ダンジョン攻略 ありがとう
「ごめんね。アンズ、クレア…‥」
私は二人の邪魔ばかりしていたんじゃないかと思ったので、二人に謝る。
謝る時は相手の顔を見るのが一番なんだろうけど、今の私にそんな余裕はない。
自然と顔を俯けて謝ってしまっていた。
「どうしたの!?」
「どうしたのですか!?」
いきなり謝った私を見て驚いた声を出すアンズとクレア。
「ルー様!?何かあったんですか!?」
サーシャも二人と同じように驚く。
声こそ出さなかったが、マリンも驚いた顔をしている。
「えっと…‥二人の邪魔ばかりしてるんじゃ、ないかと思って…‥」
俯きながらではあるが理由を説明する。
「邪魔?」
「何のことでしょうか?」
アンズとクレアは私の言ったことが理解できていないみたい。
二人ともやっぱり優しいなぁ。
今まで私がしてきたことを邪魔だと全く感じてないんだ。
けど、私が二人の邪魔をしてきたことに変わりはない。
「…‥ルー様…‥そういうことですか…‥」
サーシャは察してくれたみたい。
今回はアンズとクレアの為の訓練だ。
だから私ばかり楽しむのはおかしい。
そんな私の考えをサーシャなら分かってくれたはず。
だから、もしかしたら、私に帰れとか言ってくるかも。
サーシャも優しいから、本当に私の嫌がることはしないだろうけど、今の状況なら、私の気持ちに配慮してくれて、そう言うかも。
もし言われたら素直に帰ろう。
二人のことはサーシャに任せれば大丈夫だろうし。
「ルー様…‥考えすぎです」
…‥…‥?
考えすぎ?
何が考えすぎなの?
それに、てっきり「帰れ」って言われると思ってたから驚いた。
「二人とも、どうやらルー様は二人のレベル上げの邪魔をしたんじゃないかと思ったようだ」
「「?」」
「つまり、ルー様が色々とやらかすことによって、二人に色々と迷惑をかけたと思っているらしい」
「迷惑?」
ここまで聞いても理解の色を見せない二人。
「あぁ。例えば魔力譲渡だったり、私と入れ替わったりだな」
「…‥あぁ」
「そういうことですの」
やっと二人も理解してくれたみたいだ。
「ルーちゃん。別に私たちは邪魔だなんて思ってないよ」
「そうですわ。ルーさんが居てくれてとても心強いです」
二人は優しいからそう言ってっくれるけど、私は…‥。
「本当だよ。ルーちゃんが居なかったら、ここまで強くなれなかったと思うし、そもそもダンジョンに来られたかも分からないしね」
来られたかわからない?
「そうですわ。ダンジョンは魔物たちの住まう危険な場所です。そんなところに行くなんて不安です。ルーさんが居なければそんな場所に来られていたかもわかりませんし、来られていたとしても、びくびくとしていてここまでのレベルアップもなかったと思います」
そんなことないと思う。
二人なら大丈夫だろうし、それに、
「サーシャが居れば大丈夫だよね」
私が居なくてもサーシャが居れば大抵のことは何とかなる。
それにもし、サーシャでもダメな時は、その時に私を呼べばいいだけだ。
「確かに、ルーさんが居なくてもサーシャ様が居れば同じようになっていたかもしれません」
「でもね、ルーちゃん。私たちはルーちゃんと一緒に居たいんだよ?
それにサーシャさんでも出来ないことはあるよね。
ルーちゃんにしか出来ないことが」
私にしか出来ないこと?
それはいっぱいあると思うけど、それが邪魔なんじゃ。
それに、私と一緒に居たい?
どういうこと?
「ルーちゃんは私たちと一緒は嫌?」
そんなアンズの言葉に即答で首を何度も横に振る。
そんなわけない。
できればずっと一緒に居たい。
「ならそれでいいでしょ」
「でも…‥」
「今回の訓練は確かにわたくしたちのレベル上げがメインです。
しかし、決してそれだけではありません。
少し恥ずかしいですが、ルーさんと一緒に冒険するのも目的なのですわ 」
そんなことを言いながら少し頬を染めるクレア。
アンズも「私もだよ」と言いながらクレアと同じように頬を染める。
…‥。
何だろう。
また少し胸が痛む。
それから、涙も出てくる。
嬉しい。
まさか、こんなことを言ってくれるなんて。
二人も私と居ることを楽しいと思ってくれてたんだ。
今回も一緒に冒険できると思ってくれてたんだ。
こんな迷惑ばかりかける私でも、一緒に居たいって。
「それに、これまでルーちゃんのしてきたこと、驚いたけど面白かったよ」
「ルーさんにはいつも驚かされますが、そういう所も含めて、一緒に居たいんですのよ」
嬉しい。
涙が止まらない。
胸が少し痛んでポカポカする。
「ごめんね。ありがとう。
私も二人とずっと一緒に居たいよ」
この二人に会えてよかった。
今までは、こんな友達が出来ることがなかった。
サーシャたちは、ある程度強いからあまり気にせずに楽しくやっていけたけど、二人は違う。
まだまだ二人は強いとは言えない。
私に比べれば全然弱い。
だから色々と価値観も違うと思う。
二人からしたら私は理不尽な強さなんだと思う。
けど、二人は、そんな私とでもいっしょに居てくれると言ってくれた。
ううん。一緒に居たいと言ってくれた。
嬉しい。
私も二人とずっと一緒に居たい。
私は自然と二人に泣きながら抱き着いていた。




