ダンジョン攻略 可愛いものには注意
朝ご飯も食べ終わり、それぞれ準備も終了し、私たちは二日目のダンジョン攻略に出発した。
今日は昨日来た道を戻る。
昨日よりは魔物も少ないと思うけど、進んでない方の分かれ道から着た魔物たちが待ってるはずだ。
「えっと、次はこっち」
道案内はアンズとクレアにすべて任せている。
来るときに二人がメモしていたからね。
私が案内するから必要ないって言ったけど、これも訓練の一環だと言われたので二人に任せた。
「あっ、スライムが来たよ」
アンズの指さす方から一匹のスライムがやってくる。
それを聞いたクレアが即座に詠唱して、魔法を放つ。
「ファイアーアロー」
何度も繰り返してきた手順なので二人ともスムーズだ。
やっぱり、二人ともレベルアップしてる。
流石!
この後も何度も来た魔物は無事二人が倒して、順調に進んでいた。
「来たよ…‥魔物?」
アンズの声に通路の先に視線を向けるとこちらに向かってくる一匹のウサギがいた。
「わ~。可愛い~」
白い身体にくりっとした真ん丸の目。
耳は垂れ下がっていてすごく可愛い。
近づいて撫でに行く。
「ちょっと、ルー様。。魔物ですよ!」
「あれも魔物なんですか?
凄く可愛らしくてそうは見えませんが」
皆が何か話しているけど気にせずにウサギに手を伸ばす。
すると、ウサギの口が私よりも大きく開かれたと思ったら、目の前が真っ暗になる。
「あれ?いきなり真っ暗になった?」
疑問に首を傾げていると、アンズたちの声が小さく聞こえて来る。
「ルーちゃん!大丈夫!?」
「ルーさん!?」
「ルーフェスさん!?」
「はぁ…‥」
あれ?
なんか、アンズとクレアとマリンは私を心配してくれてる感じなのに、サーシャだけ呆れてない?
何でだろ?
と言うか、ここってもしかしてウサギの中?
私、食べられた?
何かべとべとして気持ち悪い。
「どうしよう」
「落ち着け、こういう時は魔法を思いっきり放てばいい」
慌てていた皆を落ち着けているようなことを言った後、何か不穏なことを言うサーシャ。
そしてそのまま、魔法が飛んでくる気配。
「えっ!?私ごと!?
私中に居るんだよ!?それ、威力強すぎじゃ!?」
慌てて転移魔法で皆の近くに避難する。
「ビックリした」
まさか私ごと魔法を当てて来るなんて。
私を食べたウサギはサーシャの魔法によって切り刻まれていた。
…‥。
あんなの当たってたら、滅茶苦茶痛いじゃん。
それに、ケガだってするかも。
サーシャ酷い。
もうちょっと私に気を遣ってよ。
「サーシャ、危ないじゃん!?」
不満をサーシャにぶつける。
すると、ため息をつくサーシャ。
何で!?
こっちがため息つきたいよ!
「ルー様が油断してるから悪いんです。
いつも言ってますよね、油断しすぎるなと。
それに、ルー様なら避けると分かってましたし」
「で、でも、可愛かったから…‥」
可愛いは正義!って偉い人も言ってた。多分。
だからあれは仕方ない。
可愛かったら誰だって警戒心が薄れるものだよ。
それに、私が避けられるって信じてくれてるのは嬉しいけど、あそこまでする必要ないと思う。
もし、私が避けられなかったらケガしていたかもしれないし。
「「「…‥」」」
サーシャ以外の三人は切り刻まれたウサギを見て固まっている。
そうだよね。あれはやりすぎだよね。
「ほら、皆も引いてるよ」
三人の反応をサーシャに教える。
これで、サーシャも反省してくれるはず。
「いえ、引いていたというより、驚いたよ言いますか…‥」
だけど、それはマリンに否定されてしまった。
「ま、まぁ確かにあれはやりすぎたかもしれません。
あのウサギが少し…‥」
「?少し何?」
「いえ、何でもありません。
そんなことよりも先を急ぎましょう!」
?
どうしたんだろう?
何かちょっとだけ、サーシャの顔が赤くなってた気がするけど、見間違えかな?
私から顔を背向けて先に行ってしまうサーシャ。
そんなサーシャを見て、アンズとクレアは何故かクスッと頬を緩ませている。
何でだろう?
まぁでも、サーシャのお説教もなくなったし、別にいいか。
アンズとクレアも楽しそうだし、サーシャも嫌な様子は感じないし気にしなくてもいいよね。
私も皆に続いて通路を進んだ。