ダンジョン攻略 ドラゴンじゃなかった
アンズとクレアの祝勝会をしていると、突然サーシャがため息をついた。
あれ?私また何かした?
でも今は何もしてないよ?
だってご飯を食べてるだけだもん。
そんなことを思いながら口に入れたものをもぐもぐとしながらサーシャに視線を向ける。
「……魔物が来ました」
私の視線に気づいたサーシャが答えてくれる。
そっか魔物か。
やっぱり今回は私、なにもしていなかったね。
さっきのため息も私に呆れてとかじゃなくて、魔物が来て面倒とか思ったからだったみたい。
「それなら私が倒すよ」
もぐもぐとしていたものを飲み込んだ後、そう提案する。
ちゃんと飲み込んでからしゃべらないと、またサーシャに怒られちゃうのでそこはしっかりとしておく。
それと今は祝勝会の最中だし、私が倒してもいいよね?
倒す前に念のために確認だけしておくけど。
「はい。お願いします」
そう言いながらサーシャが視線を向けた先に私も視線を向ける。
するとこちらに三匹のスライムがぴょんぴょんと近づいてきた。
「ファイアーランス」
向かってくる三匹のスライムに対して大きめの炎の槍で倒す。
「無詠唱、それにあの威力、流石ですね。
今更それくらいでは驚きませんが」
私のスライム退治を見ていたマリンから称賛の声を貰った。
「二人の祝勝会だもんね。魔物なんかに邪魔はさせないよ!」
胸張りからのドラ顔でそう告げる私。
「くすっ。ありがとう」
「くすっ。ありがとうございますわ」
そんな私を見て、アンズとクレアの二人はクスリと笑った後に私の頭を撫でながら「ありがとう」と言ってくれた。
二人と見とっても笑顔だし良かった。
「まかせて!何が来ても、この祝勝会は守ってみせるよ」
胸張りとドヤ顔のままでそう宣言する。
その言葉通り、何が来ても私はこの祝勝会を守るつもりだ。
来たのがさっきみたいなアンデットさんでも容赦なく「区間消滅」で倒してやる!
ドラゴンとか魔王とかでも同じ、すぐ倒す。
あ、でもドラゴンは「空間消滅」せずに首を綺麗に落として倒して素材にした方がいいかな?
そうすれば祝勝会にドラゴンのお肉が並ぶし。
そう考えると美味しいドラゴンとか来てくれないかなぁ。
「……何か物騒なことを考えてませんか」
「き、気のせいだよ!ただ私はこの祝勝会を守ろうと思ってるだけだよ!」
アンズとクレアからはお礼の言葉を言われたけど、サーシャからは怪訝な目で見られた。
うっ。相変わらずサーシャは鋭い。
でも別にいいじゃん。
ドラゴンなんて首を落とせばすぐだし、美味しかったら皆も嬉しいでしょ?
そんなことを考えているとサーシャからまた魔物が来たとの声がかかる。
「また魔物が来ました」
もしかしてドラゴン!
美味しいドラゴンが来たのかな!?
これってフラグ回収って言うんだよね!?
美味しいドラゴンが来たと思って、内心テンションが上がっていたんだけど、どうやら違うみたい。
「またスライムです。数は多いですが」
「なんだ、ドラゴンじゃないんだ……
またスライムかぁ。
もういいよ、スライムは。
食べても美味しくないし。
さっさと倒そう。
「……ドラゴン?」
あ。声に出してた。
サーシャが私に怪訝な視線を向けて来るけど、気づかないふりをしてスライムを倒す。
「あースライム多いなー。大変だなー」
「はぁ」
そんな私を見てため息をつくサーシャ。
だって仕方ないじゃん!
フラグ回収ってやつだと思ったんだから!
これはきっと来てくれなかったドラゴンが悪いんだね!
それとスライムも!
だから私は悪くないもん!




