魔王が来た
私たちは今、王様の部屋に来ている。
学園が終わった後サーシャがきて、お城に来て欲しいとのことだったので、アンズのクレアと一緒にやってきた。
サーシャは今日はあの後結局戻って来ずに王様と何か話してたらしい。
「ルー様、ランツから取った水晶を出してください
水晶?
あぁ、あれか。
収納魔法から「支配の宝珠」を出して机に置く。
「これのこと?」
「はい。それです。
その水晶についてランツから尋問したので、今からそれについてお話しします」
尋問。
拷問とかはしてないよね?
「この水晶、『支配の宝珠』ですが、どうやら元はパロ伯爵の持ち物だったようです。
それを勝手に持ち出してきたらしいのです」
伯爵の持ちもの?
そもそもなんで伯爵はこんな物持ってたんだろう?
「今、伯爵をこの城に呼び出しています」
それを今から聞くのか。
「『支配の宝珠』ですが、ルー様には必要ないと思いますが一応説明しておきます」
サーシャが「支配の宝珠」の説明をする。
作ったのは多分ドーナスじゃないかと私が言うと、皆驚いていた。
「本当ですか!?
なんで[魔導技師王]ドーナスの作った物が伯爵なんかに!?」
王様が問うてきたので、答える。
何であるかは知らないけど、こんなのを作れるのは私以外だとドーナスぐらいだと思うから、ドーナスが作った物で十中八九間違いないと言う。
まぁ、私が封印されている間に他に作れる人が現れたかもしれないけどね。
しばらく話しているとパロ伯爵がきた。
見た目は40歳くらいのすらっとした体型の髭を生やしたおじさんだ。
ちなみに私たちは王様意外別室に来て、私の魔法で王様の部屋を見ている形だ。
「何用でしょうか陛下」
彼は挨拶した後、呼び出された要件を王様に問う。
「貴様の息子、ランツのことだ」
「ランツの、ですか?」
伯爵は何のことかわかってない様子。
「あぁ、とりあえず、これを見てくれ」
王様が「支配の宝珠」を見るように促す。
それを見た伯爵は顔を青くした。
「見覚えがあるようだな」
「い、いえ、それは・・・」
「これはランツから回収したものだ」
「ランツから・・・」
伯爵の顔がどんどん青くなっていく。
大丈夫?
このままだと倒れちゃうんじゃない?
「ランツから尋問したところ、この魔道具は伯爵の部屋にあったと言っていたが、何処でこんなものを?」
「それは・・・」
ん?
伯爵が答え辛そうにしてると転移魔法の気配がした。
「それは私が答えましょう」
「貴様は!」
転移魔法で来た謎の男に王様は驚いてる。
サーシャも立ち上がって驚いてる。
二人ともこの人知ってるの?
「何しに来た!」
あれ、サーシャが王様の部屋に行っちゃった。
隠れてなくていいの?
「何って、言ったでしょう、また来ると。
それと・・・」
「大変です!陛下!」
王様の部屋に兵士の人が慌てた様子で入ってきた。
「魔物の群れが!」
「またか!」
また?
「えぇ、今回は三万以上用意しました」
三万って魔物を?
「それから竜王も用意しました」
クレアが説明してくれたんだけど、街に魔物の群れがくるのはそんなに珍しいことじゃないらしい。
それでもいつもは数千ぐらいで、三万は異常らしい。
前回の時は一万くらいで古竜がいたらしい。
「とにかく、いつも通りアナウンスと避難誘導を。
学園と冒険者ギルドに応援も忘れるな!」
「はい!」
兵士の人が王様の指示を受けて部屋から出て行った。
「今回も前回のようにいくでしょうか」
前回?
この人前にも同じことしてるの?
なんのために?
「残念だったな、オルトラニー。今回もお前の負けだ」
オルトラニー?
どっかで聞いたような・・・。
「[魔王]だよ」
あー。
そんな人もいたような。
「サーシャさんが言ってたよ。
もう忘れちゃったの?」
うん、全然覚えてない。
アンズは記憶力がいいなー。
「ランツにこれを渡したのはお前か」
「はい、そうです。
内側からも攻めようかと思っていたのですが、やはり失敗しましたか」
この人が「支配の宝珠」を伯爵に渡したのか。
「その事はどうでもいいです。
それより竜王を含めた魔物の軍勢をどうするつもりですか」
「サ、サーレイシャ様、ど、どうしましょう」
王様すごい慌ててる。
「落ち着けツベル。何の問題もない」
「ほう、この軍勢をどうにかすふ手段があるとでも?」
オルトラニーが魔法で空中に映像を出す。
私が今使っているのと似たようなものだ。
映像に映っているのは数多の魔物。
うわっ、多っ!
なにあの数。
ワイバーンが10匹ぐらいいるし、成竜も何匹かいる。
あとは古竜が一匹に竜王が一匹。ロード級の魔物の何匹かいる。
何処の要塞落とすき?
「なに、この、数・・・」
アンズとクレアも凄くびっくりしてる。
「こんなの無理だ・・・。この国はもうおしまいだ・・・」
王様が完全に諦めてる。
「二人とも大丈夫だからそんな顔しないで」
アンズとクレアの絶望に染まった顔を変えるために声をかける。
「ルーちゃん・・・でも・・・あんなに魔物が・・・」
それでも二人から絶望の色は抜けない。
「ツベル、落ち着けと言ってるだろ。
大丈夫、何の問題もない」
サーシャも王様に声をかけてるみたい。
「これを見ても余裕でいるとは呑気なものですね」
「こいつを逃がさないようにしてください」
サーシャが何も無い所に呟いた。
もしかして、私に言ってる?
多分私にだと思うので、転移魔法などを阻害する結界をこのお城に張る。
「誰に言っているのですか?」
オルトラニーが馬鹿にしたように言ってる。
この反応から結界を張ったことは気づかれてないみたい。
取り敢えずサーシャの指示で結界は張ったけど、これからどうしたらいいんだろ?




