ダンジョン攻略 入れ替わり
「ル、ルーちゃん!?し、死んだことあるって、どういうこと!?」
私たちの話を聞いていたアンズが、驚いた顔をしたと思った後、はっとした顔になり、私に詰め寄ってくる。
どういうことって、そのままだけど。
「アンズ落ち着け」
サーシャが私の肩を掴んでいたアンズの手を剝がしながら宥めてくれる。
そして、先ほどの言葉に続いて失礼なことを口にする。
「ルー様だから。いちいち驚くな。
っと、言っても無理だろうが、あまり深く考えるな」
そっれてどういう意味!?
絶対に褒めてないよね!?
さっきからなんか私に酷くない!?
「で、でも、死んだって」
それでもなお取り乱しているアンズにサーシャが言葉を続ける。
「ルー様なら生き返るくらい普通にする。
と言ううか、ルー様以外にも生き返れる奴くらい他にもいるぞ」
そんなサーシャの言葉に、アンズたちの顔は更に驚きの色を見せる。
えっ!?
そこに驚いてたの!?
生き返るくらい普通だと思うけど。魔王だし。
「言っておきますが普通ではありませんからね?」
でも、その言葉には納得できない。
だって、他の魔王の人も生き返ってたもん。
「それは、一部です。普通は死んだら終わりです」
でも、サーシャだって生き返ったことあるよね?
「あれは、ルー様のお陰です」
そんな会話をしていると、またまた三人の顔に驚きの色が。
なんか三人共驚きすぎじゃない。
「サーシャさんも、死んで生き返った…‥」
「…‥まあ、あれは本当に特殊なケースだ。
深く考えるな。」
なんだか変な空気になってきた気がする。
私はこういうのがあまり得意じゃないので話を変えたい。
こういう時は確か、一発芸をするといいって誰がいってた気がする。
「皆見て!今から、一発芸をします!」
突然そう宣言した私に視線が集まる。
「待ってください!何をするつもりですか!」
何故か止めようとしてくるサーシャだが、空気を変えたいのでそのまま続けることにする。
「今から、私とサーシャが入れ替わります!」
「入れ替わる?それって位置が入れ替わっるってこと?」
アンズが疑問を口にしながら予想と共に首を傾げる。
ふっふっふっ。
そんな簡単なことじゃないよ!
それだと転移魔法で簡単に出来る。
でも今からするのはもっと難しいことなのだ。
「待ってください!」
「行くよ!」
サーシャの制止を無視して無理やり実行する。
すると次の瞬間、私の目には私の姿、厳密には私の身体が映る。
「じゃーん!」
私がサーシャの身体で両手を開きなふぁらアピールする。
「「「えっ!」」」
三人から驚きの声が漏れる。
「さ、サーシャ様。どうされたのですか?」
急に表情の変わったサーシャにクレアが問いかける。
サーシャと言っても、中身は私だが。
「はぁ…‥何してくれてるんですかルー様」
サーシャが私の身体でため息をつく。
あれ?
ため息をつくと幸せが逃げるっていうけど、この場合はどっちの幸せ?
まあ私のもサーシャのも逃げてほしくないけど。
「「「・・・・・」」」
三人の口が開いてぽかんとしている。
どうやら一発芸は成功の様だ。
「…‥さっきルー様が言った通り、私とルー様が入れ替わってる。中身が」
サーシャが驚く三人に説明する。
もっと詳しく言うと魂を入れ替えたんだけどね。
これは結構難しい。
精神だけを入れ替えるなら、魔法でちょちょいと出来るが、魂の入れ替えはそうはいかない。
まず、第一に、お互いに信頼しあっていることが大事だ。
信頼だけでなく、絆が繋がっている必要もある。
そして次に魂と肉体を分離する。
私自身のは簡単に出来るが他人のを分離するにはなかなか疲れる。
この作業にはスキルの<身魂分離>を応用する。
このスキルの持ち主は自分しか出来なかったみたいだけど。
その後に、お互いの魂を転移魔法の応用で入れ替えれば終わり。
ちなみに<身魂分離>は生き返る時に便利なスキルだ。
「流石ルーちゃん。凄い…‥」
アンズが褒めてくれる。
けど何故か遠い目をしていた気がした。
褒めてくれる時は、目を見てくれた方が嬉しいよ?
「…‥それよりルー様。戻してほしいんですけど…‥」
さっきの変な空気を変えれると思ったけど、まだちょっとだけ変な感じがする。
その空気をサーシャも変えようとしてか、そう言ってきたのだが、
「無理だよ?」
そう返した。
「ですよね。…‥ルー様の身体は不便ですので早く戻りたいのですが」
不便とか失礼な!
まあ確かに他人の身体は不便だけど!
それから空気を変えるため少し休憩をはさみ再びダンジョンをすすむ。
「それでルーちゃん。いつ戻れるの?」
いつもの調子に戻ったアンズがサーシャの身体をした私に訊いてくる。
「ん~と、あとちょっと、かな?」
戻るためには再び同じ作業をする必要がある。
さっき無理と言ったのは、すぐには無理と言うことで永遠にこのままと言うとこではない。
ただ疲れるから連続して行うのが無理なのだ。
本気を出せば出来るかもだけど。
「そっか…‥。でもサーシャさんの身体でルーちゃんと話してるって、変な感じ」
確かにそうだね。
私もサーシャと話すときは私の身体と話すことになるから変な感覚がする。
それに、背の高さも全然違うから、みんなと話す時の目線にも違和感がある。
「そう思うなら早く治してください」
サーシャに叱られた。私の身体で。
私に叱られるのって、本当に変な感覚だな。




