝きが収まると
並び立つ4つの黒いシルエット。
同時に黒いシルエットが晴れて4人の姿が
現れる。
右からライト・リエンヌ・マッチョメ・ムサシ
それぞれが特有のポーズを取ったところで
映画化決定の告知をライトが入れる。
スラスラと淀みなく、映画化嬉しいだろって
感情がこもったナレーションが入る。
少し間を置いて告知PV第二弾が始まり
小角さんのアフレコが始まる。
戦うしか…道はない、短いセリフだけど
不安を感じ、覚悟を決めなくちゃ
いけないと思わせる声音。
次々とバッチリ決める皆にドキドキが
止まらない。
何の責任もなくマッチョメを演じた時とは
比べ物にならないプレッシャー。
ムサシも違和感なく決めて
私の番が来た。
「えっと、コレがフォレストビーのみちゅ…」
噛んじゃった、どうしよう。
ガチガチに固まった無言の私の左手をキュッと
握り締められる?!
「これは練習だ、まだまだ何十回も繰り返す。
他の皆もまだ満足してないぜ!」
私の手を握りそう言ってフォローを入れる
ワイルドライト
「ガチガチだなマッチョメ(笑)
練習だから1回や10回の失敗なんて
細けぇ事は気にすんな!」
そう言って、ガハハっと笑い飛ばす柳監督。
「キョドるマッチョメかわいい!!」
ギュッてしたいよとリーン。
「初々しいのう、デビュー当時を
思い出すぞい…」
小角さんも微笑む。
「大丈夫だよマッチョメ、本場だって
監督が気に入るまで何度でも
リトライするんだから…」
遠い目線で私を見るリエンヌ。
ムサシはドヤ顔で私を見てる…
私の心の中のマッチョメが拳を突き上げ叫ぶ。
ムサシをボコれと叫んでる!
小鳥遊さんからは何もなかった。
「次はリエンヌの告知PVから行くぞ!」
繰り返す練習に時間はあっという間に過ぎて
ちょっぴり遅いランチ時間が訪れる。
午後12時40分
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