カップケーキ
「それじゃー、いただきまーす!」
事件がひと段落終わり、私たちは打ち上げをすることになった。
机の上に並べられているお菓子を手に取り口いっぱいにいれる。
「おいしい!」
「よかった」
ここにあるお菓子の一部はアンズがつくってくれたものらしい。
私が魔王や魔物の退治をしている間にお城の厨房を借りて作ってくれていた。
アンズはやっぱりやさしい。
頑張ってる私のためにって、作ってくれて本当に嬉しい。
「ルーフェス様。この度は本当にありがとうございました」
王様が深々と頭を下げてくる。
「もういいよ。さっきも聞いたし」
さっきから何度もお礼を言われているし、それにサーシャの頼みだから王様にお礼を言われるようなことではない。
ちなみに伯爵の人はあの後どこかに連れていかれた。
特に興味もないので、どこに連れていかれたかは聞いていない。
「ルー様。私からもありがとうございました」
サーシャにもお礼を言われるけどそれこそお礼を言われる資格はない。
オルトラニーを捕まえてとお願いされたのに逃げられてしまった。
配下、といううか、可愛い妹分みたいなサーシャのお願いを叶えて上げられないなんてお姉ちゃん分失格だ。
「あれは私のミスですので、そんなに落ち込まないですださい」
慰めてくれるサーシャ。
みんな優しくて嬉しい。
「えっ!これクレアが作ったの?」
「は、はい。わたくしもルーさんに、お礼がしたくて」
少しもじもじしながら言うクレア。
そんなカレンの作ったお菓子を食べて驚いた。
だってすごく美味しいんだもん。
クレアはお姫様だから普通料理はしないはずなのに、すごく上手だ。
「アンズさんに教わりましたので」
なるほど。それでか。
料理の天才のアンズに教わったんならこの美味しさも納得だけど、それでも今まで一度も料理したことないクレアがここまで美味しく作れるぼはやっぱりすごい!
みんなは私と違って料理上手だなー。
「あっ、そうだ。それなら私も何か作るよ!」
少思いついた事があるからみんなに提案してみたんだけど、
「ル、ルー様は作らなくて大丈夫です!」
「う、うん!ルーちゃんはいっぱい食べてて!」
私の料理の腕を知る二人が提案を却下してくる。
「大丈夫、大丈夫」
「いい方法があるから」とつけ加えて料理を作るため厨房へ向かう。
「お待ちください、ルー様!城を爆発する気ですか!」
爆発させるなんて失礼な!
確かに昔作ったとき爆発しちゃったときもあったけど、それはたまたまだから大丈夫だよ!
「たまたまでも普通料理は爆発したりしません!
それにたまたまではなく爆発するのが殆どで爆発しない方が珍しいじゃないですか!」
私の手をつかんで止めてくるサーシャ。
私ってそんなに爆発させてたっけ?
「とにかく!今度は本当にいい方法が思いついたんだよ!」
サーシャの手を振りほどいて厨房に駆け込む。
料理の邪魔されないように絶対に誰も壊せないよう本気の本気で厨房に隔離結界を張った。
ふふふ。
これで例え竜王クラスが来ようとも、絶対にこの厨房には入れないのだ!
これで気兼ねなく流離が出来る!
「はい!完成したよ!」
完成した料理をみんなの前に出す。
「これは…‥何ですか?」
サーシャがみんなを代表して訊いてくる。
何って、見ればわかるでしょ。
どっからどう見ても普通のカップケーキだよ。
…‥まあ少し色と形は変だけど。
「全然少しではありません!」
ちょっとだよ。
ちょっと紫っぽくて、丸っぽくないだけじゃん!
「これって…‥食べ物?」
いつも優しいアンズまでもが認めてくれない。
「そんなに言うなら分かったよ!」
幻影の魔法を使って美味しそうに見せる。
「これはただの幻影じゃないですか」
さすがはサーシャ。
突然変わったカップケーキを見て驚いていたみんあと違って、幻影だって一瞬でばれてしまった。
「そうかもだけど、要は味だよ!味さえよければそれでいいんだよ!」
サーシャの前にカップケーキを突き出すが、食べるのをためらって全然食べようとしてくれない。
「分かった!私が先にたべるから!」
もー!
今度は本当に大丈夫なぼにー!
全然食べてくれないみんなに代わって私が毒見がわりに食べる。
一口口の中に入った瞬間甘い味が口の中いっぱいに広がる。
「やっぱり美味しい!」
さすがは私!
これで私も料理上手の仲間入りだね!
「本当ですか!体に異常はありませんか!」
サーシャは本当に失礼だ。
私だってやればできる子。やろうと思えば料理だって出来るんだから。
「美味しい…‥」
私の言葉を信じてくれて食べたアンズが驚いた顔で呟く。
「本当に、おいしい」
アンズに続いてみんなも次々に私の作ったカップケーキを食べていく。
みんな美味しいって言ってくれて嬉しい。
「だから言ったじゃん!」
胸を張って自慢する。
「まさか、精神操作か味覚操作ですか」
マオも信じてくれないサーシャが訝しげに訊いてくる。
「そんなわけないでしょ!」
何でこんなにサーシャは私の料理を信じてくれないんだろう。
「それは昔に精神魔法で無理やり美味しいように感じさせたことがあるからです」
そういえば、そんなこともあったような、なかったような?
「ありました!ちゃんと覚えていてください!」
首を傾げていた私にツッコむサーシャ。
「そんなこともあったかもだけど、今回は本当にそんなことはしてないから!」
「ではどうやってこの美味しさを?」
「それは企業秘密だよ」
ドヤ顔をする私だが、そんな私にほっぺムニムニして「いいから教えてください」と言われたので仕方なく教えることにする。
今回の秘策は〈属性変換〉だ。
作った料理の「不味い」という属性を「美味しい」という属性に変えればどんな料理もおいしくなる。ついで「非爆発物」や「無毒」などの属性を追加しておいたのでどんなことがあっても人体に影響が出ることはない。
「それは味覚操作とおなじです」
違うよ!
これはあくまで美味しくなものを美味しいものに変えただけだから実際に味覚を変えたわけじゃないんだから。
「殆ど同じようなことです」
全く違うのにサーシャは酷い。
それから何でみんなは実が笑いして持ってるカップケーキを机に戻すの!
ちゃんと最後までたべてよ!




