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鬼退治はダンジョンで~人生の穴にはまった俺達は、本物の穴にはまって人生が変わった~  作者: JUN


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無限増殖

 部屋へ入った直後にハルが傘を掲げてバリアを張る。

 それから俺達はおもむろに敵を見た。くねくね、ぬるぬるとしたヒトの胴体3人分ほどの太さの体で、本体の高さは2メートルほどか。上部には8本の3メートルほどはある触手がうねっている。

「何、あれ?」

「食べられそうにはないわねえ」

 イオとチサが嫌そうに言い、ハルは、

「何あれ、ねえ、何?物凄く気持ち悪いよ!クラゲか何かかな?」

と後ずさりしたそうにしながら言う。

「クラゲ?だったら、中身はほぼ水かしら」

 言って、イオが止める間もなく飛び出して行く。

 そして、体を強化して素早く触手をさけて接近すると、ズバッと2つに切った。

 それは2つに分かれ、ふにゃりとした──と思ったら、2つになって復活した。

「なんでよー!?何なのよお!!」

 叫んで、イオは飛んで来た触手を避け、傘の下へ戻って来る。

「ヒドラだな。何と言っても有名なのは、その再生力だ。切っても死ななくて、別の完全個体として再生する。それを利用して色んな実験や薬品に使われる。例えば──」

 俺が説明を始めたが、その辺で遮られた。

「わかった。厄介そうな奴だってことはよくわかったわ」

 イオは言って、

「みじん切りにすれば流石に死ぬんじゃない?」

と飛び出そうとするが、触手が伸びてバリアに当たった。

「触手は体長の何倍にも伸びるのと、筒状になった体の上のところに口がある。それから、触腕にはとげがあって、麻痺毒を持ってるよ。

 ヒドラならな」

 言った途端、イオもチサもハルも俺を見た。

「危なかったのね」

「どうやればいいんだよ、そんなもの!」

「焼く、かしらあ?取り敢えず、切るのは無しよねえ」

 そうして、ヒドラらしきものに目を戻し、それを見た。

「あ」

 こぶのような、芽のようなものがで来たと思ったら、そこがぐんぐん大きくなり、ポロリと外れた。

「増えたわね」

「まあ、驚いたわ」

「切ってないのに!?シュウ、話が違うよ!?」

 ハルが喚く。

「ああして株分けするように増えて行くんだよな」

「なに、呑気に言ってるんだよ!どんどん増えて行くよ!?鼠算式に増えるよ!?」

 確かに、知っているヒドラなら、こんな増え方はしない。やはり、似てはいても別物なのだろう。

「よし。焼こう」

 部屋に、うじゃうじゃとヒドラが溢れるのは流石に困る。

 俺は手当たり次第にヒドラに向けて火の球を放ち、燃やした。

「ふう」

「何でひとつだけ残してるんだよ!?」

 魔槍を下ろすと、ハルが耳元で騒ぐ。

 それにチサがにこにことして答えた。

「シュウだものねえ。麻痺とか再生とか気になるんでしょ」

「当たり!」

「当たりじゃないわよ!」

 イオが反対側の耳元で喚いた。

「まあまあ」

 俺は傘の下から出た。その途端に触手が襲い掛かって来るが、それに風の刃を撃ち込み、先端を切断する。

 流石に小さすぎて、再生はしないか、時間がかかるらしい。それを待たずに、その先端部分を凍らせる。

 次に来た触手には火を放ち、再生の時を待ってじっと観察する。

 が、グイッと首の後ろを掴んで傘の下へと引き戻される。

「観察はいい加減にしなさいって言ったでしょ!?」

 イオが鼻息も荒く言い、ハルは胸を押さえて大きく息を吐いた。

「もう、いいかな」

 俺はヒドラに向けて火を放ち、燃やし尽くした。

 そして凍り付いた触手の先端部分を拾う。

「どうするんだよ、それ」

 ハルが嫌そうに訊くのに、俺はワクワクとして答える。

「成分を分析して増やしたら、麻痺毒爆弾ができるんじゃないか?たくさんの魔物に囲まれた時とかに便利じゃないかな」

 たくさん分裂したので、魔石もたくさん転がっている。

「腰が痛くなりそう」

 言いながら、俺達は魔石を拾い集め、親株のヒドラが残したポーションも拾った。

「何か、色が違うな」

「カウンターに出して、結果を待たないとわからないなあ」

「ヒドラだからあ、分裂するとか?」

「怖いわよ。切断された腕がもう1人の自分になるとか嫌よ」

 言いながら残りのものも拾い集め、奥へと進んだ。

 そこには一段高くなったスペースがあり、石筍のようなものがそびえ立っていた。

「何だ、これ?」

 それを囲んで、しげしげと眺める。

「あ。よそのダンジョンで見付かってる、あれだ。5階とか10階とか毎に、1階とつながってるエレベーターみたいなものがあるって、教習所で聞いただろ」

 言うと、3人も「ああ」と言いながらそれをじっくりと見、触った。

「どういう原理だ?テレポートみたいなものか?どうやったら人体みたいな複雑なものを違う場所に転送できるんだろう。興味深いな」

 俺はワクワクして、それを観察した。てっぺんに窪みがあり、魔石がはめ込めるようになっている。

「魔石を置く代わりに魔力を流してみたらどうなるんだろうな」

 俺達は顔を見合わせ、石筍を囲んで固まった。

「行くぞ」

 窪みに指を置いて、魔力を流してみた。


「うわ!?」

 辺りは一瞬のうちに、ダンジョン入り口の風景に変わった。


 




お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

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