ダンジョン攻略 休憩の場所
「それで、どうしましょう?
サーレイシャ様が探知できないとなると自分たちでしないといけませんが」
マリンがアンズ、クレアに向けて話しかける。
そっか。サーシャが教えてくれないなら自分たちで警戒しとかないとだよね。
それとも私が教える?
私も<探知>は使えるし、サーシャの代わりに私が教えてもいいけど。
ていうか、それが一番だよね。
そう思ったので、皆に提案してみることに。
「そうですね。レー様がやってもいいのですが…‥」
言葉を途中で止め、アンズたちの方を見るサーシャ。
ですがって、何かあるのかな?
「うん。今まで気づかなかったけど、自分たちで警戒するのも大事だよね」
「そうですわね。サーシャ様に頼りきりになって油断していたのが、先ほどの結果ですし」
どうやら二人は自分たちで警戒したいみたい。
確かにそれも大事だけど、二人がやらなくても私がやるから、必要ないんじゃないかな?
じっと警戒してるのも、疲れるし。
私がスキルでやれば、皆楽だと思うけど。
「それだと、二人の特訓になりません」
そうだった。
このダンジョン攻略は二人の特訓だった。
楽しいからつい忘れてた。
特に今はサーシャと身体が入れ替わってて、いつもと違う感覚が新鮮でちょっと浮かれてたかも。
「そうだね。そういうことなら二人とも、頑張って!
でも、疲れたら私が変わるからね!」
「ふふ。ありがと」
「ふふ。ありがとうございます」
「どうして笑うの!?」
二人をねぎらうようにカッコよくきめつもりなのに、何故か笑われてしまった。
「ごめんね。サーシャさんの身体でルーちゃんみたいなカッコいいこと言われたけら、可笑しくて」
そっか。
それなら仕方ないね。
それに「カッコいい」ってアンズも言ってくれたし。
笑顔で悦明してくるアンズに私も笑顔を返した。
「サーシャ様の笑顔…‥新鮮ですわ」
そんな私(サーシャの身体)の顔を見て、クレアがそんなことを口にする。
確かにちょっと新鮮かも。
でも、サーシャは結構笑うよ?
あんまり他人に見せないけど。
アンズたちが自分たちで警戒もするという提案にはマリンも賛成の様で、警戒を二人に任せ、通路を進んでいた。
アンズが前を警戒し、クレアが後ろ。
このダンジョンの性質上、後ろから来ることは滅多にないけど、私たちが通った後に、魔物が湧いたり、分かれ道の違う方向から来たりと言う可能性もあるので、一応後ろも警戒しているらしい。
「前から何か来るよ!」
アンズが声を上げる。
その声に私も注意深く奥を見て見ると、こちらにやってくる影が見えた。
こちらに来るのは、またまたスライム。しかも一匹。
「私が倒すね」
そう宣言して、アンズが魔法を詠唱する。
「アイスアロー」
詠唱が終わり、魔法で氷の矢を飛ばす。
氷の矢はスライムに命中し、一撃で絶命した。
いつも通り死体は私が回収する。
またスライムが単体で。
やっぱりこの奥に母体がいるのかな?
そんなことを考えながら、どんどん奥に進んでいく。
こちらに向かってくる魔物もしっかりと発見し、今まで通り順調に倒していき、倒した魔物は私が回収するというのを繰り返していく。
「そろそろ、休みましょうか」
マリンがそう口にする。
今回の休みとは、今までも何度か取ってきた小休止ではなく、本格的な休みの様だ。
そういえばそろそろ夜かな?
おなかもすいてきた気がするし。
「このあたりで安全そうなスペースを見つけて、本日は休みましょう」
安全なスペース?
そんなところあるのかな?
今まで通ってきたところも殆どが通路だったし、ないと思うけど。
「そうだな。広場などがあればいいのだが」
マリンの言葉にサーシャが答える。
広場か。
今まで通ってきた道にあったはあったけど、一、二か所だったような気がする。
「そうですね。では交代で通路で休むことになりますが…‥」
マリンはそう言いながら、クレアの方に視線を向ける。
「わたくしはそれでも構いませんわよ」
アンズの方に視線を向けながら答えるクレア。
アンズも「私も」とクレアに同意した。
「しかし…‥姫様をこんな危険な場所に…‥せめて広場に…‥」
マリンが心配したような顔になる。
そっか。クレアは王女様だもんね。
それなら、広場の方が少しは安全なのかな?
「気にしないでください。そもそも、この訓練に参加したんですし、そういうのも覚悟できていますわ」
「そうですか…‥」
不承不承ではあるがマリンは納得したみたいだ。
諦めるの早いよ。
私が何とかしてあげるから。
要するに、広場があればいいんだよね?
「待ってくださいルー様!?何をするつもりです!?」
私の顔を見て制止の声をかけるサーシャ。
別にそんなに慌てなくても大丈夫だよ。
ちょっと広場を作るだけだから。
天井の高さはそのままで、大体半径10メートルくらいで周囲に空間を作る。
「空間消滅」で掘ったので、綺麗に空間―――広場が出来た。
ふふん!と、胸を張る。
あっ。
サーシャの自慢げな姿、凄く珍しい。
私も見て見よう。
そんなことを考えながら、私はアンズから拍手を貰うのだった。




