入学支援(筆記)
サブタイトルが「入学支援」になってますが「入学試験」では?今日は待ちに待った入学試験の日。
今日まで、ギルドで簡単な依頼をほとんど毎日受けたりして過ごしていた。
その結果、アンズの所持金は入学金を除いても十分な額を貯める事ができた。
依頼を受けて、魔物討伐に行く際には、アンズに魔法を教えてあげたので、アンズの入学試験もたぶん大丈夫だと思う。
でも、アンズは心配みたいだ。
「うー、緊張する、大丈夫かな?
名前書き忘れないかな?
魔法ちゃんと撃てるかな?」
アンズはかなり緊張している様子だ。
いつもは可愛らしい笑顔だけど、今日はどこか余裕のない表情をしている。
昨日の夜もあまりちゃんと寝付けなかったようだし。
私も、アンズが心配になってきた。
「アンズ、大丈夫だよ!
いっぱい、魔法だって練習したし、名前だってちゃんと確認さえすれば、アンズなら何の心配も無いよ!」
これまでの試験に向けての練習をアンズに思い出させるように言う。
そうすると、アンズも少し落ち着いてきたのか、小さく深呼吸をしていた。
「ありがと、少し、落ち着いたかも。
そうだよね、あれだけ頑張ったんだし、大丈夫だよね!」
自分に言い聞かせるように言っているのが少し不安だが、ここは大丈夫だと信じよう。
試験は筆記と実技の二つ行われる。
午前に筆記で、午後に実技だ。
筆記は各30人くらいに分かれて行われ、私とアンズは同じ部屋に分けられた。
まぁ、同じ部屋だからといって会話とかができるわけではないのであまり、関係ないのだが。
試験用紙が机の上に置かれており、各々好きな席に座っていいそうだ。
私とアンズは特に離れる理由も無かったので隣同士に座っている。
皆が席につき、試験開始の時間になったころ、試験官の開始の合図で全員が一斉に用紙を表に向ける。
表を向けると一番上に名前を記入する欄がある。
私は「アンズが名前を書き忘れないように」と祈りながら、自分の名前を書き入れた。
試験内容は思った以上に簡単でスイスイと回答欄に答えを書き入れていくことができた。
「すごい簡単ー」と思いながら、解き進めていくと、歴史について質問が出てきた。
それらの歴史に関する問題は殆ど分からなかった。
しかも、歴史に関する問題が思ったより多い。
4000年前のことなら分かるけど、そんな問題は一切出てこない。
ど、どうして?
問題を全て解き終わり、用紙をしっかりと見直す。
よし、名前はちゃんと書いてある!
でも、空欄が結構多い・・・。
もちろん全部歴史に関する問題。
うーー、アンズの心配してる場合じゃなかった・・・。
試験官の人が終了の合図をし、その声で皆がペンを置く。
試験用紙はそのままで、その用紙に触らないよう試験部屋から皆出て行く。
「ルーちゃん、どうだった?
私は最後にちゃんと名前書いてるか確認したし、問題も9割以上解けたから、多分大丈夫だと思う!
後は実技だけ、頑張ろうね!」
アンズはなかなかいい結果出せそうだな。
朝の不安もどっかいっちゃてるし、
「私は・・・あんまり、だった・・・」
「えっ、ルーちゃんが?」
「うん・・・歴史が全然、分からなくて・・・」
「あー、なるほど、確かにあの問題だとルーちゃんには難しいかもね」
図書館とか行って、歴史についても勉強しておくんだった。
「元気だして、実技で頑張れば大丈夫だよ!」
朝と違って私の方が励まされてる・・・。
よし、アンズの言う通り、実技試験頑張ろう!
「はい、ルーちゃん」
アンズが私にサンドイッチを渡してくれる。
ここは学園の中庭、筆記試験と実技試験の間の時間は一時間ほど休憩なのでお昼ご飯を食べに来ている。
この中庭は、今は受験生達が自由に使っていいようになっていて、多くの人がここに来て私たち同様、お昼ご飯を食べに来ている。
私たちはベンチに横並びに座って、その間にバスケットを広げている。
バスケットの中身はハムや卵、野菜なんかのサンドイッチがたくさん入っている。
もちろんアンズが作ってくれた。
今日はどこかのお店で買っていこうと提案したんだけど、料理すると気が紛れるからと朝から作ってくれ
た。
いつも、美味しいご飯をありがとう。
アンズから差し出されたハムのサンドイッチを受け取って、お礼を告げてから口に運ぶ。
いつも通りおいしい!
「アンズ、朝の時よりかなりおちついてきたね」
「うん!さっきとは違って実技は結構自信あるからね!
それに・・・この指輪があるから・・・」
アンズは私があげた指輪を押さえながら、ぽつりと呟いた。
少し頬が赤い気がするけど、大丈夫かな?
緊張している様子はないから、まぁいいか。
「ルーちゃんも実技なら大丈夫だよね?」
「うん!多分大丈夫!
筆記試験の時みたいな残念な結果にはしないよ!」
もうすぐ休憩が終わりとなった。
私たちは昼ごはんを食べ終えてからは、他愛無い話をして時間を潰していた。
実技試験は担当の試験官との模擬戦だ。
この模擬戦には勝たないと不合格というわけではなく、別に勝たなくても見込みがあれば合格になるらしい。
剣や槍といった武器は学園側から模擬戦用のをかしだしてくれるらしい。
私がアンズにあげた指輪型の魔道具といった類の装備品は、学園側に使用を申請していれば、問題ないらしい。
もちろん、アンズもしっかり、申請して許可はもらっている。
周りの人たち、おそらく剣なんかを使って体を動かすであろう人たちがウォーミングアップに体を軽く動かしてる。
私はどうしよう?
剣や槍といった武器も使えるけど、アンズと同じように魔法でいった方がいいかな?
んー、やっぱり魔法でいいか!
魔法で試験を受ける事にした私は、アンズと共に実技試験の行われる場所へと向かった。