ダンジョン攻略 余計な言葉
サーシャは私の疑問にすぐに答えてくれた。
「まず、あのアンデットは指揮官タイプだと思います。ですので攻撃はあまり得意ではないのかもしれません」
そっか。自分は指揮して他の人に戦ってもらうタイプか。
て、あれ?
でも誰もあのアンデットさんの仲間居ないけど?
近くに居ないなら意味ないよね?
そう思ってキョロキョロと周りを見てみる。
すると、私の隣で解説してくれていたサーシャのほうからため息が聞こえてきた。
「ルー様は、さっき何をされましたか?」
そんなサーシャの質問に首を傾げながら考える。
アンデットさんとあってからだよね。
さっきしたこと、えっと、防御魔法?はサーシャは知らないはずだし……。
あとは、空間固定とか?
「あ!」
サーシャの言いたいことに気づいて思わず声が漏れてしまう。
そっか、さっきまでアンデットさんはいっぱい魔物を呼び出してた!
それがきっと仲間なんだ。
だから指揮官タイプなのか。
自分は魔物を呼び出して、戦いはその魔物たちに任せる。
成程。
「そうです。だから、あまり自分が戦うことは慣れてないのかもしれません。
先ほどから防戦一方なのもそのせいかと。
防御魔法は流石に得意そうですが」
サーシャの説明で納得した。
いつもは召喚魔法ばかり使ってるから攻撃魔法は得意じゃないんだね。
防御魔法はこういった時、自分の身を守る為かな?
確かに得意不得意は誰にでもあるよね。
今まで攻撃魔法を殆ど使ってなかったんじゃ仕方ない。
それだったら、召喚出来ないようにしたのはちょっとかわいそうかな?
でも、流石にあの状態だと、アンズたちには厳しすぎるし。
むむむと悩んでいると、サーシャが声をかけてくる。
「気にすることありませにょ。
それに、今の状態でも二人にとっては強敵なのは変わりありませんから」
そう、かな?
サーシャが言うならそうだね!
「それじゃあ、何であのまま?」
ひとつの疑問は解決できたけど、まだ疑問に思うことはあるので、さっきと同じように訊いてみる。
するとさっきとは違い、少し困った顔で口を開くサーシャ。
「それは、わかりません。
もしかしたら、ですが、氷を壊す暇がない、のかもしれませんが……そうは感じませんし……」
アンデットさんが未だに所々氷におおわれているのは、サーシャにも分からないみたいだ。
本当にどうしてなんだろう?
確かにサーシャの言う通り壊そうと思えば壊せるはず。
だって、アンズも不意打ちを狙っての行動だろうし、一度足止めが出来たんだから満足のはず。
きっとアンズもすぐに壊されると思ってたと思う。
でも、まだ氷はそのまま。
きっとアンズも疑問に思ってはず。
もしかしたら、アンズにそう思わせるためとか?
流石に違うかな?
じゃあ、やっぱり気づいてないのかも。
頭に血が上ってるときって周りが見えなくなるし、きっそそうだ。
私の中でそう結論付ける。
そしてふと思った。
これって、教えてあげた方がいいかな?
ずっとあのままだと可哀そうだと思った私はアンデットさんに教えてあげることにした。
「あのー、アンデットさんー!氷ついたままだよー!」
魔法が飛んでたりと少し騒がしかったので大声でアンデットさんに伝える。
そうすると、次々と魔法を打っていた二人の手が止まって驚いたように私の方を向いてきた。
よそ見したら危ないよ?
そんな私の思考を無視してサーシャが私に呆れたように話しかけてくる。
「ルー様。どうしてわざわざいうんですか?」
「だって、あのままじゃ、可哀そうじゃない?」
素直に思ったことを伝える。
「どこも可哀そうには見えませんが……」
「だって、気づいてないんだよ。氷ついてるの」
「は?気づいてない?」
「うん。きっと怒りで忘れちゃったんだろうね。さっきアンズが氷をつけたの忘れちゃってるんだよ」
サーシャにさっき私が結論づけたことを軽く説明する。
きっとこれでサーシャも私の言ってることを理解してくれると思ったんだけど、
「はぁ」
何故か額に手を当てため息をつくサーシャ。
あれ?
何で私また呆れられてるの?
呆れられるようなとこなんてどこにもなかったと思うけど。
「あのですね、たとえそうだとしても教える必要なんてありませにょ」
「でも、身体に氷がいっぱいついてたら寒いかもしれないし、特に足が地面と氷でつながってるからこけちゃうかもしれないじゃん」
それは可哀そう。
「……戦闘中に心配することではありません。そうなってもあの氷はアンズがつけたものなので、それにハマったと考えが出来です」
あ、そっか。
そういう考えもあるか。
あれもああいう攻撃だって。
アンデットさんが忘れてて気づかなかったってことに、可哀そうと思ったからそうは考えられなかった。
そうだとしたら、言わない方が絶対良かったかも。
だから二人ともこっちを驚いた顔で見たのか。
二人の邪魔しちゃったなぁ。




