片恋慕
僕目線
「好きな人がね、出来たんだ。」エアコンの壊れた僕の部屋で、幼なじみの君はぽつりと言った。「へえー。」できるだけ興味無さそうに返事をする。そして、お互い沈黙。僕はこの空気感が嫌で、「どんな人?」と問いかけた。「ずっとそばにいた人。」と俯きがちに言う君。「そうなんだ。」そう言いながら、そんな人居たんだと思ったら悲しくなってきた。「あとね、私の会話に必ず相槌を打ってくれるの。」少し恥ずかしそうに話す君。「素敵な人だね。」僕はなんとか笑顔を作り言った。「だからさ、私の恋、応援してよ。」そういう君の笑顔はいつもよりとても可愛いくて、見とれてしまった。
私目線
「好きな人がね、出来たんだ。」エアコンの壊れた君の部屋で、私はそう告げた。「へえ。」君は興味無さそうに返してきた。私はその反応が少し悔しくて、黙った。そうしたら、「どんな人?」と君が話しかけてくれた。私は考えるよりも早く、「ずっとそばにいた人。」と答える。直球すぎたかな?そう思いながら君の方を見た。「そうなんだ。」そんなに悲しそうな顔しないでよ。私まで悲しくなる。だから無理に笑顔を取り繕って、「あとね、私の会話に相槌を必ず打ってくれるの。」そう言った。バレたのではないかと、恥ずかしくなる。「素敵な人だね。」そんな言葉が欲しいんじゃない。そんな笑顔にならないで。だったら、もういい。「だからさ、私の恋、応援してよ。」辛い気持ちを隠すように満面の笑みで言うと、君はなんとも言えない表情をしていた。