その手に残るものは何もない
とてもきれいな石を見つけた。
それは七色に輝いていて、
僕はそれを空にかざしながら夢中で眺めていた。
気がつくと石は輝きを失って、
それを見つめていた時の純粋な気持ちまで失って、
僕はそれを投げ捨てた。
そうして歩き続けてきた。
ふと立ち止まって、後ろを振り返ってみると、
そこにはたくさんの光り輝くものたちがあった。
僕は思わず手を伸ばして、
けれど決して届くことはなかった。
自身の手を見下ろしてみると、
そこには何もなかった。
かつて手にしていたはずのもの
あの時手放さなければ今もここにあったかもしれないもの
すべて捨ててきたのは僕だった。
この手に残るものは何もない。
空っぽのまま、ただ歩く。