ダンジョン攻略 私だよ
とりあえず、サーシャに魔力を解放するのは止められたので、話して理解してもらう。
「ホントに私が影を倒したんだよ!信じて!サーシャじゃないよ!」
必死に訴えても全然信じてくれる様子はない。
どうして!?
「まだ、そんな世迷言を言うのか!
そんなに言うなら証明して見せろ!」
そうローブの男が叫ぶと影の魔物がこちらにゆっくりと近づいてくる。
「えっと……倒して、いいの?」
男とサーシャの顔を交互に見ながら問いかける。
「ふっ」
「はぁ」
それに対して男は鼻で笑い、サーシャは呆れたようにため息をつく。
男の人の反応は何となくわかる。
私がまだ嘘を言っていると思っているから馬鹿にして鼻で笑ったんまろう。
失礼だけど、まだ分かる。
でも、何でサーシャはため息吐くの!?
私、呆れられるようなことなんて何も言って無いよね!?
そんなサーシャに文句も言いたいけど、今は目の前に迫ってきている魔物に集中する。
「それじゃあ、『空間消滅』!」
男の人を巻き込まないように気をつけながら魔法を使う。
発動と同時に魔物の姿は消滅した。
ふぅ。
空間消滅を人一人分まで狭めて正確に使うのは、結構集中しないと出来ないので、ちょっと一仕事終えた気分だ。
慎重にやらないと、空間が歪んで危ないからね。
「なっ……!?」
私が額の汗を拭うような動作をしている時、男の人が驚きの声を漏らしたのが聞こえてくる。
「これで、証明できたよね!
さっきも私が倒したんだよ!
……あっ、ごめん……」
男の人もわかってくれたと思って最初は胸を張る。
だけど、そもそも他人のモノを勝手に壊しちゃったのを思い出して謝る。
だけど、驚いているのか返事が帰ってこない。
もう一回ちゃんと謝った方がいいかな?
「えっと、私が倒しちゃいました。ごめんなさい」
頭を下げて謝る。
するとサーシャが私の頭を上げるように促してくる。
「ルー様、別にあんな奴に頭を下げる必要ないですよ」
あんな奴って。
失礼だよサーシャ。
「ば、馬鹿な、こんな子供が……我の影を……二度も?」
私たちの言葉が全く届いてない男性。
どうしよ?
「ふ、ふざけるな!!!」
暫くして急に叫びだす男性。
び、びっくりしたぁ。
急に叫ばないでよ。
「な、何だその魔法は!
我の影がそんな簡単にやられるわけないだろ!」
そう叫ぶと男性は次々とさっきの影の魔物を召喚していく。
最終的に十体くらいかな?
どうやら男の人はすごく動揺してるみたい。
「行け!あいつを殺せ!」
えっ!
何で!?
男性の指示で十体の魔物が私に向かって近づいてくる。
「サーシャ、どうしよ?」
魔物たちはゆっくりとしか近づいてこないのでサーシャに相談する。
「……倒してください」
「えっ!?いいの!?」
「はい」
「あの人、もっと怒るんじゃ?」
「大丈夫です。気にしないで倒してください」
サーシャが言うなら、
でも、本当に大丈夫かな?
少し不安はあるけど、サーシャの指示なので倒すことにする。
先程と同じように「空間消滅」を使って全ての魔物を消滅させた。
「なっ!」
またまた驚いてる男の人。
本当に、大丈夫?
「き、貴様!」
ますます怒気を高める男性。
さ、サーシャ!
ダメじゃん!
サーシャに抗議しようとしたところで、男性が更に影の魔物を召喚してきた。
しかも、今度は影の魔物だけでなく、他にも違う魔物が混ざっている。
あれは、ゾンビ、かな?
「ひっ」
後ろから小さく怯えるような声が聞こえてきたので張り合ってみると、身体を震わせてるクレアがいた。
「クレアちゃん、大丈夫?」
「は、はい……」
顔を青くして震えるクレアにアンズが声を掛けている。
クレアは大丈夫と言っているけど、全然大丈夫に見えない。
「その、ああいうのは、苦手でして……」
ああいうのっていうのは、ゾンビのことかな?
クレアってアンデットとか、ダメなんだ。
それなら、早く倒してあげたいけど……。
サーシャの方をちらっと見る。
「倒して大丈夫ですよ。
本当はあいつらもクレアたちに相手をさせて、レベルアップに使いたいんですが、あの影は厄介なのでお願いします」
視線だけで私の意思を理解してくれたサーシャが了解をくれる。
それじゃあ、クレアのためにもさっさと倒しちゃおう。
でも、一応アンズたちの分も置いておいた方がいいのなな?
ダンジョンにきたそもそもの目的も、二人のレベルアップだし。
でもなぁ、アンズたちの倒せない影だけ倒すのはすごく大変だ。
だって、ゾンビと入れ混じっているんだもん。
それに、クレアはゾンビが苦手みたいだから、できれば倒してあげたい。
よし!決めた!
やっぱり、全部倒そう!
そう決断した私は先ほどと同じように「空間消滅」を使い、影の魔物とゾンビを消滅させた。
今日は「空間消滅」を何回も使ったから疲れるな。




