ダンジョン攻略 ローブの男
とりあえず、今は目の前の謎のローブの人物に集中することにする。
「あの、あなたは……」
「……」
クレアが声を掛けているけど、返事は返ってこない。
確かにこれはちょつと怪しいかも?
だって、普通は声を掛けたら何か返してくれるよね。
でも、盗賊とかでも何かしらは返してくれると思うけど、もしかして聞こえてない?
クレアは結構大きな声で話してると思うけど。
ぞんな事を考えていると、ローブの人物が何か言葉を発した。
「—————」
だけどボソボソと言っていて聞こえない。
でもあれ、魔法の詠唱じゃないかな?
言葉に魔力が乗っている気がするけど、気のせいかな?
首を傾げながらそんな事を考えていると、ローブの人物が魔法を放った。
あ!やっぱり魔法の詠唱だったんだ!
「!?」
「!?」
突然魔法を使った姿を見て、アンズとクレアが警戒を高めて、魔法の詠唱をする。
ちらっと見たらマリンも警戒を強めていた。サーシャは何も変わってなかったけど。
「行くがよい。我が僕ども」
ローブの人物の魔法は、召喚魔法の類だぅた。
そして、その魔法で現れたのはさっき私が倒した影の魔物。
その魔物はローブの人物の命令に従って、こちらに歩みを進めてくる。
もしかしてさっきの魔物もこの人が呼び出したものだったのかな?
それだったら倒したらダメだったのかも。
他人のものを壊すのはいけないもんね。
知らなかったとは言え、壊してしまったんだから謝ったほうがいいよね。
「!?」
「!?」
私がどう謝ろうと考えている反面、アンズとクレアが影の魔物の姿を見て、驚き、詠唱を止めた。
マリンも驚いていたけど、何故かサーシャは納得のいったような顔をしていた。
皆が驚いている隙にアンズ達の前に出て、謝ることにする。
「あの、さっきはその魔物倒してごめんなさい!」
ちゃんと頭を下げて謝る。
そうすると、魔物の歩みはその場で止まった。
「ル、ルーちゃん!?どうして謝ってるの!?」
驚きに満ちた顔でアンズが訊いてくる。
何でって、、他人のものを壊したら謝るのは当たり前でしょ?
「確かにそうだけど、あの魔物は私たちを襲って来てるんだよ?」
「でもそれは、さっき私があの人の魔物を倒して怒ってるからじゃないの?」
だから、さっき私たちのことを襲わせたんでしょ?
謝ったら魔物も足を止めたし、きっとそうだよ。
「ですが先程ルーさんが倒された魔物はわたくし達のことを襲ってきましたよね。
ですので、あれは正当防衛だと思いますが」
正当防衛でも壊したことに変わりない。
だから謝らなくて良いなんてことは無いと思う。
「あの、サーレイシャ様、ルーフェスさんの言っていること、何処かズレているような気がするのですが……」
「気にするな」
後ろではサーシャとマリンの二人が、またまた失礼なことを話していた。
だけど、今はそのことはスルーしておく。
何故ならローブの人物が何か話し始めたからだ。
「何をふざけた事を言っている?
我の影を倒した?貴様みたいな子供が?
そのようなハッタリを言わなくても、影を倒したのはそこの銀髪の女だろ!」
そう言いながらサーシャの方を指刺す男。
あっ、声が男の人っぽいから多分男の人だと思う。
「えっ、違うよ。私だよ!」
慌てて倒したのが私だと再び男に伝える。
確かに私の見た目は子供っぽいけど子供じゃ無い。
よく間違われるし、子供なら倒せないと思うのは当然だろうけど、私が倒しちゃつたんだから、それをサーシャに押し付ける訳にはいかない。
悪いのは私だから。
「ふっ、まだ我を欺こうとするか。
だが、貴様みたいな子供に倒せるはずもないだろ!」
「私はこう見えて大人だよ!」
胸を張って言う。
「クスっ」
すると何故かアンズとクレアに笑われてしまった。
「どうして笑うの!?」
「ごめんね。ルーちゃんが可愛いかったから」
クレアもアンズの言葉に頷いている。
二人とも笑って理由は同じみたい。
だけど、意味がわからない。
今の何処に可愛い要素があったの?
私は「魔王」としての威厳を見せたつもりだよ。
「何をごちゃこちゃと言っている!
貴様はどう見ても子供だろ!
貴様からは魔力を全く感じない。そんな貴様に我の影を倒せるはずもない!
倒せるとすれば、そこの銀髪の女だけだ!」
再びサーシャを指し、罪を被せようとしてくる。
でも、そう言うそとか。
さっきはなんでサーシャと間違えたんだろうと思ったけど、魔力で判断していたのか。
私は今は完全に魔力を含めてサーシャでも探知出来ない状態だから分からなくても無理はない。
「えっと、証明したら、信じてくれる?」
そう問いかけながら抑えている魔力を解放しようとする。
たけどそれはサーシャに止められた。
「ま、待ってください!
何をするつもりですか!?」
「魔力を解放するだけだけど?」
「そんな事をすればアンズたちが危険です。やめてください」
「「「えっ!?」」」
サーシャの言葉に私から距離を取るように後ずさるアンズたち。
「ル、ルーちゃん、だ、大丈夫、だよね?」
半信半疑といった様子で訊いてけるアンズ。
そんなの勿論大丈夫に決まってる。
確かに全魔力を解放したら危ないかもしれないけど、そんなの私だって分かってる。
少しだけ解放しようと思っていた。
サーシャは私を何だと思っているの?
それくらい大丈夫だよ?




