変わる風景
家を出て協会へと向かう。
今までは何の変哲もない住宅街で、近くに墓地があるせいか、静かな所だった。
それが、探索者協会の支部ができ、隣は探索者向けのマンションに変わり、向かい側には武具屋や大手ドラッグストア、スポーツ用品店、弁当屋が並び、自動車教習所は移転し、跡地にはレストランと大手衣料品店と理容店が入ったし、近所にあったスーパーもここに移転して売り場面積を広くした。
急に人口が増えて騒がしくなりはしたが、便利にはなった。
そんな急激に変わって行く途中の町内を横目に協会へ入ると、探索者がそこいらにうじゃうじゃいる。
ダンジョンの入場は24時間いつでもよく、協会も24時間対応している。
協会に更衣室はあるが、混みあう事もあるし、その時は待たなくてはいけない。なので俺達は自宅で着替える事にしているし、イオ達の入るマンションの探索者達もそうしているようだ。
「ちょっと減ったかな」
見回して言う。
「まあ、24時間出入りできるからね。最初は何となく皆朝のうちに入ってたけど」
ハルが言う。何となく皆それまでのタイムスケジュールに従って、「朝出勤して夜に帰る」という事をしがちだったが、だんだんとばらけて来た。
混まないように夜に来る、という人もいれば、副業や放課後のアルバイト代わりに夕方以降に来る人もいるからだろう。
それに、他にも数カ所、世界中でダンジョンができたのも大きな理由だ。
日本でも島根県や北海道、和歌山県にもでき、解放され始めたので、そこに分散されている。これまでは国内にはここ1カ所しかなかったので、全国の探索者がここに集中していたのだ。俺は近すぎるにしても、遠くの人はこの近くに引っ越したり宿泊しなければならず、不便だったに違いない。
自動改札機そっくりなゲートを通り抜け、そばに立っている警備の人に軽く目礼して通路を進んでダンジョンへ向かう。
「刀の依頼、来週ねえ。楽しみだわあ」
温泉とワインと海の幸、遺跡と博物館の見学、鍛冶の見学と体験を予定しているほか、できて、解放されたばかりの島根のダンジョンへも行ってみるつもりだ。
「島根のダンジョンは、鉱石がでるらしいね」
ハルが言うと、イオが勢い込む。
「それってつまり、宝石もでるのよね」
出るかどうかはわからないが。
「まあ、宝石も元は鉱石だから、運次第なのかな?」
炭素原子の結合数と構造を変えれば、炭も鉛筆の芯もダイヤだ。
「フフフフ。チサ、がんばろうね!」
「ええ!自分でダイヤを掘り出せたら最高だわあ」
「まあ、それはともかく、そろそろだぞ」
一言注意を入れる。入り口付近の魔物など、群れで出たところで困らないくらいには俺達も慣れたが、油断は禁物だ。
「そうだよ。ほら、気を引き締めてね!」
ハルはそう言いながら、注意深く階段に足をかけた。
「でも、温泉は楽しみだなあ」
呟くその一言が台無しだ……。
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