ダンジョン攻略 気持ちが大事
「出来ましたよ。ルー様」
ようやくサーシャの料理が完成したみたいだ。
さっき私の身体で作ってくれた時と同じ料理だ。
焼肉の上に緑のソースがかかっている。
「いただきます」
私の前に出してくれたお肉をナイフで切り、フォークで口に運ぶ。
「美味しい!」
お肉の甘さと緑のソースの甘さがいい感じにあってとても美味しい。
私好みの味だ。
「美味しい」
私に続いて他の皆もお肉を食べ、私と同じ感想を漏らす。
「サーシャさん、料理上手なんですね」
熱心に料理するところを見ていたアンズがサーシャに話しかける。
「あぁ。私が作らないとルー様がお菓子ばかり食べてしまうからな」
確かに、サーシャが作ってくれる前はお菓子ばかり食べていた気がする。
それで、サーシャに怒られて普通のご飯も食べるようになったんだっけ。
それまでは美味しいお菓子だけだったけど、サーシャが普通のご飯も美味しいと教えてくれた。
それでも、お菓子の方が美味しいけどね。
「それじゃあ、サーシャ様はルーさんの為にお料理を覚えたのですか?」
「まぁ、そうだな」
クレアの質問に頷いて答えるサーシャ。
ありがとうサーシャ。
私のためにわざわざ料理を覚えてくれて。
「そっか。じゃあルーちゃんはそれまでお菓子ばかり食べていたんだ」
アンズに頷いて返す。
「…‥私の料理、美味しい?」
アンズの突然のそんな質問にきょとんとしてしまう。
いきなりどうしたんだろう?
でも、答えはもちろん。
「美味しいよ!」
笑顔でアンズに答える。
アンズの料理もすごく美味しい。
「でも、サーシャさんの方が上手だから、私のはあまり、美味しくないんじゃ…‥」
落ち込んだように俯きながら言うアンズ。
「そんなことはないよ。
確かにサーシャの方が作るのは上手かもしれないけど、アンズの料理もサーシャに負けなくらい美味しいし、それに、いっぱい気持ちが詰まっていて、とっても美味しいんだよ」
サーシャは私と出会ってからずっと料理をしてきた。
だから料理の腕だけで言うならサーシャの方が圧倒的かもしれない。
でも、料理とはそれだけじゃない。
作る人の気持ちも大事だと私は思う。
適当な気持ちで作られるより、食べる人のことを考えて作った料理の方が絶対に美味しい。
だから、アンズの料理が美味しくないなんてことはない。
アンズの料理からも、美味しく食べてもらおうという気持ちが伝わってくるんだから。
そのことをアンズに伝える。
「ありがと、ルーちゃん。
でも、私の料理はサーシャさんに比べるとまだまだだから、もっと頑張る。
ルーちゃんが美味しいって言ってくれるなら、それを信じるよ。
そして、もっとルーちゃんに美味しいって思わせられるような料理を作れるようになって見せるね!」
少しだけ目尻に涙を浮かべながら言うアンズ。
「うん。期待してる。頑張ってアンズ!」
そんなアンズの覚悟を応援する。
そして、アンズに続いてクレアも覚悟を言葉にする。
「わたくしも、アンズさんに負けないように頑張りますわ。
だからルーさん、わたくしのお料理も食べてください!」
「もちろん!期待してるよ!」
クレアにも同じように返す。
クレアの料理は上手さで言えばまだまだだと思うけど、気持ちだけなら負けてないと思う。
だから、きっと、クレアも美味しい料理を作ってくれると思う。
何をするにも、気持ちが大事。
気持ちのこもってないことなんて、限界までしかいけない。
限界を超えるには、努力、それから気持ち。
才能だけでは限界は超えられずに、いいものなんてできないのだ。
「ルー様が珍しくまともなことを言っている」
サーシャがまたまた失礼な言葉を口にする。
珍しくは余計だよ!
「しかし、どんなに気持ちを込めて努力をしようが絶対にかなわないものはありますよね?」
私たちの会話を遠くの方で聞いていたマリンが近づいて話しかけてきた。
サーシャに話しかけていたとは思うけど、何故か私にちらっと視線を向けていた気がする。
「それは…‥そうだな。
だが、ルー様は特別だし、気持ちがこもってていないわけではない。
努力は…‥あまりしていないが」
酷い!
私だって努力してる…‥こともある。
確かに私は<全能>で色々なことは出来るけど、ちゃんと気持ちを込めてしている。
努力だって、してると思う。
料理とか。
「まぁ、ルー様みたいな理不尽な存在は置いておいて、二人とも、料理なら私が教えてやろう」
アンズとクレアに話しかけるサーシャ。
二人に料理を教えてあげるのはいいけど、私のことをまた理不尽って言ってきた。
「ありがとう」
「ありがとうがざいます」
嬉しそうに感謝するアンズとクレア。
三人は何か納得したみたい。
マリンと私は納得がいっていないけど。
「ルーフェスさんは理不尽だから例外…‥」
そんな私と同じように納得していないマリンは、何かを自分に言い聞かせるようにぼそぼそと呟いている。
その内容は私にとってとても失礼な内容だったけど、気にしない。
昔からずっと言われてることだからもう諦めた。
別に、理不尽でもいいもん!




