#58 帰っておいで…
遅くなりスイマセンでやんす。
宜しくでやんす!
最上階の社長室に招かれた私達は
両親を交えて、契約の為の話し合いを
大っきなガラステーブルを挟んで始めた。
横一列に座るお父さん、お母さん、私、和真…
のお膝にリエンヌが鎮座…している。
契約手続きを始める際にムサシはリエンヌを隣の
席に下ろそうとしたが
「ヤーッ」の一言で動けなくなる。
ヴァンと茉莉花はムサシに問題なければ
そのままで契約を済ませようと提案。
そして、仕事内容と変動的就業時間の説明を
茉莉花さんに受け、書類を渡されて
「疑問に思う所はありませんか」
と問われたけど…私達姉弟は
「「契約に関しては母と父の判断に任せます」」
だって私達まだ未成年だからね。
面倒だから親に丸投げしちゃおうなんて
これっぽっちも思ってないよ…本当だよ?
そして私達4人、ライト・リエンヌ・
ムサシ・マッチョメは力を合わせ
夏休みの間に凍結していた多数のプロジェクト
の消化を目指す事に。
先ずは冬休み期間に公開予定していた劇場版
ETERNAL✮LOVERS 星の旅立ち激闘編
魔王軍撃退編でライトとリエンヌが魔王軍と
戦っていた時、遠く離れた場所で同じ様に
魔王軍と戦っていたムサシ・ガンリュウ
そしてマッチョメの戦いと皆の魔大陸への
旅立つまでを描いた長編映画第一弾の
アフレコが待っている。
無事に契約手続きも終わり一息なんだけど
リエンヌはムサシが大勢の人前で
大切な人だと宣言してからぽぇ〜っとしてる。
嬉しくてしょうがないのだ…
ちょっとイチャイチャし過ぎではないかと私は
思うのだけど、対面にいる茉莉花さんと
ヴァンさんは二人を見てニコニコと笑顔を
浮かべている。
ヴァンさんの横にいるライトは苦笑い。
お父さんはちょっと恥ずかしそうな困り顔で
いるのに、お母さんは羨ましそうに
「あら、若いって良いわね〜っ!」
私達も若い時はねぇとお父さんに
話しかけるけど、下を向いて縮こまって
動かない…そっとしておこう。
「失礼します、お飲み物をお持ちしました」
絶対赦さんぞウーマンの古堤さんが
アイスレモンティーを皆の前に置いていく。
薄切りのレモンが入っていて酸っぱそうだ。
「あれっ、霞さんは?」
僕は古堤さんと一緒にいると思ったらいない?
古堤さんはニヤッって口角上げて
「ムサシとリエンヌの間に余計な邪魔が
入らぬ様に表で見張りです」
ムサシはお気遣い、ありがたいですと
腿にリエンヌを乗っけたまま、ペコリと
頭を下げた。
古堤さんはマッチョメとムサシをジッと見て
左眉をちょいと上げると、私は古堤麗果と
申しますと挨拶。
そして貴方の事は一年ちょっと前から
リエンヌに教えてもらってたと驚きの発言。
リエンヌが足を捻挫しているから会社で
付きっきりでサポートしてたら
「控え室でやたらぽ〜っとして顔赤くしたり
難しそうな顔したり、後は待ち時間にお菓子を
食べなくなったり…様子が変だったから聞いて
みました。」
気分良くお仕事をしてもらう為にメンタルケア
するのも、マネジャーの勤めだからと言って
リエンヌに相談に乗りますよって話しかけたら…
「今まで弟の様に思っていた男の子が…
メチャクチャ格好良く見えて気になって…」
って教えてもらい、告白もされたけど
お友達からって言って断ちゃったどうしよう
どうすれば良いんでしょうかと相談を
受けました。
「お母さんにも相談したら今のままの接し方で
良いと思うよって…」
古堤さんは
「それで良いと思います。
焦らずゆっくりと二人の距離を近づければ
良いと思います。」
そうアドバイスしてから偶に惚気話を聞かせて
頂いてますと言う。
「良いご関係を築かれておられる様ですね
私も安心しました。」
満足気にニコリと微笑む古堤さん。
「今日の話し合いにも、麗果ちゃんと霞君に
サポートメンバーとして参加して貰うから」
茉莉花さんはそう言って頼むねと言うと
「資料は既にチェック済みです。
機材の準備セッテング完了しております!
後は…ヤルだけです。」
目をギラつかせた古堤さんは私の妹分に
恥をかかせた奴ら、絶対赦さんぞと呟く。
絶対赦さんぞウーマン再臨。
そしてヴァンさんが捏造動画の事での話し合い
を今日午後3時から始めると言い
「今日の話し合いに坂巻和真とご両親に
参加して頂きます!」
俺とミリアを見てニヤリと微笑むヴァンさん。
「富士中学校の校長と陸上部の顧問も参加よ!」
そう言って微笑む茉莉花さんの背後に
阿修羅像の姿が俺には見えた。
「ミリアと理恵ちゃんは別室でモニターを
見てちょうだい!」
クズ共に理恵ちゃんの顔を見せる必要は
ないからねって言う茉莉花さん。
先程から私達を名前呼びしちゃってるけど
良いのかなぁと、古堤さんを見て茉莉花さんを
見ると
「麗果は私の姪っ子だから大丈夫よ!」
って、聞いてないです。
私達がアイスレモンティーを飲み干すと
古堤さんが控え室に案内しますと言い、私達は
社長室を出る事に。
お母さんとお父さんはまだ話し合いがあると
ここで一旦お別れ。
社長室を出ると先程、腹パンとアイアンクロー
を喰らっていた男性…霞さんがいた。
「僕は霞幽士郎、今後宜しくお願いします!」
私達にペコリとお辞儀をして行きましょうと
促す。
ついて行くとエレベーター。
乗って二十階で降り、通路を歩くと…最初の
ドアに小角明夫様と書かれた紙が貼られて
控え室だと分かる。
一階で挨拶のあった猫屋敷リーンさんは4番目の
ドアに張り紙、小鳥遊さんは6番目のドア。
「以前は8番目のドアが僕で九番目のドアが
リエンヌだったんだ」
ライトの説明を聞きながら先に進む
霞さんの後をついて行く私達。
カチャリと後方で音がして声を掛けられる。
「待ってくれ、話がしたい!」
振り向くと小鳥遊瑠衣とマネジャーのお姉さん。
足早に近付いてくる二人の前に古堤さんが
立ちふさがる。
「何の用ですか? 私を通してからにして
もらえますか!」
古堤さんが俺とミリアを守ってる、だけど…
「すいません古堤さん、俺からも話をしたいと
思っていたので良いですか!」
俺のお願いにちょっと考える古堤さん…
「通路じゃ何だから取り敢えず控え室に
行きます」
そして私達の控え室で話し合う事になった。
小鳥遊さんはお姫様抱っこされて、ぽあぁんと
しているミリアをチラチラ見ている。
歩くこと数秒、15番目のドアにLOVERS様…
恥ずかしすぎるけど、間違ってない。
何とも言えない顔をして小鳥遊瑠衣は小さく
呟く。
「まだ…諦めない」
ガチャリとドアを開けるとかなり広い部屋。
テレビで見る芸能人の控え室そのまんまで
メイクする場所が4つ連なり、右端に10センチ
高くなった8畳のお座敷…大っきなちゃぶ台に
冷蔵庫に電子レンジ。
50インチのTVにWi-Fiのルーター。
お座敷の窓のから不忍池と上野の公園が
見えて眺望が良い!
「上がって下さい」
雷兎君の声でハッと気が付き私はお座敷に
上がる。
小鳥遊姉弟もお座敷に上がり、ちゃぶ台を前に
座る。
対面にミリアを抱えた和真が座り、耳元に小さく
囁く
「ミリア、帰っておいで…大事な話があるよ」
ミリアはまだトリップ中だったんだ。
午前10時45分
仕事は忙しいし酒ばっか呑んでるし
スイマセンでやんす(_ _;)
今後も宜しくでやんす!




